吉田敏浩著「日米合同委員会」の研究を読んだ。本書は、「日米合同委員会」が敗戦による米軍占領体制を、基地を通じて永久に維持するための仕組みであり、今日までもそこでの決定事項は、秘密裏に憲法や国内法よりも優先され、国や国民の主権が空洞化されて、国民の生活にも重大な影響を及ぼしていることを具体的な事例をもとに指摘し、日米合同委員会に代わる国会の「日米地位協定委員会」の設置、運用を提案している。

 日米合同委員会の前身は、日米間の協議機関「予備作業班」で、対日講和条約の発効前から米軍基地の決定・提供の手続きのために設置された。1952年、対日講和条約と日米安保条約・行政協定が発効後、そのまま日米合同委員会に移行し、それまでの協議や合意や作業をすべて継承した。また、基地提供作業のほかに、米軍の特権を保証するための国内法令制定のための準備作業があった。

 日米合同委員会の議事録や合意文書は原則非公開で、情報公開法に基づき開示請求しても、ことごとく不開示になる。非公開の根拠となる文書も秘密にされる。日米合同委員会の密室で、日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人によって、米軍に有利な特権を認める秘密の合意、すなわち密約がいくつも結ばれている。
「基地権密約」は、安保改定に伴う行政協定から地位協定への切り替え交渉で、新しい地位協定の条文にいくら変更がほどこされても、米軍の基地使用の特権は行政協定時代と実質的に変わらないとする密約である。
「裁判権放棄密約」は、米軍関係者による犯罪に関して、「日本にとって著しく重要な事件以外は裁判権を行使しない」という密約である。「身柄引き渡し密約」は、米軍人・軍属による犯罪において、被疑者の身柄をできるかぎり日本側で拘束せず、米軍側に引き渡すという密約である。これは国内法の刑事特別法に抵触している。

「航空管制委任密約」は、横田空域(首都圏を中心に1都9県の上空をすっぽり覆う広大な空域)や岩国空域(米軍岩国基地を中心に、山口、愛媛、広島、島根の4県にまたがる広い空域)、那覇進入管制空域などにおける米軍戦闘機・輸送機の発着を独占的、優先的に使用するという密約である。これらは、日米地位協定にも国内法上にも法的根拠がない。つまり、事実上日本の空の主権が、法的根拠もなく米軍によって奪われており、独立国としてあるまじき状態が、独立回復後60年以上も続いている。

 これらの問題の抜本的解決策としては、日米地位協定・第25条を廃止して、米軍の軍事的要求を優先する密室協議の場である日米合同委員会をなくすべきである。地位協定の運用に関する問題は、日本の関係各省庁がアメリカ側の主張を聞き取り、その全容を正確に衆参両院の「日米地位協定委員会」に逐次報告し、同委員会で審議したうえで日本側の主張をアメリカ側に伝えるようにすればよい。

 これを実現する一歩として、与野党を問わず国会議員が、日米合同委員会の実態解明、議事録や合意文書の情報公開要求、そして「日米地位協定委員会」設置に向けて、超党派の勉強会づくりから始めてはどうか。もちろん、そうした動きをバックアップする日本社会の問題意識と世論の高まり、国民・市民の支持も欠かせない。

 今の自民党政権や国会議員、国民の問題意識をみれば、著者の正論も実現は極めて困難な気がする。歴代の自民党政権や外務省のエリート官僚によるアメリカ追従政策は、60年以上続いており変わる気配がないし、国民の大多数も問題意識がない。国会議員は、与野党とも党利党略に明け暮れ、国民主権などお構いなしに自分たちが主権者と勘違いしているのだから。

















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