ナオミ・クライン著「ショック・ドクトリン」を読んだ。本書は、シカゴ大学の経済学者ミルトン・フリードマンと彼が率いたシカゴ学派の影響のもと、1970年代から30年以上にわたって、南米を皮切りに世界各国で行われてきた「反革命」運動の徹底批判である。それは、社会福祉政策を重視し政府の介入を是認するケインズ主義に反対し、一切の規制や介入を排して自由市場のメカニズムに任せればおのずから均衡状態が生まれるという考えに基づく「改革」運動であり、その手法を「ショック・ドクトリン」と名付ける。

シカゴ学派の経済学者たちは、ある社会が政変や自然災害などの「危機」に見舞われ、人々が「ショック」状態に陥って何の抵抗もできなくなった時こそが、自分たちの信じる市場原理主義に基づく経済政策を導入するチャンスだと捉え、それを世界各地で実践してきた。
その原点とも言うべきおぞましい人体実験が、ショック・ドクトリン導入の20年ほど前、米ソ冷戦下の1950年代にカナダのマギル大学でひそかに行われた。CIAの資金援助を得て行われたこの実験は、被験者に電気ショックや感覚遮断、薬物投与などの「身体的ショック」を過剰なまでに与えることによって、その人の脳を「白紙状態」に戻すことを目的としていた。個人と社会全体という違いはあるが、ショック・ドクトリンと共通の図式である。

フリードマン提唱の新自由主義(市場原理主義)は、徹底した民営化と規制撤廃、自由貿易、福祉や医療などの社会支出の削減を柱とする。こうした経済政策は大企業や多国籍企業、投資家の利害と密接に結びつくものであり、貧富の格差拡大やテロ攻撃を含む社会的緊張の増大につながる悪しきイデオロギーである。危機を利用して急進的な自由市場改革を推進するのは、「惨事便乗型資本主義」といえる。

ショック・ドクトリンの適用例として、チリのクーデターをはじめとする70年代のラテンアメリカ諸国、イギリスのサッチャー政権、ポーランドの「連帯」、中国の天安門事件、アパルトヘイト後の南アフリカ、ソ連崩壊、アジア経済危機、9・11後のアメリカとイラク戦争、スマトラ沖地震、ハリケーン・カトリーナ、セキュリテイ国家としてのイスラエルなどが検証されている。

日本も新自由主義を導入した小泉政権とそれをさらにエスカレートさせた安倍政権によって、貧富の格差拡大が急伸し、生きづらい国になってきた。

















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