渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

3 軍事大国化と解釈改憲、明文改憲戦略(2)
 安倍は、己の目指す軍事大国をつくるために、アメリカや保守支配層が安倍に求めていることを超えて、「国益」実現のために「自由」に軍隊を使えるようにすること、その障害となる憲法とそれに基づく非戦体制全体をひっくり返すことをもくろんでいる。
2013年12月、日本版NSCといわれる「国家安全保障会議」と「国家安全保障局」を新設し、67人の人間を配置した。さらに、12月17日戦後初めての「国家安全保障戦略」を発表した。これらは、そのスローガン「積極的平和主義」とともに、海外での武力行使を解禁する集団的自衛権とセットであった。

軍事大国をめざす安倍は、解釈改憲を先行させながら、明文改憲をあきらめていない。その理由の一つは、日本がアメリカに追随して戦争に参加するとなれば、日本国憲法の全体系がそれに立ちはだかるからだ。第2は、軍事大国としての完成には、自国の戦略遂行上「国益」実現のためにいつでも軍事力に訴えることができる体制、非常事態規定の創設をはじめとした憲法の全面的改変は不可避と考えられていることである。第3は、集団的自衛権の限定行使や集団安全保障参加の曖昧化など現状の政府解釈では、国民の運動次第で再び解釈改憲の限界に悩まされることが必定だからである。

自民党が2012年4月27日に発表した「日本国憲法改正草案」こそ、安倍の目指す軍事大国がもつべき憲法のモデルである。草案は、憲法9条を改変して日本が個別的、集団的自衛権を持つことを明記している。さらに国防軍の保持を謳うとともに、軍法や軍法会議の設置を謳っている。また、憲法21条を「改正」し、「公益及び公の秩序を害することを目的とした」活動や結社の禁止を規定している。戦時下の反戦活動や団体を取り締まる立法の根拠規定である。さらに、第6章に「緊急事態」の章を新設し、緊急事態においては首相が国会を通さずに、命令で国民の自由を制限することができる規定(戒厳令)をおいている。

安倍は当面、明文改憲については二段階戦略を考えている。第一段階では、公明党の主張する「加憲」方式で、「新しい人権」などの追加を柱とする改憲をまず実現し、その際あわよくば96条改正をセットでやってしまう。こうして改憲について国民を慣れさせたうえで、9条改憲に臨むという二段階戦略である。
安倍政権が一方で解釈改憲を強行しつつ、同時に、2014年通常国会で8党派共同で改憲手続法改正を提案し、通過させたのは、憲法問題での超党派合意づくりを進める重要な一歩に位置づけられている。

















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