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 吉田健正著「沖縄の海兵隊はグアムへ行く」を読んだ。本書は、沖縄から9000人近くの海兵隊員をグアムに移すという米国のグアム基地建設計画のポイントを紹介したものである。

2006年5月、日米両政府は前年10月の合意文書「日米同盟:未来のための再編と変革」にもとづく「在日米軍再編実施のためのロードマップ」合意を発表した。そこでは、沖縄の米海兵隊の指揮部隊・司令部要員8000名とその家族9000名がグアムに移転することが確約された。その2カ月後には米太平洋軍による「グアム統合軍事開発計画」が発表された。米国領グアムをアジア太平洋の一大軍事拠点として拡張・整備するという計画である。

さらに2年後の08年4月、この計画は米海軍省により「グアム統合マスタープラン」として確定され、翌09年11月、このマスタープランを実行するための「環境影響評価案」(環境アセスメント案)が公表された。その内容はインターネットで公表されているのに、マスメディアで全く報道されず、日本政府も全く触れていない。

普天間基地移設問題にかかわって、この米軍グアム統合計画は決定的に重要な意味を持つにもかかわらず、この重要な事実が日本では伝えられていない。なお、防衛省(ホームページ)によると、普天間基地の県内移設未実施にもかかわらず、海兵隊のグアム移転計画はすでに実施の段階に入っている。

米海軍施設本部の統合グアム計画室が作成した「環境影響評価案」は、「要旨」と1~9巻の全10冊からなる大部なものである。計画室はその印刷物をグアム島内の数か所の図書館に置いて公開するとともに、ウェブサイトで公表した。「評価案」には、米軍が実施しようとしている最新のグアム基地建設・整備計画が示されている。

「評価案」の正式名称は、「グアム・北マリアナ諸島軍事移転(沖縄からの海兵隊移転、訪問空母の接岸埠頭、陸軍ミサイル防衛任務隊)に関する環境影響評価・海外環境評価案」という。この長いタイトルが示すように、沖縄からグアムに移転する海兵隊のためだけでなく、同時期にグアムで予定されている原子力空母寄港用の埠頭建設、グアムに駐留する予定の陸軍ミサイル防衛任務隊を受け入れるための施設整備を実現するための環境アセスメント報告書である。また、グアムだけでなく、その北に位置する北マリアナ諸島のテニアンも対象になっている。

沖縄からの海兵隊と家族の移転により、グアムでは道路、電気、水道などのインフラや廃棄物処理場や汚水処理場も整備されることになる。2006年のロードマップ合意で、日本政府は「施設及びインフラの整備費算定額102.7億ドルのうち、28億ドルの直接的な財政支援を含め、60.9億ドル(2008米会計年度の価格)を提供する」ことになっている。「施設」とは司令部庁舎、教場(教練場を兼ねた教室)、隊舎、学校などの生活関連施設、家族住宅、「インフラ」とは電力、上下水道、廃棄物処理場を指す。

日本政府が資金負担するプロジェクト(施工は米国の業者)のうち、2010年1月の時点で、フィネガヤン地区に建設される消防署と下士官用隊舎の設計、アプラ地区の港湾運用部隊司令部庁舎設計についてはすでに契約が完了し、フィネガヤン地区、アンダーセン空軍基地北部地区およびアプラ地区の基盤整備事業については、米海軍施設エンジニアリング本部が入札公告を実施中だという。「環境社会配慮」「金融スキームの検討」「家族住宅民活事業」「インフラ民活事業」に関する「アドバイザリー業務」については、2009年10月末から防衛省が入札を公告している。

















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