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 堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ II」を読みました。本書では、軍事費のしわ寄せと不況による教育や医療、社会保障関係の予算の削減による格差と貧困の拡大、その背景に潜む軍産複合体、学資ローンビジネス、労働組合や医産複合体、刑産複合体など、政府と手を結ぶことで利権を拡大させる様々な利益団体の存在を活写しています。この「コーポラティズム(政府と企業の癒着主義)」は、安倍政権下の日本でも顕著になってきており、アメリカと同じような格差と貧困が拡大していくのでしょう。本書の内容は次のとおりです。

1 公教育が借金地獄に変わる
 国からの公的予算削減に対応するため、大学は学費値上げや授業料の高い州外学生を惹きつけるため設備投資を行い、経営悪化を引き起こす。大学間競争により有名校と公立大学の格差が急激に広がっている。連邦奨学金制度は、授業料の高騰のため不足分を学資ローンで補うなど学生側の負担が年々増大、民営化された学資ローン(サリーメイ)が政府直営のローンを駆逐、ローンの利子を自在にアップし、債務不履行者が続出、不良債権化した学資ローンは転売されるたびに金額が上乗せされ、返済不可能な借金地獄になる。また、営利目的の教育ビジネスは、数十億ドルの巨大市場に成長し、大規模ロビイスト団体として政治的影響力を持つ。

2 崩壊する社会保障が高齢者と若者を襲う
 高齢者のための公的年金制度は、加入資格に職業差別があり、インフレ調整機能がないなど、老後を保障する力がなかった。企業は税金対策と従業員の離職防止のために企業年金を確立していた。そのため社会保障の中心が官から民へ移行した。GMは、従業員と退職者の年金と医療保険を負担し続け、自動車に上乗せされるこのコストが競争力を弱め、破産に至った。破産による退職者全員が、生涯無料の医療保険の適用廃止となった。多くの高齢者が将来に不安を抱えている。平均寿命の上昇や、物価や医療費など生活費が値上がりする一方で、社会保障が未整備で賃金の上昇が止まったままであるため。高齢者のカード破産が拡大している。現役と高齢者の世代間人口比率が逆転し、ギャップが拡大するほど年金システムの崩壊が加速する。

3 医療改革vs.医産複合体
 高い失業率の下で人々は職と保険を同時に失い、労働人口の3分の2が無保険または必要な医療を受けていない。自治体は貧困層への公的医療予算を削減し、医療費や処方薬代は上昇を続けている。そのため、多くの人が貯金を使い果たし、巨額のクレジット負債を負い、基本的な生活費の支払いができない。無保険者の主流は、貧困層や高齢者ではなく、ある程度の収入がある中流層である。「オバマ・ケア(オバマの医療改革)」は、高額な医療費支出の削減と新たな公的保険による無保険者の解消を目指すもの。しかし、オバマ主催の「医療改革サミット」では、日本と同様の単一支払い皆保険制度の推進者グループは排除されていた。

 製薬会社は、医薬品価格を今後10年で8000億ドル(処方薬の総額の2%)値下げする代わりに、高齢者向け公的保険メディケアの処方薬の値引き交渉を製薬会社と行うというオバマの公約を今後10年間見送ること、および外国から安く薬を輸入するという公約も破棄することでオバマ・ケアを支持するという合意を交わした。一方、医療保険業界と共和党は、オバマ・ケアのなかの「公的保険オプション(民間の医療保険と公的保険の競争)」に強く反対し、国会議員へのロビー活動やテレビCMによる広報活動を行っている。アメリカの医療を破綻させている医療保険会社や製薬会社などの医産複合体を排除するには、政府が一括で運営責任を負う単一支払い皆保険制度が必要不可欠だが、医療改革の議論が始まると真っ先に選択肢から外され、公的保険オプションという目眩ましの代替案にすり変わった。

4 刑務所という名の巨大労働市場
 刑務所は、もはや「犯罪防止のための場所」や「更正の場所」ではなくなった。社会復帰させるための職業訓練や教育は、コスト削減で真っ先に廃止される。今や刑務所は、連邦や州が直面する財政難の解決策に他ならない。刑務所が囚人達に押しつける負担範囲は拡大する一方である。トイレットペーパーや図書館の利用料、部屋代や食費、最低レベルの医療サービスなど、本来無料であるべき部分まで請求されている。自由市場至上主義の熱気と連邦及び州政府の財政難により、民営刑務所は急激に拡大し、巨大ビジネスの仲間入りをした。労働人口の約三割を占める非正規労働者による、劣悪な労働環境に対する訴訟増加に対する対策として、企業は、発展途上国の労働者よりも、非正規社員よりもさらに条件の良い、数百億ドル規模の巨大市場、囚人労働者に注目した。囚人労働者の仕事としては、電話交換手、番号案内サービス、データ入力、電話予約係、苦情センター、各種製品の製作、パソコンのリサイクル作業など多岐に渡る。囚人を対象にした国内アウトソーシングの拡大は、国内の労働者や組合、企業にとっても脅威になる。

 国内の投資家達は、軍需産業やIT産業と並んで今最も利益率が高く、人気急上昇の投資先として、刑務所ビジネスに注目している。犯罪率は横ばいなのに、囚人数は毎年数パーセントずつ上昇している。アメリカの総人口は世界の5%だが、囚人数は世界の25%を占める「囚人大国」である。国も州政府も刑務所建設を推進するのは、今最も価格が高騰している刑務所REIT(不動産投資信託)による。刑務所の建物と土地を所有して、州の自治体などのテナントに賃貸する。建設費用のスポンサーは、ウォール街の金融大手が投資する。

 サブプライムローン破綻によるホームレス人口の増加が、刑務所人口拡大につながった。ホームレス対策として各自治体が厳罰化を適用、ホームレスを犯罪者として取り締まり始めた。警察はホームレスを徹底的に監視し、交差点以外の道路横断、公共の場をうろうろすること、屋外で開封した酒類を所持することなど、ありとあらゆる小さな行動を理由に逮捕している。軍需産業を潤わせた「共産主義への恐怖」に代わる「テロや凶悪犯罪への恐怖」という新たなマーケティングが、刑務所産業複合体を巨大なビジネスに成長させている。

















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