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 渡辺治著「安倍政権の終焉と新自由主義政治、改憲のゆくえ」を読んだ。本書は安倍政権終焉後も「安倍なき安倍政治」「安倍なき安倍改憲」が続くと見て、これに終止符を打つために三つの問題を考察している。

第一は、新型コロナ対処における安倍政治の無策の原因を、自民党政権が続けてきた新自由主義政治の構造的所産であるという視点から検討する。

第二は、改憲問題、新自由主義政治の行き詰まりに対する安倍の後継である菅政権の取り組みが、「安倍なき安倍政治」「安倍なき安倍改憲」を追求していることを明らかにする。

第三は、「安倍なき安倍政治」の継続を許さず「安倍政治」を変える方策として、「安倍政治」に代わる選択肢を検討する。「安倍政治」とは、安倍政権が追及した新自由主義政治、アメリカの戦争に加担する戦争体制づくり、新自由主義政治を強行する反民主主義的強権体制を目指す政治である。これに代わる新たな福祉と平和を追求する政権が生まれて初めて新自由主義の時代は終焉に向かう。

新自由主義とは、資本のグローバリゼーションによる競争激化の下で、各国の巨大資本の権力を再確立し、それまで制約されてきた利潤を再び増大させようとする政治経済体制を指す。それが採用した政策は、三つの柱から成り立っている。
第一の柱は、労働者の賃金の削減を促進する方策である。日本では正規労働者のリストラと非正規への置き換えという形で強力に遂行された。これを強力に遂行したのは小泉純一郎政権であった。政権の後押しの下、125万人の正規労働者がリストラされ、非正規に置き換えられた。

第二の柱は、大企業にかけられた負担―法人税や社会保険負担の軽減であった。富裕層に対して重くなる所得税の累進制の緩和も同じ目的から行われた。大企業への負担軽減には二つの方式があった。一つは、巨大化している財政の削減、特に医療、年金等の社会保障費の切り下げである。もう一つの方式は、代替税目の創出であり、これが消費税であった。

第三の柱は、規制緩和である。資本にかけられた規制は、四つのグループに分けられる。第一は、労働者や労働条件に対する保護と規制である。労働時間や派遣等に対する規制、女性差別に対する規制などである。第二は経済成長によって没落する衰退産業保護のための規制である。特に、農業部門や商店など流通部門の小営業の保護、地場産業保護などがこれにあたる。第三は、国内大企業保護のための様々な規制、いわゆる「護送船団方式」と呼ばれた規制である。第四は、社会的規制と言われる規制である。食品添加物規制や介護施設、保育園などの設置基準、環境保護のための規制などである。

新自由主義の政治的上部構造は、反民主主義、強権政治体制だといえる。強権体制をとる理由としては、第一に新自由主義の政治を実現するには、どこでも、既存の政治体制を乱暴に壊す必要があるからである。第二に、大企業の儲けのために国民諸階層の利益を削減することで国民の支持と同意の幅を狭めることに対する労働運動や社会運動、反対政党の運動などの反対運動を抑圧し続けなければならないからである。

「安倍政治」の強権、反民主主義は安倍の個性もさることながら、新自由主義政治そのものが持っている特徴であるから、菅政権に代わっても、新自由主義政治を止めない限り、強権政治は変わらないのである。また、新自由主義政治体制は、必ず軍事強化と軍事大国化を伴うという特徴を見逃すことはできない。安倍政権が安保法制を強行し、改憲に執念を持ち続けたことがその証拠である。軍事強化は、グローバル大企業を各地域で噴出する抵抗から守り、新たな市場の「秩序」を守るために必要とされる。

安倍・菅政権はコロナの猛威に対し、新自由主義一本やりは無理と見て、巨額の財政支出を伴う利益誘導型政治と二本立てで対処しようとしてきた。コロナで打撃を受けた産業、企業に対する大規模な財政出動がそれである。その典型が悪評高い「GoToトラベル」キャンペーンである。安倍政権がこれを強行したのは、自民党の支持基盤たる宿泊、飲食、娯楽、卸・小売業、運輸、建設業界への間接的財政投入により、その苦境に手当てし、これら業界を自民党支持基盤として再強化するためであった。

安倍政治が追及した第一が新自由主義政治の維持・強行、第二が明文化改憲である。そのいずれもを菅政権は継承している。安倍は2017年5月3日の提言で、9条1項、2項を残し、自衛隊明記の条文を加えるという「加憲」論を提案した。しかし、全国的な市民運動と立憲野党による反対で憲法審査会を開催できなかった。

そこで反転攻勢に二つの手を使った。一つはコロナ感染拡大を利用して憲法に緊急事態条項を入れる改憲案を議論し、改憲論議の突破口にするという手である。しかし第一波が終焉する動きを見せるにつれ、緊急事態改憲論の口実は説得力を失い、下火になったのである。それに代わってにわかに登場したのが「敵基地攻撃力保有論」であった。安倍政権を継承する菅政権は、安倍辞任による市民の警戒心のゆるみを逆用して、改憲を推し進めようとしている。場合によっては9条以外から改憲論議を動かすことを含め、菅政権下の改憲は、極めて危険な状態が続く。

世論調査によれば、安倍政権の主要な政策に、国民はほとんどが反対してきたにもかかわらず、内閣支持率は長期にわたって安定して高かった。つまり、安倍政権の政策と支持率は連動していなかったのである。似たような傾向が、菅政権についての世論調査でもいえる。安倍政権が個々の政策に批判が強いのに政権支持率を維持し、長期政権を維持できたのは、安倍政権―より正確に言えば自公政権―に代わる選択肢が国民の前に見えなかったからではないだろうか。安倍政権はいわば「仕方のない支持」政権として存続したといえる。

安倍政治を変えるには、野党連合政権という選択肢しかない。ところが、今のところ立憲野党が、政権を目指して共通の政治構想を出し、自公政権に代わる選択肢として名乗りを上げるまでには至っていない。しかし、自公政権が続く限り「安倍なき安倍政治」が続くことは必定である。これでは、新型コロナの蔓延の鎮圧も、ポストコロナの福祉の政治も生まれないであろう。

「安倍政治」に代わる選択肢をつくるには、「安倍政治」に代わる政治の構想と、「安倍なき安倍政治」を倒す「担い手」が必要である。担い手は現行の「労組・市民と野党の共闘」を、政権を目指す共闘に発展させるしかない。この共闘は、2014年12月、安倍政権による「集団的自衛権行使容認」の解釈改憲に危機感を持って、「総がかり行動実行委員会」ができて以来、6年近くにわたって安倍政権に対峙してきた。

この共闘に支えられ、立憲野党の共闘も国会内で大きく前進し、安倍政権の悪政を阻むいくつかの大きな成果を上げた。第一の成果は、「安倍改憲」に反対して、改憲発議を許さなかったことである。第二の成果は、国会で安倍政権の政治に反対する野党が共同する取り組みを大いに前進させたことである。第三の成果は、共闘が単に安倍の悪政を阻止するための闘いにとどまらず、「安倍政治」を変える共闘への萌芽を持つに至ったことである。具体的には、新型コロナ対策の「政府・与野党連絡協議会」の設立、選挙での野党共闘、「市民連合」の結成と立憲野党間の政策合意の作成などである。

共闘を連合政権を目指す政権共闘へ発展させるうえでの阻害要因は、共産党と他の立憲野党で、党の目標に大きな違いがあるということである。そのため政権共闘はできないという消極論がある。しかし「終着駅」の違う政党同士が、当面のしかも国民にとっては極めて切実な課題実現のため「途中駅」まで一緒に行き、目的を実現するのが政権共闘である。「途中駅」に着くためにも政権を握らねばできないから、「終着駅」の違う政党が連合して政権を作ろうというのである。

「途中駅」のなかには、辺野古基地建設阻止とか、安保法制廃止、新自由主義政治を止めて社会保障制度を強化・充実するなどの大きな政治課題があり、自公政権である限り実現できない課題である。連合を作るには、お互いの「終着駅」は堅持しながらも、「途中駅」の実現のため、「終着駅」はペンディングにすることが不可欠だ。

政権共闘への芽として特に重要なのが、2019年5月29日に市民連合が提出し5野党・会派が「受け止める」形をとった、13項目の共通政策である。さらに、2020年9月19日に、市民連合は「立憲野党の政策に対する市民連合の要望書」をを発表し、立憲民主党、社民党、共産党に提出した。

13項目の共通政策は、三つの柱からできている。第一の柱は、憲法改悪に反対し、平和な日本と東北アジアをつくるというものである。これには、安倍改憲反対、安保法制廃止、辺野古新基地建設反対を含む。第二の柱は、新自由主義政治に反対し、福祉を重視する社会づくりである。これには、消費税引き上げ反対を含む。第三の柱は、「立憲主義に反する諸法律の廃止」を含めた立憲主義と民主主義を守るものである。

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野党共闘における実際的な問題として、立憲民主党の支持母体である日本労働組合総連合会、通称「連合」が徹底的な共産党嫌いで、共産党との共闘、ましてや連合政権を絶対に認めないことがある。従って「連合」以外の労働組合や市民団体など、共産党を忌避しない新しい支持母体を探求・育成するか、立民・共産両党を解党して他の立憲野党とともに連合新党を作り、自公政権を打倒するしかないのでは?

















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