ナオミ・クライン著「これがすべてを変える」を読んだ。本書は、気候変動(地球温暖化)を人類の存続にかかる重大問題として、これまで「ショック・ドクトリン」などで批判してきたグローバリゼーションや市場原理主義、新自由主義の延長線上に位置づけ、根本原因と解決法を探ったものである。結論としては、根本原因が成長神話にがんじがらめになった資本主義のシステムにこそあり、それを解決するには現行の経済システムとそれを支えているイデオロギーを根底から変える以外に方法はないということである。

地球温暖化、気候変動は、1980年代から警鐘が鳴らされ、1992年のリオ地球サミットでは世界各国が問題意識を共有した。しかしその後、グローバリゼーションと自由市場原理主義の波が世界を覆い、政府が産業界に規制をかけて温室効果ガスの排出を削減することが極めて困難な時代となり、2009年の国連気候変動コペンハーゲン会議(COP15)は決裂となった。

規制緩和型資本主義システムが問題を深刻化させてきた一方、化石燃料を基盤にした経済・社会の在り方そのものにノーを突き付ける草の根抵抗運動が世界各地で展開し、拡大しつつある。従来よりも環境汚染が大きいオイルサンド採掘や、フラッキングによるシェールガス・オイルの抽出に対する先住民を中心とする抵抗運動や、化石燃料経済からの脱却を求めて、パイプライン建設やオイルサンド掘削リグ用の巨大装置の輸送、採掘石炭を輸送するためのターミナル建設などを実力で阻止する地域住民の闘いなどが、ネットワークを形成し、化石燃料企業にとって大きな脅威となりつつある。また、化石燃料企業から投資を撤退するダイベストメント運動が急速に広がっている。

気候変動という人類にとっての危機が、大きな歴史的チャンスでもある。破滅的な気候変動を回避するためには、政府の介入によって規制を強化し、化石燃料に基づく中央集権的な経済から、地方分散型の再生可能エネルギーに基づく経済へと移行する以外に方法はない。そしてそれは同時に、人々の生活の質を向上させ、国内の経済格差、南北の格差の是正をもたらし、より公正な経済と民主主義の活性化を実現するという、一石二鳥にも三鳥にもなる結果を生む。

だが、そうした根本的な変化を起こすために何より必要なのは一人一人の意識の変革、生き方の変革である。地球が私たちの子孫、そのまた子孫の代まで快適に住み続けられる環境であるために今、何をなすべきか。本書の突き付ける問は重く、また誰一人その問いを逃れることはできない。

壊滅的な気候変動を回避するために残された時間はあとわずかしかない。

 リー・スモーリン著「宇宙は自ら進化した」を読んだ。現在、理論物理学の最大の課題は、相対論と量子論の統一理論構築である。相対論は量子現象を説明できないし、量子論は時間の取り扱いが古典的で、しかも重力現象を包含できない。統一理論候補として超ひも理論やループ量子重力理論などが研究されているが、未だ完成されていない。
著者は、統一理論が必然的に宇宙論となると考え、一つの試案として進化論的宇宙論を提案している。

物理パラメータが、この宇宙を存続させるのに必要な驚異的な精度で、最適の値にチューニングされていることの説明として、人間原理やマルチバース論などがあるが、検証できない哲学的理念にとどまっている。これを打開するための試案として、著者は、宇宙は自己組織化によって複雑な系に進化していく過程で、物理パラメータも変化してきて、現在の値になっているとする宇宙進化論を提案している。これによって、宇宙に星や銀河、人間を含む生命が生成している理由も必然として理解できるようになる。

従来の物理理論では、宇宙内の一部の系を記述するする場合は問題ないが、宇宙全体を記述しようとすると、視点が宇宙の外になければならないことになり、実行不可能になる。宇宙内にいながら宇宙全体を記述できる新概念の理論を構築する必要がある。時空や物に準拠するのではなく、出来事と出来事の関係のネットワークのみに準拠する理論が望まれる。

 塚田穂高編著「日本の右傾化」を読んだ。本書は、「社会」「政治と市民」「国家と教育」「家族と女性」「言論と報道」「宗教」の6分野において、各専門家が日本の右傾化の実態を明らかにしたものである。

「社会」では、新自由主義、レイシズム、ヘイトスピーチ、日本会議について、「政治と市民」では、排外主義、自民党の右傾化、有権者の右傾化について、「国家と教育」では、日本のネオナショナリズム、教育基本法改定、国に都合のいい人をつくる教育政策について、「家族と女性」では、上からの押し付け、連動する草の根について、「言論と報道」では、自己賛美と憎悪の連鎖について、「宗教」では、神道政治連盟、創価学会・公明党、統一教会=勝共連合、幸福の科学=幸福実現党について論じられている。

日本全体が一律に右傾化しているわけではないが、安倍政権のように政策的に上からの右傾化を強烈に推進している部分集合があり、これと呼応して日本会議や宗教組織のように、草の根的に右傾化を拡散させている部分集合がある。これらの言わば右傾化がん細胞が、まだ健全な中道細胞群を侵食しつつあるということである。ステージⅡ~Ⅲといった段階か?

 梅林宏道著「在日米軍」を読んだ。本書は、在日米軍の組織の現状と作戦実体、日米防衛協力、市民生活への影響、今後の変化、非軍事的な安全保障体制への転換について論じたものである。

在日米軍の法的基盤は日米安保条約で、日本の防衛が第一義的な任務であるが、実態は時代とともに大きく変容してきた。2017年2月10日、安倍とトランプが発した日米共同声明によれば、在日米軍はもはや日本を防衛対象とした米軍ではなく、アジア太平洋全域を対象とする米軍になっている。ここでいうアジアは太平洋側から接近されるすべてのアジア、つまりアラビア海やペルシャ湾地域に至る全地域を意味している。

また、安保条約の解釈拡大により、今日の日米安保体制下における日本の軍事的な役割と責任もグローバルに拡大している。日米の軍事協力が行われる内容や地理的範囲は、ガイドラインの改定とともに拡大され続け、2015年の改定では、安倍の戦後日本の平和体制を否定する政策と軌を一にして一気に拡大した。その結果、自衛隊と米軍の協力は地理的に無制限となり、内容的には集団的自衛権行使による日米軍事協力の新しい訓練が行われるようになった。

日本政府は、米軍の活動を保護するためにいくつもの特例を作ってきた。多くの特例は、安保条約や地位協定の問題点を反映して、日本の市民権をさまざまな形で制約している。のみならず、安保条約上の義務の範囲を超えて、ひたすら米軍活動を支援する内容のものも多い。憲法に基づく理念を主体的に提示できない日本外交の姿が現れている。また、米兵の凶悪犯罪や米軍基地の環境汚染、米軍機による騒音・墜落事故被害など、基地がもたらす被害によって市民生活が脅かされている。

軍事的危機のシナリオの虜になるのではなく、現実的外交による非軍事的安全保障の例として、「モンゴル国の国際的安全保障と非核地位」と題する国連総会決議を勝ち取ったモンゴル国の努力がある。これまで成立している五つの非核兵器地帯条約は、各地域の安全保障上の大きな利益となってきた。

日本と朝鮮半島を含む北東アジアにおいてもまた、非核兵器地帯は極めて現実的な非軍事的安全保障の出発点となりうる。2015年に「北東アジア非核化への包括的枠組み協定」という現実的な提案がまとめられた。条約の構成国は韓国、北朝鮮日本の「地帯内国家」と米国、中国、ロシアの「周辺核兵器国」の六か国の形が、現状ではもっとも実現可能性が高いと考えられる。
このほかのアプローチの一つとして、日本の専守防衛政策を、国内において行動規範にまで高め、その規範を国際化することも可能である。これによって在日米軍の大幅削減が可能になる。

国民の多くが、自民党政権への消極的支持を続けている限り、日本の非軍事的安全保障を構築することはできないだろう。国民の多くがそれへの意思と行動を示し、政治的圧力とならなければ、日米軍事同盟によるさらなる悪化を阻止することはできない。

 カルロ・ロヴェッリ著「すごい物理学講義」を読んだ。物理学の懸案事項である一般相対性理論と量子力学の統合理論の一つであるループ量子重力理論の解説書、との触れ込みで手に取ってみたが期待外れだった。半分くらいが一般相対性理論と量子力学の解説、4分の1がループ量子重力理論が帰結する宇宙像で、ループ量子重力理論そのものについては、表面をさらっと撫でた程度で「すごい」とは感じられなかった。これなら、15年前のリー・スモーリン著「量子宇宙への三つの道」からあまり進展していないと思う。

相対性理論に量子論を組み込むと特異点で解が無限大になる問題と、場の量子論で重力を組み込むと解が無限大になる問題の両方を解決するために、ループ量子重力理論は、時空が連続体ではなく、無限小の点ではない離散的な時空量子のスピンネットワークで形成されているとしている。

量子重力理論によれば、世界はたった一つの実体「共変的量子場」からできている。粒子も、エネルギーも、空間も時間も、たった一種類の実体が表出した結果に過ぎない。連続的な空間と時間とは、重力の量子の力学を大きなスケールでとらえた時のおおよそのイメージであり、重力の量子とは、空間や時間が互いに影響を与え合うときの手段である。


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