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 堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ」を読みました。本書は、アメリカ社会のすみずみから噴き出している問題一つ一つを検証し、つなぎ合わせることによって、国境、人種、宗教、性別、年齢などあらゆるカテゴリーを超えて世界を二極化している格差構造と、それを糧として回り続けるマーケットの存在、国家単位の世界観を根底からひっくり返さないと一方的に呑み込まれて行きかねないほどの恐ろしい暴走型市場原理システムを浮かび上がらせています。そこでは「弱者」が食いものにされ、人間らしく生きるための生存権を奪われたあげく、使い捨てにされていく。世界を覆うこの巨大な力に抵抗する術はあるのだろうか?これは、政治・経済システムがアメリカ追従型の日本にとって決して他人事ではないでしょう。取り上げられている問題は次のようなものです。

1 サブプライムローン問題
 アメリカの住宅ブームが勢いを失い始めた時、業者は増え続ける不法移民と低所得層をターゲットにした。自己破産歴を持つ者やクレジットカードが作れない者でも住宅ローンを組めるという触れ込みで顧客を掴むやり方だ。ローン返済ができず差し押さえられた物件の債権を担保としたサブプライム担保証券は、住宅価格が下がり貸し倒れが増え、証券の格下げにより株価が大きく動揺、大手銀行によるファンドの凍結を契機として株安の波が拡大し、世界中の株式市場を大パニックに引き入れた。「サブプライムローン問題」は単なる金融の話ではなく、過激な市場原理が経済的「弱者」を食いものにした「貧困ビジネス」の一つだ。

2 貧困が生み出す肥満国民
 レーガン政権は、効率重視の至上主義を基盤にした政策を次々に打ち出し、アメリカ社会を大きく変えていった。目的は、大企業の競争力を高めることで経済を上向かせること。そのために企業に対する規制を撤廃・緩和し、法人税を下げ、労働者側に厳しい政策を許し社会保障を削減する。(これは正に安倍政権が今進めている政策そのものだ。)レーガン政権以降、所得格差を拡大させている市場原理主義は、中間層を消滅させ、下層に転落した人々が社会の底辺から這い上がれないという仕組みを作り出し、貧困層救済のための社会保障政策を徐々に縮小していった。

 共働きと貧困家庭生徒の栄養改善を目的として、すべての学校が任意で参加できる無料―割引給食制度があるが、メニューはコスト削減のためのジャンクフードばかりで、肥満児童増加の原因になっている。貧困地域ではフードスタンプ受給者が多く、受給者達はカロリーばかり高くて栄養価のないジャンクフードやインスタント食品をフードスタンプを使って買えるだけ買う。その結果、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増えていく。

3 一度の病気で貧困層に転落する人々
 政府が大企業を擁護する規制緩和及び福祉削減政策に切り替えてから、普通に働く中間層の人々が次々に破産するようになった。その原因の半数以上があまりに高額の医療費負担だった。例えば、急性虫垂炎の手術入院一日だけで一万二千ドルと会社の保険ではカバーしきれない。専門医の初診料は200~500ドル、入院すると部屋代だけで一日約2000~5000ドルかかる。病気になり医療費が払いきれずに自己破産した人の殆どが中流階級の医療保険加入者という。その地域の保険市場の50%以上を一社が独占している都市は全米都市の半数以上で、競争相手がいない保険会社は保険料をいくらでも値上げできる。

4 出口をふさがれる若者たち
 「落ちこぼれゼロ法」という教育改革法の名の下に、学校の助成金と引き替えに高校生徒の個人情報を軍のリクルーターに提出させる。軍はこれを貧しく将来の見通しが暗い生徒たちのリストに作り直す。そして七週間の営業研修を受けた軍のリクルーターたちが、生徒たちの携帯に電話を掛けて直接入隊の勧誘をする。若者の入隊希望理由は、大学の学費免除や兵士用の医療保険加入、合法および不法移民に与えられる市民権の取得などである。コミュニティ・カレッジ(二年制の大学)の学生もターゲットになる。卒業までの費用を軍が負担し、卒業と同時に入隊するという契約形態だ。全米の学生の33%が学資ローンの受給者であると同時にクレジットカード返済滞納者である。軍に入隊すれば国防総省が学資ローン返済額の大部分を肩代わりするという。

これらは言うならば経済的徴兵制である。日本の自衛隊でもリクルーター部隊がニートなどを勧誘しているが、憲法改正で自衛隊が国防軍になったら、アメリカを参考に貧困層を増やして日本版の経済的徴兵制の社会がつくられるだろう。いわゆる「徴兵制」は必要ないのである。

5 世界のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
 米軍は民間の戦争請負会社に、後方支援として現地の様々な業務を依頼している。基地への食料や武器の輸送、倉庫内の作業員、電気技師やトラック運転手、VIPの護衛など多岐にわたる。人材募集のターゲットは、世界中の貧困層である。戦闘自体を請け負う、いわば「傭兵」の派遣会社もある。
9.11以降、「テロとの戦い」の名の下にアメリカ政府はあらゆる場所から国民の個人情報を入手している。NSAは大手電話会社から提供された顧客情報を利用し、電話記録を極秘裏に集めている。国防総省は、国内の一般市民による活動を監視し「脅威」と記した極秘文書を作成している。日本でも2007年6月、自衛隊の「情報保全隊」による大規模な国民監視活動を詳細に記録した内部文書が公表され、憲法13条及び21条違反であるという批判の声が高まった。

安倍が設立を目論む日本版NSAができたら、その下部組織の実行部隊により一層大規模で詳細な国民監視活動が行われ、その情報データは特定秘密保護法の下で特定秘密に指定され、政府の憲法違反行為は永久に隠蔽されることになるだろう。そんな暗黒の監視社会を阻止するために、国民一人一人が声をあげなければならない。

















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