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 伊勢崎賢治、布施祐仁著「主権なき平和国家」を読んだ。本書は、地位協定の国際比較からみる日本の姿を解明したものである。日本は「戦時」でも「準戦時」でもなく、自衛隊という戦力を持ち主権が確立した「平時」のはずなのに、他国の地位協定と比べると何かがおかしい。日本は形式的には「独立国」でも、日米地位協定によって主権が大きく損なわれている。主権とは、国家が他国から干渉を受けずに独自の意思決定を行う権利のことである。

安倍自民党は2018年の改憲発議を目指しているが、主権が損なわれた、つまり自国のことを自分で決められない国が、どんなに立派な憲法をつくってもそれは「絵に描いた餅」に過ぎない。だから憲法よりもまずは日米地位協定を変える必要がある。日米地位協定を改定し、真の主権を取り戻してこそ、日本は憲法を自らの意思で実行していく力を持つことができる。

日米地位協定を他国の地位協定と比較した結果をまとめるとつぎのようになる。
1.日米地位協定は「平時」の協定なのに、他と比べて断トツに日本の主権が不在である。
2.日米地位協定は、国民の生命・財産に対する在日米軍の脅威を排除するべき日本政府の能力を損なっている。
3.日米地位協定は、領土係争中の国との外交交渉で日本の主権を発揮する妨げになる。
4.主権意識が麻痺している日本人は、自衛隊が海外派遣先で地位協定によって特権を享受し、その国の主権と人々の権利を脅かす存在になり得ることに鈍感である。

歴代の日本政府が、日米地位協定を「パンドラの箱」のように扱い、アメリカに改定を要求するのを避け続けてきたために、国民もこの「日米地位協定=永続占領レジーム」に慣れ切ってしまっている。ドイツも韓国もイラクも改定を実現したように、地位協定は「パンドラの箱」などでは決してない。

「半占領国家」から「主権国家」になるための改定の最大のポイントは、「駐留を認められた外国軍隊には特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されない」というこれまでの前提を改め、ドイツなどと同様に、日本の領域内では日本の法令が適用されるという「属地主義」を徹底し、在日米軍にも原則として日本の法令を適用することである。

地位協定の改定を実現するためには、国民の世論と運動を高めるしかない。「地位協定をもっと対等にしろ」「政府はアメリカと交渉しろ」という国民多数の声を背景に、日本政府が覚悟を決めてアメリカ政府と交渉して初めて、チャンスは開かれる。国民世論と国民運動がなければ日本政府は改定要請しないし、アメリカは譲歩しない。
ドイツ、イタリア、韓国、フィリピン、イラク、アフガニスタンで改定実現の起因になったのは、国民世論と国民運動である。

















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