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矢部宏治著「知ってはいけない2」を読んだ。前著PART1では戦後日本におけるアメリカへの異様なまでの従属体制が生まれた謎が解明された。本書では、その異様な体制が70年たった今も日本にだけ「なぜ続いているのか」という最後の謎に挑戦した。その謎を解くための最大の鍵が、60年前、岸信介が行った「安保改定」と「三つの密約」の中に隠されていたのである。

過去半世紀以上にわたって外務省は、無数の秘密の取り決めについて、その存在や効力を否定し続け、体系的な記録や保管、分析、継承といった作業をほとんどしてこなかったため、様々な軍事上の密約を歴史的に評価し、正しくコントロールすることが全くできなくなっている。そのため、特に2001年以降の外務省は、「日米密約」という国家的な大問題について、資料を破棄して隠蔽し、ただアメリカの方針に従うことしかできないという、まさに末期的な状況になっているのである。

日本では「アメリカとの軍事上の密約については、永遠にその存在を否定してもよい。いくら国会で嘘をついても、全く構わない」という原則が、かなり早い時点(1960年代末)で確立してしまったようである。そのため密約の定義や引継ぎにも一定のルールがなく、結果として、ある内閣の結んだ密約が、次の内閣には全く引き継がれないという、近代国家として全く信じられない状況が起こってしまう。

日本側の岸信介と佐藤栄作は、密約は窮地をしのぐために個人対個人の腹芸で交わすものとらえていたが、アメリカは、密約は政府対政府が取り交わすもので、政権が変わっても受け継がれると考えている。この密約観の違いが、核兵器の「持ち込み疑惑」のような日米間の深刻な亀裂となって表れる。

安保改定時に新設された事前協議制度には、裏側で合意された「秘密の取り決め」があり、新安保条約の調印の約2週間前に、藤山外務大臣とマッカーサー駐日大使が、その密約文書にサインしていた。その文書で核兵器を「持ち込む(イントロデュース)」という言葉の意味は、日本の陸上基地のなかに核兵器を常時配備するという意味であった。そのため、アメリカ政府は核兵器を積んだ米軍の艦船が日本の港に寄港することは、すでに了解済みだと考えていた。ところが日本側は、重大な密約が岸政権から池田政権、次の佐藤政権に伝えられていないかった。

日本政府はずっと国会で「事前協議がない以上、核兵器を積んだアメリカの艦船が日本に寄港することは絶対にない」という100%の嘘をつき続けた。半世紀以上に及ぶこの明白な虚偽答弁こそ、その後、自民党の首相や大臣、官僚たちが平然と国会で嘘をつき、それに全く精神的な苦痛や抵抗を感じなくなっていった最大の原因だといえる。そしてこの明白な虚偽答弁をもたらしたのは、核密約をめぐる日本政府の最重要報告書が、改ざんされているという事実であった。

戦後、アメリカとの外交交渉における主な成果と密約は次の通り。
吉田茂  占領の終結   指揮権密約(1952年と54年)
岸信介  親米体制の確立 事前協議密約/基地権密約/朝鮮戦争・自由出撃密約(1960年)
佐藤栄作 沖縄返還    沖縄核密約/財政密約(1969年)

これらの対米交渉は、各首相たちの指示の下、最も優秀な外務官僚たちが担当した。しかし、外務省内での情報の共有、特に過去の歴史的事実の共有がない。省内の重要ポストにいるときだけ最高の情報が集まるが、ほぼ2年でポストを後退した後の時期の知識は持っていない。アメリカ側は、日本側の最大の弱点である歴史的断絶状態に付け込んで、自分たちに必要な軍事特権をどんどん奪い取っていった。

1958年5月、岸は自民党の結党後はじめての衆議院選挙に踏み切り、287議席を取って圧勝。その5か月後には安保改定交渉もスタートさせ、現在まで続く「自民党永久政権」の時代が幕を開ける。その総選挙において、岸はCIAから巨額の「秘密資金」と「選挙についてのアドバイス」を受けていた。これは2006年に米国務省自身が認めており、歴史的事実として確定している。また、1994年、ニューヨーク・タイムズが1958年から1960年代の自民党政権[岸・池田・佐藤政権]には、CIAからずっと資金提供がされていたという大スクープを放った。→<*つまり、自民党政権はCIAの金で作られたアメリカの傀儡政権ということだ*>。

A級戦犯容疑者だった岸は巣鴨拘置所から釈放後、7年間のCIAによる辛抱強い計画により、支配政党(自民党)のトップに座り、首相へと変身した。1955年8月訪米してダレス国務長官と会い、自分への政治的・経済的支援とアメリカの外交政策への日本の政治的支援を取引した。

岸が、アメリカ政府から評価された最大の理由は、アイゼンハワー政権が進めていた、核兵器を中心とする世界規模での安全保障政策「ニュールック戦略」にあった。これは、高度な機動力を持つ核戦力をソ連の周りにぐるりと配備し、そのことでアメリカの陸上兵力を削減して、「冷戦における勝利」と「国家財政の健全化」を両立させるという一石二鳥を狙った計画だった。その戦略での中で最も重視されていたのが、同盟国から提供される海外基地のネットワークと、そこでの核兵器の使用許可だった。

岸とマッカーサー大使が共有している世界観「共産主義勢力が現在、東アジアに軍事的脅威を与えており、日本はその最大の標的になっている」こそが、その後、安保改定における両国の合意事項となり、それから60年以上たった現在に至るまで、いわゆる「日米安保体制[=日米同盟]」の基本コンセプトとなっている。
共産主義勢力の軍事的脅威という「国家存亡の危機」があるからこそ、日本はアメリカに軍事主権を引き渡し、それに従っていくしかないのだという歪んだ二国間関係が、安保改定後も変わらず必要だというロジックになってしまうのだ。

岸・佐藤によって誕生・発展した自民党は、結党時からCIAやアメリカ政府との間に、あまりにも異常な「絶対に表に出せない関係」を作り上げてしまった。日米安保体制を維持することを約束して岸がCIAから資金提供を受け誕生した自民党は、どれだけ国家としての主権喪失状態が露になっても、国際環境が変化しても、日米安保体制に指一本触れられないのは当然といえる。
つまり、自民党にとって「日米同盟[=日米安保体制]には指一本触れるな」という党是は、CIAからの巨額資金提供と引き換えに、結党時に合意された密約といってよい。

半世紀前から「全自衛隊基地の米軍共同使用」計画というプロジェクトが始まっていた。例えば富士山の麓に広がる広大な自衛隊基地は、すべて事実上の米軍基地である。なぜなら、日米合同委員会における密約によって、米軍が「年間270日間の優先使用」をする権利が合意されているから。従って自民党政権が続く限り、この形が全国に広がって、すべての自衛隊基地を米軍が共同使用するようになっても、地位協定に基づく正当な権利となっているため、法的・政治的に抵抗する方法は、ほとんどない。

米軍の権利拡大の背後に存在するシステムを「帝国の方程式」と呼ぶ。それは政治的な支配、特に異民族の支配には、
①「紙に描いた取り決めを結ぶ段階」[=ごく少数の政治的指導者層の支配]と、
②「その取り決めを現実化する段階」[=国民全体の支配]という二つの段階がある。
①と②の隔たりを埋めるために採用されるのが、安保条約と地位協定の例にもあるような、
1まず最初に、非常に不平等な取り決めを条約として結んでしまう[法的権利の確保]
2次に比較的ましな、具体的な運用協定を結ぶ[相手国の国民の懐柔]
3その後は、1と2の落差を埋める形で、少しずつ自分たちの権利を拡大していく[1の法的権利の表面化]
という戦術的プロセスである。これが「帝国の方程式」(日本側から見れば、「属国の方程式」なのだ。

この方程式を大きく前進させる三つの車輪は「安保改定時の三つの密約」と「密約を機能させるための二つの組織(日米合同員会と日米安保協議委員会)」と「米軍要求を実現するために国務省が使う外交テクニック」である。
究極の外交テクニックとは、相手国に都合の悪い内容を「条文には書くが、その意味は教えない」[プロセス1]、「そのあと、少しずつ本当の意味を教えていく」[プロセス2]というテクニックである。

安保改定によって行政協定・第24条が、背後に指揮権密約を抱えたまま、新安保条約の第4条と第5条にバージョンアップされ、最後は1976年の日本防衛協力小委員会の設置により、「米軍司令官の指揮権」を前提とした、事実上の「日米合同司令部」が誕生することになった。日本防衛協力小委員会における第一次・第二次・第三次のガイドラインの作成と、安保関連法の成立(2015年9月)によって、ついに、「米軍が自衛隊を指揮して、世界中で戦争するための法的な条件と環境」がすべて整うことになった。

事前協議制度は、米軍の基地権に制限を加えるための制度ではなく、米軍が自衛隊を軍事利用(指揮)するという困難な課題を、基地の問題と同様に、日本の議会や司法を一切関与させない形で前に進めるために、新たに導入された制度だった。その「目的」こそがアメリカ側が安保改定で実現しようとした「本当の目的」だった。だから、「対等な日米新時代」をスローガンに行われたはずの安保改定が、逆に日本の主権喪失状態を悪化させ、固定化したのである。

現在の日米関係は、日本が米軍の指揮の下でのあらゆる戦争協力(基地権+指揮権の提供)と巨額の武器購入を行い、アメリカは核の傘(拡大防止)の提供という、まったくばかげた関係になっている。しかも「核の傘」が本当に守っているのはアメリカ本国だけ。日本や韓国を守るために、アメリカが実際に核を撃つと考えている人など、今ではどこにもいない。しかも、アメリカが日本に「核の傘を差しかける」ために、特別にかかるコストはゼロである。

日本防衛協力小委員会における第一次・第二次・第三次のガイドラインによれば、日本防衛は自衛隊が第一次的な責任を負い、米軍はそれを支援し、補足するだけとなっている。これが「アメリカの日本防衛義務」と言われるものの実態である。

いま、米軍が日本に対して持っていることが確実な権利は、1戦時に自衛隊を指揮する権利(指揮権密約+新安保条約・第4条&第5条)、2すべての自衛隊基地を共同使用する権利(地位協定・第2条4項bの外務省解釈)、3事前通告により、核を地上配備する権利(岸の共同声明あるいは口頭密約)である。

これらを組み合わせると「人類史上唯一の核兵器による被爆国日本の基地(米軍または自衛隊)に、その原爆を投下した当事者である米軍が核ミサイルを配備して、その発射スイッチを持ったまま、自分たちは安全な後方地帯に撤退する」という究極のシナリオが「帝国の方程式」の未来に見えてくる。

→(*米国隷従を党是とする自民党政権が続く限り、この究極のシナリオの実現を避けることができない。いや、自民党政権はその実現をむしろ加速している。日本滅亡の日も近いのでは?*)

















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