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 辺見庸著「完全版 1★9★3★7」を読んだ。本書は「凶兆」ばかりがまざまざと目につく現在、「未来はかってなく巨きな危機に瀕している」という衆人のいつわらざる予感と同様、これほど「希望絶無」の状況はなかったと感じる著者が、1937年の南京大虐殺を核とする歴史的過去を偏執的に追及することで、現在の酸鼻を極める風景の祖型は1937年にあったという確信に至った魂の叫びを表わしたものである。

解説者の徐京植によれば、この作品は、戦争、虐殺、差別などについての事実認識を読者に求めているのではない。「事実」というなら、それは改めて言い立てるまでもなく明からだからだ。問題なのは「事実」の有無ではなく、明々白々な事実の前に立たされながら、それに背を向け「スルー」することのできる心性である。

安倍首相は東京オリンピック招致演説で、福島原発事故は完全に「アンダーコントロール」であると、あまりにも厚顔無恥な虚言を弄したが、大多数の人々が虚言を虚言と知りながら歓迎し喝采した。日清、日露戦争、満州事変、日中戦争、太平洋戦争当時から、おそらく人々はこうであったのだろう。ダマされたのではなく、それを自ら望んだのだ。自己の利害や保身のために、多かれ少なかれ国家や軍部と共犯関係(辺見のいう黙契)を結んだのである。

















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