渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

1 安倍政権の二つの顔・・・グローバル競争大国への野望(1)
 一つ目の顔は、「軍事大国化」と「新自由主義改革」という二つの改革を強行する保守支配層待望の政権という顔である。前者は、アメリカの要請による自衛隊の海外派兵の障害になる憲法の改変、軍事力強化であり、後者は、多国籍企業の競争力を拡大するための大企業本位の政治経済体制への改変である。

新自由主義改革には三つの柱がある。一つは企業の労働力コスト削減のための賃金削減である。第2の柱は大企業への負担軽減であり、法人税軽減とそれを実現するための財政支出削減策としての社会保障費の削減および消費税増税である。第3の柱は、蓄積を増やした多国籍企業の市場の拡大、新たな市場づくりである。

二つ目の顔は、靖国参拝、河野談話や村山談話の見直しなどの執拗な歴史修正主義の動きにみられるような保守支配層の眉をひそめる政権という顔である。復古主義的政権とかタカ派の「お友達政権」とかの評価は、こちらの顔を過大に評価した結果生まれたものと言える。

安倍政権の矛盾した二つの顔は、安倍にとって歴代政権にはない野望---日本を中国と対峙する「大国」「軍事大国」にしたいという野望を実現するためになくてはならないものなのである。こうした野望は、アメリカや財界の要請を超えている。「軍事大国」とは、自国の国益を実現するために必要な政治的、軍事的力を持ち、かつ使用できる国である。
安倍の目指す大国化にとって、第1の顔は不可欠なものである。自衛隊の海外派兵、財界が求めてきた新自由主義改革、アベノミクスも、安倍にとっては軍事大国の基礎をなし、軍事力増強を図る土台を作るという意義を持っている。

安倍にとって第2の顔も不可欠だ。大国化の社会的基礎は国民の同意であり、国民が大国化を支持する意識を涵養するには、戦後70年にわたって培われてきた戦争忌避意識を払拭する必要がある。そのためには歴史の見直し、日本帝国主義の侵略と植民地支配を「正しく」位置づけ直されねばならないものとなる。教育改革についての安倍のただならぬ執念も同じ理由からである。

















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