渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

1 安倍政権の二つの顔・・・グローバル競争大国への野望(3)
 安倍政権が展開している新自由主義改革、集団的自衛権行使容認政策、軍事大国化政策を安倍の発案とみることは誤りだ。自衛隊の海外での武力行使を求めるアメリカの圧力は、すでに四半世紀に及ぶ。集団的自衛権行使を求める圧力に限っても、2000年に入った直後からすでに15年に及んでいる。
安倍個人の役割は、保守支配層が実現を欲している諸課題、とりわけTPPや原発再稼働、日米軍事同盟強化など、安倍以外の首相ではやれない課題を強行していることだ。安倍の個性は、保守支配層が求める二つの課題を「大国」化という一つの目的にまとめあげ、強い執念・妄念をもって実現にまい進している点にある。

かくして、第二次安倍政権は、アメリカや財界にとっては痛し痒しの政権である。安倍のような人間でなければ久しくアメリカが求めてきた日米共同作戦体制や米軍の全面後方支援と肩代わりの体制づくり、TPPの強行、締結はおぼつかないし、財界が求める消費税引き上げや法人税引き下げもできないだろう。しかし、安倍政権は中国や韓国と摩擦を引き起こし、アジア・太平洋地域でアメリカが求める安定した秩序に擾乱と動揺をもたらしかねない。財界にしても、中国との不安定な関係は大きなマイナスだ。問題は、安倍の第一の顔と第二の顔を切り離せないという点だ。それがアメリカや財界が安倍政権の評価をめぐって揺れ続けてきた要因であったが、オバマ政権も財界も安倍の二つ目の顔が前面に出ないようにけん制しながら、安倍政権を全面的に支えるという決断を下した。

2 安倍政権を支える集権体制とその担い手(1)
 安倍政権で注目すべきことは、政権が官邸主導の集権的意思決定の体制をつくりあげており、しかも官僚機構と自民党が全面バックアップしていることだ。こうした集権体制は、安倍が意図してつくりあげたものではなく、新自由主義改革の台頭以来の政治構造の改変の帰結であり、その意味で歴史的性格を持っている。つまり、90年代初頭以後の「政治主導」の掛け声のもとで形成された体制の帰結なのである。しかも、第二次安倍政権はそれ以前の政権とは大きく違い、軍事大国化、新自由主義改革の第三期、あるいは後期新自由主義期の政治体制という色合いを持っている。

第一に安倍政権は、小泉政権期よりも強い集権体制となった。その現れの一つは、小泉政権と違って全面的に官僚機構を動員していることだ。その要因の一つは、官僚機構の新自由主義への転向が終わり、官僚がいまや新自由主義改革の政策作りの尖兵になっていることだ。もう一つの要因は、新自由主義改革が企業競争力強化の障害物の打破という段階から、国家関与によってグローバル企業を積極的に支援する制度作りの段階----
つまり前期から後期新自由主義段階に移行し、官僚の持つ政策形成力が改めて必要になっていることである。

小泉政権より強い集権体制を実現している二つ目の点は、小泉政権のときにはまだ改革に立ち塞がった自民党が弱体化し、新自由主義の抵抗体にならなくなったことだ。これは小泉政権が強行した地方行財政の「三位一体改革」、市町村合併による地方の衰退が党の支持基盤を縮小・解体した結果生じたものである。さらに、郵政民営化を目指した郵政解散、自民党内「抵抗勢力」に対する「刺客」の派遣による既存自民党の組織破壊が弱体化を加速したのである。その結果、安倍政権は、官邸の意思を妨げるものがなくなった分、政策をスイスイ強行することが可能となったのである。

















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