水島治郎著「ポピュリズムとは何か」を読んだ。本書は、現代世界で最も顕著な政治現象であるポピュリズムを理論的に位置づけ、主として西欧とラテンアメリカのポピュリズム成立の背景、各国における展開と特徴、政治的な影響を分析したものである。特に、ポピュリズムとはデモクラシーに内在する矛盾を端的に示すものではないかとの問題提起をしている。なぜなら、現代デモクラシーを支える「リベラル」な価値、「デモクラシー」の原理を突き詰めるほど、結果としてポピュリズムを正当化することになるからである。

ポピュリズムの特徴は、第一にその主張の中心に「人民」を置いていることである。ポピュリズム政党は、自らが「人民」を直接代表すると主張して正統化し、広く支持の拡大を試みる。第二に「人民」重視の裏返しとしてのエリート批判がある。第三に「カリスマ的リーダー」の存在がある。第四にそのイデオロギーにおける「薄さ」である。固有の具体的な政策はなく、支配エリートのイデオロギーや価値観に反対する政策をその都度掲げる。

ポピュリズムの主張の多くは、デモクラシーの理念そのものと重なる面が多い。ポピュリズム政党は、直接民主主義的制度である国民投票や国民発案を積極的に主張する傾向がある。西欧のポピュリズムでは、右派であっても民主主義や議会主義は基本的前提とされており、「真の民主主義者」を自任し、人民を代表する存在と自らを位置づけている。

ポピュリズムがデモクラシーの発展を促進する面としては、第一に政治から排除されてきた周縁的な集団の政治参加を促す。第二に既存の社会的な区別を越えた新しい政治的・社会的まとまりを作り出すとともに、新たなイデオロギーを提供できる。第三に「政治」そのものの復権を促す。すなわち重要な課題を経済や司法の場に委ねるのではなく、政治の場に引き出すことで人々が責任をもって決定を下すことを可能にする。

デモクラシーの発展を阻害する面としては、第一に「人民」の意思を重視する一方、権力分立、抑制と均衡といった立憲主義の原則を軽視する傾向がある。第二に敵と味方を峻別する発想が強いことから、政治的な対立や紛争が急進化する危険がある。第三に人民の意思の発露、特に投票によって一挙に決することを重視するあまり、政党や議会と言った団体・制度や、司法機関などの非政治的機関の権限を制約し、「良き統治」を妨げる危険がある。

















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