渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

4 新自由主義改革の新段階----改革路線と司令塔の競合(1)
 安倍政権の新自由主義改革の第一の特徴は、新自由主義改革の司令塔の分立、競合である。それが起きた理由の第一は、新自由主義改革が第三期すなわち後期に突入したことである。後期には、既存政治経済の体制を攻撃・再編する司令塔としての経済財政諮問会議のみでなく、国家の力を使って積極的に大企業支援体制の構築に取り組む産業競争力会議などが、ともに必要となってくるのである。

司令塔分立の第二の理由は、新自由主義推進派の中に、いくつかの勢力、分派が現れ、時に激しく衝突するに至ったことだ。それらの勢力が、各々別の司令塔に蟠踞して自らの新自由主義政策を実行しようとしている。
新自由主義推進派の第一の勢力は、財務省官僚である。財政再建という目標達成のために、社会保障や公共事業への「過大な」支出の削減に意欲を燃やすとともに、企業負担の軽減を行うための財源という意味を持つ消費税引き上げも、税収増の見地から強力に推進する。

第二の勢力は、経産省官僚に代表される勢力である。経産省官僚は税・財政面から国家的支援に力を入れるため、一方で法人減税などで財務省と対立し、他方で国家的規制の排除を求める急進派とも対立する。
第三勢力は、急進派自由主義勢力で、特定省庁を背景にはしていない。多くは産業競争力会議、規制改革会議の民間議員グループに依拠する学者や財界人からなる。急進派は、企業競争力強化は規制緩和と減税による企業間競争喚起以外にないと主張し、特定企業や産業への国家的支援に強く反対する。特に、教育・労働・医療・農業など、従来国家の関与によりナショナル・ミニマムが守られてきた領域の規制緩和を主張する。

安倍政権における新段階の第二の特徴は、新自由主義改革の目標が、社会保障費などへの新たな削減、切込みと、大企業支援のための市場創出をはじめとする、より積極的なグローバル企業支援政策という二つの目標が並立しているということである。
これは、後期新自由主義になって新自由主義改革の目標が複数化したこと、さらに、目標が単なる既存制度への切込みだけでなく、そこで生じた矛盾の手当てや新自由主義体制存続を含めたグローバル競争国家の制度作りへと移動した結果である。
司令塔の分担関係では、新自由主義の第一目標については経済財政諮問会議が受け持ち、第二の積極的支援政策のほうは産業競争力会議が受け持つという分担になっている。また、改革目標の包括化にともない、安倍政権の新自由主義改革が、官邸主導でありながら財務、経産、厚労、文科、総務、法務、国土交通など各省の官僚機構が総動員されざるを得なくなっている。

















管理者にだけ表示を許可する


| HOME |


Design by mi104c.
Copyright © 2017 個人出版コミュニティ, All rights reserved.