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 鴻上尚史・佐藤直樹著「同調圧力」を読んだ。本書は新型コロナ感染拡大によって、凶暴で陰湿なかたちになって表れてきた同調圧力を生む根本に「世間」と呼ばれる日本特有のシステムがあると説く。「世間」の特徴は「所与性」」と呼ばれる「今の状態を続ける」「変化を嫌う」である。同調圧力とは、少数意見を持つ人、あるいは異端を唱える人に対して、暗黙の裡に周囲の多くの人と同じように行動するよう強制すること。

日本には海外、特に欧米には存在しない「世間」があるから、震災で「法のルール」が全く機能を失っても、避難所では被災者の間で自然発生的に「世間のルール」が作動し、略奪も暴動もなく、極めて冷静にかつ整然と行動した。欧米には社会はあるが「世間」がないために、震災などの非常時に警察が機能しなくなり、社会のルールである「法のルール」が崩壊すると、略奪や暴動に結びつきやすい。

「世間」とは、自分に関係がある人たちで形成される世界、「社会」とは、自分に関係のない人たちで形成される世界を言う。別の言い方をすると、「社会」は「ばらばらに個人から成り立っていて、個人の結びつきが法律で定められているような人間関係、「世間」は「日本人が集団となったときに発生する力学」で、同調圧力などの権力的な関係が生まれる。問題なのは、「世間」がホンネで「社会」がタテマエという二重構造が出来上がったことである。

「世間」を構成するルールは五つある。一番目は「お返し」のルール。二番目は「身分制のルール」。序列が上の者には従わなくてはならない空気が作り出される。三番目は「みんな同じ時間を生きている」と考える「人間平等主義のルール」。ここで「平等」は「違う人にならないでね」という同調圧力を意味している。「人間平等主義のルール」にはあと二つの意味がある。一つは、みんな同質と考えるから異質な者が外に排除される。つまり、「ウチ」と「ソト」ができて差別の問題が生まれてくる。もう一つの意味がまさに、「個人がいない」ということ。

四番目は「呪術性のルール」で俗信、迷信などの論理的ではない神秘的なルールである。五番目は「排他性のルール」で、仲間外れをつくることで自分たちの「世間」を意識し強固にする。この五つのルールのうち、一つでも欠けたときにあらわれるのが「空気」で、「世間」が流動化したものである。

日本人の生き方としては、<世間―内―存在><世間―外―存在><世間―間―存在>の三つがある。<世間―内―存在>は普通の在り方で、どこかの「世間」に属していて、そこから排除されると<世間―外―存在>となる。それは「社会」というものの中に放り出された存在となってキツイ。だけど、世間―間―存在>という、いろんな「世間」の間をとにかく生きる、という生き方ができるのだったら、それが一番いいんじゃないか。哲学者のドゥルズ=ガタリがそれを「独身者」と呼んでいる。

息苦しさの正体は、まさに「世間」であり、「同調圧力」である。それを知ることで、少なくとも自分自身に責任がないことは理解できると思う。「世間のルール」というものを少しずつ緩めていけば、自殺も減っていくのではないか。「世間」と「社会」の違いが判るだけでも、周りの風景が全然違って見えるはずだ。

















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