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 ロナルド・L・マレット著「タイム・トラベラー」は、人類初の実用的なタイムマシンの原理を構築する過程を記述したものです。ただし、タイムマシン原理の説明が出てくるのは終わりの方のたかだか30頁(全体の10分の1)くらいで、大半はタイムマシン研究の動機や理論構築のための勉強の過程を述べたもので、少しもの足らない感じがします。

 これまで研究されてきたタイムマシン原理は、平行する宇宙ひも、回転する超大円筒、ブラックホールなど、あくまで理論的で殆ど実現不可能なものだったのに対し、マレット博士の理論は、リングレーザーと中性子線を使うという現行技術で十分に実現できる点がすごいのです。理論はアインシュタインの一般相対性理論における重力場方程式から導出される厳密解にもとづいており、各種の学術誌や学会発表を通じて誤りがないことが立証されているということです。また、理論の実験的検証も進められているということです。

 理論の要点は、物質がその重力効果によって光の進路に影響を及ぼすように、光(エネルギー)もまた重力効果によって物質に影響を及ぼすということです。光ファイバー、フォトニクス結晶または積層型単向性リングレーザーを用いて単向性の光の円筒装置を構成し、循環する光のループによる重力場に、閉じた時間のループを発生させます。回転する質量は、周囲の空間をかきまぜ「慣性系の引きずり」を生じると考えられるが、循環する光のループも同様の作用を及ぼし、慣性系の引きずりによってエネルギーがより強くなったときに、閉じた時間のループが発生するということです。そして、この閉じた時間のループの任意の未来時点から、ループ発生時点までの過去方向のタイムトラベルが可能になる訳です。

残念ながらこの理論では、タイムマシン稼働開始時点以前の過去には戻れません。これが現時点で未来からのタイムトラベラーが見つからない理由なのかも知れません。それと閉じた時間のループの発生に必要なエネルギー量とタイムトラベル間隔や搬送可能質量の関係、つまり、どの程度のエネルギーでどんな大きさの物質をどのくらいの過去に送れるのかという定量的な説明がされていないのが物足りないと思います。さらに研究開発を進めて10年後くらいには実用タイムマシンを出現させて欲しいものです。

マレット博士は、理論の未来通信への応用例として、単向性の循環する光線が信号送受信機に接続された通信装置を考案し、特許申請しています。例えば、惑星間旅行がいずれ成功した場合、着陸船から地球上の光円筒タイムマシンへ信号を送信することができる。受信信号は光円筒タイムマシンで現在に伝えられる。信号が受信されることで、未来のミッションが成功したことがわかる。受信記録に基づいてミッションのパラメータを変える必要があるかどうか決めることができ、宇宙開発のコストと人力の甚大な節約に繋がるだろうということです。しかし、未来通信によって現在の行動を変えることは過去の改変になりやっかいな問題が発生するかもしれません。電磁波を過去に送れるなら物質も送れるはずで、本当にタイムトラベルが実現できそうです。

それにしても、その後の進展が聞こえてこないのが気になります。私の探索能力が不足しているだけなのか、何か技術的なボトルネックがあってクリアできないのか、それとも、資金調達に困って軍部を頼り、軍事機密になってしまったのか、心配です。

[マレット博士の学術論文]
1.Weak Gravitational Field of the Electromagnetic Radiation and a Ring Laser : フィジックス・レターズA(2000-5)
2.The Gravitational Field of a Circulating Light Beam : Foundation of Physics(2003-9)

















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