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ケイト・ラワース著「ドーナツ経済学が世界を救う」を読んだ。本書は、現在主流派の経済学が50年以上前に書かれた教科書(典拠学説は200年前のもの)に従っている古色蒼然としたものであり、21世紀の問題を解決することはできないと主張し、これからの経済学には何が求められるかを広い視野に立って描き出したものである。

人類の長期的な目標を実現できる経済思考を模索し、それらの目標を図で表そうとしたらドーナツのような図ができあがった。同心円状の二本の大小の輪が基本の要素になる。小さい輪―社会的な土台を示す―の内側には飢餓や文盲など、人類の窮乏の問題が横たわっている。大きい輪―環境的な上限を示す―の外側には、気候変動や生物多様性の喪失など、危険な地球環境の悪化がある。それらの二本の輪に挟まれたところがドーナツ本体になり、地球の限りある資源ですべての人のニーズが満たされる範囲を示す。このドーナツの中に入るための経済学の考え方を明らかにする。

21世紀の経済学者の七つの思考法
第一は「目標を変える」。果てしないGDP(国内総生産)の成長を目指すのではなく、地球の限りある資源の範囲内で、すべての人が人間的な生活を営めるようにすることを目標とする。つまりドーナツの中に入ること。

第二は「全体を見る」。視野の狭い極めて限定的なフロー循環図のみで経済の全体を説明するのではなく、経済は社会や自然の中にあり、太陽からエネルギーを得ているものとする新しい経済の全体像を描く必要がある。

第三は「人間性を育む」。20世紀の経済学の中心的肖像である合理的経済人ではなく、社会的適応人としてドーナツの中にすべての人を入れるという目標の実現性を大幅に高められるようなしかたで人間性を育むこと。

第四は「システムに精通する」。19世紀の過った力学的平衡の喩えに基づく市場の供給曲線と需要曲線が交差した図ではなく、シンプルな一組のフィードバックループで表せるシステム思考の図=動的システムを経済学の中心に据えることで、経済を絶えず変わり続ける複雑なシステムとして管理するべきである。

第五は「分配を設計する」。20世紀にはクズネッツ曲線に基づき、不平等は拡大、縮小を経て最終的に成長によって解消されるとされていた。現在では、不平等は経済的必然ではなく、設計の失敗によることがわかっている。代表的な分配法の一つであるフローのネットワークでは、単なる所得ではなくあらゆる富の再分配と金を生み出す力の再分配の方法が模索される。

第六は「環境再生を創造する」。これまでは環境汚染もクズネッツ曲線に基づく不平等と同様に、悪化、低減を経て最終的には成長によって一掃されると言われてきたが、現実には環境破壊はあくまで破壊的な産業設計の結果だ。21世紀には、循環型―直線型ではなく―の経済を創造し、地球の生命循環のプロセスに人類を完全に復帰させられるよう、環境再生的な設計を生み出せる経済思考が求められる。

第七は「成長にこだわらない」。主流派の経済学では終わりのない経済成長が不可欠のこととみなされている。この自然の摂理に逆らおうとする試みは、高所得・低成長の国々で根本的な見直しを迫られている。現在の経済は、繁栄してもしなくても成長を必要としている。わたしたちに必要なのは、成長してもしなくても繁栄をもたらす経済だ。そのような発想の転換ができれば成長への妄信が消え、どうやって成長依存の経済を変えられるかを探れるようになる。

21世紀の課題は、人類がドーナツの安全で公正な範囲の中でバランスのとれた繁栄を遂げられるよう、「豊かな生命の網のなかでの人類の繁栄」を推進できる経済を築くことだ。そのためにはあらゆる経済が社会の中に、生命の世界の中にあることに気づくと同時に、家計、コモンズ、市場、国家の四者すべてが、多くのニーズや要望を満たす効果的な手段になり得ることに気づく必要がある。そうすれば経済の複雑なダイナミクスを管理し、現在の分断的で非環境再生的な経済を、分配的で環境再生的な経済に設計し直す道が開けてくる。


本書は上記の七つの思考法に基づく実施例を提示しながら、さらに詳細な説明をしている。経済学者だけでなく政治家や企業経営者、自治会運営者、一般市民のすべての人々が読み・考え・実行するべきだと思える。
これまでは経済学は予測能力がなくて科学とは言えない無価値な学問だと思っていたが、本書を読んでこの思考法が社会で実現されるのなら、まんざらでもないと考え直した。

















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