水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」を読んだ。本書は現在、16世紀以来世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌を極めていく「歴史の危機」状態にあり、未だ見えない次のシステムへのソフトランディングを実現するには、準備期間として脱成長の定常状態社会を構築する必要があると主張している。

資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムであり、現在もう地理的なフロンティアは残っていない。また、株式の高速取引システム化に見られるように、「電子・金融空間」のなかでも、時間を切り刻み、1億分の1秒単位で投資しなければ利潤を上げることができない。先進諸国の政策金利はおおむねゼロ、国債利回りも超低金利となり、資本の自己増殖が不可能になってきている。つまり、資本主義が終わりに近づきつつある。

さらに、中間層が自分を貧困層に落としてしまう資本主義を支持する理由がなくなっている。こうした現実を直視すれば、資本主義が終わりを迎えることは、必然的な出来事とさえ言える。資本主義の終わりの始まり。この「歴史の危機」から目をそらし、経済成長という旧来の信仰にすがって対症療法にすぎない政策を打ち続ける国は、この先、大きな痛手を負うはずである。

アベノミクスの第一の矢、金融緩和によるデフレ脱却はできない。金融グローバリゼーションにより貨幣数量説は成立せず、貨幣が増加しても金融・資本市場で吸収され、資産バブルの生成を加速させるだけである。そしてバブルが崩壊すれば、巨大な信用収縮が起こり、そのしわ寄せが雇用に集中する。
アベノミクスの第二の矢である積極的な財政出動も無意味であることは、90年代以降の日本が実証している。理由は、すでに経済が需要の飽和点に達していたからである。財政出動は「雇用なき経済成長」の元凶になる。なぜなら、過剰設備を維持するために固定資産減耗を一層膨らまし、ひいては賃金を圧迫することになるからである。

資本主義の暴走にブレーキをかけながらソフトランディングするには、少なくともG20が連帯して、巨大企業に対抗する必要がある。具体的には、法人税の引き下げ競争に歯止めをかけたり、国際的な金融取引に課税する仕組みを導入したりする。そこで徴収した税金は、食糧危機や環境危機が起きている地域に還元することで、国境を越えた分配機能をもたせるようにする。

ソフトランディングに失敗すれば、これまでの歴史が示すような国家間の大規模戦争はないとしても、国家の財政破綻や国内労働者の抵抗、内乱を生み出すかもしれない。そして長期の世界恐慌の状態を経て、世界経済は定常状態へと推移していく。そして次にどのようなシステムが形成されるのかは、現時点では誰にもわからない。

安倍政権は、経済成長という旧来の信仰にすがって対症療法にすぎない政策を打ち続けており、日本はこの先、大きな痛手を負うことになる。次の社会システムの構想、推進準備、実行には長期的な取り組みが必要だが、ほとんどの政治家は自分の任期という短期間しか視野にないから、すぐに成果が見える花火のようなイージーな政策だけを考え、国民生活は置き去りにすることになる。安倍は特にその傾向が強い。

















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