ウィリアム・ペリー著
「核戦争の瀬戸際で」
を読んだ。本書は、防衛関連企業創業社長から国防次官、国防副長官、国防長官を歴任し、その間一貫して「核なき世界」を目指して核戦争の危機回避のための政策を推進してきた著者の回顧録である。
核の危険性は冷戦の終焉とともに後退したが、21世紀に入ってアメリカとロシアの緊張が高まり、ロシアは核戦力の大幅なアップグレードに乗り出している。また、地域的核戦争と核テロリズムという二つの新しい核の危険性に直面している。
核戦争の瀬戸際で回避されたキューバ危機を、ソ連のミサイル分析チームの一員として体験し、核兵器の危険性を削減する取り組みに一直線に進む以外に道は見えなかった。キューバ危機は、ソ連の核兵器工場に対するハイテクシステムの開発から身を引き、ペンタゴンの指導者として、アメリカの核抑止力を維持強化するために従来型の戦略兵器を最新化すること、法制度の立案やグローバル外交、民間に啓発活動を通じて、核兵器削減に向けた国際協力計画を遂行する契機となった。