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 堤未果著「デジタル・ファシズム」を読んだ。本書は東日本大震災時、アメリカのシンクタンクによる日本復興シナリオで提案された個人情報のデジタル化と共有を行う「企業主導でのデジタルネットワーク構築」を起点とする「日本デジタル化計画」の裏側に潜む危険性を究明したものである。

グローバル企業アクセンチュアは「地方創生」の名の下に、被災地の福島県会津若松市をデジタル技術の実証実験地とし、そのスマートシティモデルを日本全国に広げていく。そして電気やガス、水道などのエネルギー・インフラをはじめ、交通や医療、教育に農業など、企業主導で丸ごとデジタル化される街「スーパーシティ」へとつながっていく。

日本初のデジタル庁の特徴は、①権限がとてつもなく大きい(内閣直轄で内閣府より上位)、②巨額の予算が付く(年間8000億円+1兆円)、③民間企業とデジタル庁の間の「回転ドア」(職員600人のうち200人は民間企業から出向)である。デジタル庁はまさに今世紀最大級の巨大権力と利権の館である。
デジタル化に向かう日本を包囲するアメリカ、中国、GAFAにBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)。

スーパーシティの落とし穴は、①参入企業・サービスの迅速決定を自治体の首長と企業で行うことで住民主権が喪失、②トラブルによる住民被害の責任者不明、③個人情報保護規制の弱化の三つである。

2018年、総務省はデジタル化に伴い、地方自治体を解体する「自治体戦略2040構想」を発表した。少子化の影響で存続不可能になる自治体を、デジタル技術と民営化で 業務を効率化するという。公共サービスは民間企業に外注し、自治体はその民間サービス(アプリ)を、少数の公務員がマネージャーとして運営する管理場(OS)として、新しく生まれ変わらせるのだ。自治体解体論は過去数十年の新自由主義政策の総仕上げだ。

自治体の公共サービスをデジタルで効率化する際、もう一つ注目されている新システムが、国民の個人データ管理に使われる「信用スコア制度」である。為政者は不安定化する要素が減って社会はより安定化するという。中国の国民は、政府のデジタル信用スコア制度がもたらす利便性と引き換えに、すっかりおとなしくなったといわれる。行政がデジタル化されると、自らの意思とは関係なく、仮想空間の中で真っ先に国に個人情報を管理され、プライバシーを奪われる。

PayPayのようなノンバンクの決済業者が、すでに確立され安定性に定評のある全国の銀行ネットワークに参入する道筋をつけたのは、PayPayの提携会社SBIホールディングスの北尾社長と竹中平蔵社外取締役だった。竹中が社外取締役を務めるオリックスもまた、自社が手掛けるPayPayを日本に導入する際の仲介ビジネスによって潤うだろう。

政府が次々にマイナンバーと国民の個人情報を紐づけていく日本で、もしも情報が流出した場合、漏洩は口座番号だけでは済まなくなる。日本国内の小売店がキャッシュレス化を進めれば進めるほど、クレジットカード決済手数料の3%が、アメリカのカード会社(VISAやマスター)へ流れていく。
ハッキングが合法の韓国や、国家情報法がある中国企業と近い○○ペイには、私達の個人情報が流れるリスクが常につきまとう。

停滞している政府のキャッシュレス計画を進めるウルトラCの秘策として、2020年7月17日、政府は「成長戦略フォローアップ」を閣議決定した。これは労働者に支払う給与を、企業が○○ペイなどの資金移動業者の口座に入金することを許可する規制緩和だ。つまりデジタル給与である。外資と国内大企業、株主たちにとってメリットが大きいが国民にとってかなりリスクがある。資金移動業者は登録制で「預金者保護法」のような共通ルールはない。したがって不正利用などに対する保障は、個々の企業次第になる。

デジタル給与はトップバッター。次に控えているのは「○○ペイ生活保護」や「○○ペイ年金」あたりだろう。ATMで並ばずに済む程度の利便性と引き換えに、私達国民の大切な資産や個人情報、この国を支える中小企業や飲食店、地域を支える地方銀行などを差し出すほどの価値は、はたしてあるのだろうか。

国全体のデジタル化を急速に進める中国では、「信用スコア」の点数によって、受けられる公共サービスに差がつけられる。政府が好ましくないと判断した人物は、デジタル化した中国社会でまともに暮らせなくなると党幹部が公言するほどに、信用スコアは完全管理社会のツールとして効果が高い。

日本でもPayPay銀行が個人の信用スコアを企業に販売し始めており、2021年5月に成立したデジタル改革関連法では、個人情報保護法が緩められ、これからは思想信条や犯罪歴、病歴などのセンシティブな個人情報も次々にデジタル化されていく。デジタルマネーが主流になる社会では、誰が蛇口を開け閉めするのかが死活問題になる。

国内決済の99.9%がキャッシュレス、2015年時点でGDPに占める現金の割合が2%を割り込んでいるスウェーデンでは、人口約1000万人のうち、約4000人(2018年末時点)が手の甲に埋め込んだマイクロチップで決済している。日本でも今後、マイナンバーやスーパーシティなどで大いに普及するだろう。世界経済フォーラムのシュワブ会長は、2016年1月10日スイスの公共放送RTSに出演し、今後10年以内に、全人類を対象にした「埋め込み型マイクロチップ」が世に出るだろうと語っている。

終戦直後の1946年、政府は莫大な借金を帳消しにし、インフレを抑えながら国を復興させるためとの名目で、「預金封鎖」を行った。だが、この政策の真の目的は財産税徴収だった。預金封鎖は決して珍しいことではなく、2001年にはアルゼンチン、2002年にはウルグアイ、2013年にはキプロスで実施されている。

マイナンバーと銀行口座を連動させれば、個人資産把握が可能になる。紐づけされる情報はこの他にも、医療情報や運転免許証、子供の成績など、次々にその範囲が拡大中だ。政府のロードマップ案によると、すべての個人情報が紐づけられたマイナンバーの導入は、新札が登場する2023年に完了するように設定されている。

日本政府が力を入れる「GIGAスクール構想」が急ピッチで進んでいる。生徒一人一台のタブレット支給とクラウドの活用、高速大容量インターネット通信環境を全国の国公私立の小中学校に整備することを掲げ、2019年12月に発表された。この新しい教育ビジネスに対し、プログラミング教育には楽天の三木谷浩史、デジタル教科書にはソフトバンクの孫正義、正規教員の補充や外国人教師の派遣にはパソナの竹中平蔵ら政府のお友達メンバーが万全の協力体制を取っている。

世界経済フォーラムが目指す世界の軸である「ステークホルダー資本主義」は、GAFAと私達一般ユーザーの間に横たわる「情報の非対称性」を強力に固定化し、古今東西の為政者が一度は夢見るユートピア〈デジタル・ファシズム〉を完成させるだろう。

真の危機はコンピューターが人間のような頭脳を持ってしまうことよりも、人間がコンピューターのように考え始めた時にやってくる。デジタル・ファシズムを阻止する唯一の方法は、私達がより人間らしくなることなのだ。


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