ティモシー・スナイダー著
「自由なき世界」 
を読んだ。本書は米国のトランプがロシアによって創られた大統領であり、トランプ政権はロシアの傀儡政権であると述べている。ソ連崩壊による冷戦終結後、ロシアは自国の社会経済発展を断念し、西欧諸国の社会経済を自国程度の低レベルに留めておくための政策を推進した。ウクライナ侵略や欧米に対するサイバー戦争によって、世界中にナショナリストやオリガルヒ、急進派の協力者を見出し、西側の制度や国家、価値観を解体しようとする策謀は、西側自体の中にも共鳴者を見出していく。
ポピュリズムの隆盛やイギリスのEU離脱、トランプ大統領創生は、いずれもロシアが目標とし達成したもの。それを可能としたのは、1%の富裕層が90%の富を占有するという西側の格差社会が、プーチン政権下でたった一つのオリガルヒ一族が国を収奪的に支配するロシアの寡頭政治社会に似ているからである。
プーチンは、イヴァン・イリアンの思想を具体的な政治の形にした永遠の政治を信奉している。ロシア民族は無垢であり、西側諸国が頻繁に攻撃を仕掛けてきて、本来の無垢の状態から引きはがそうとしているというもの。また、キリスト教を自らの創造した至高の世界への入り口としている。「事実の存在」を否定するところから永遠が始まる。
本書を読めば、プーチン政権下で北方領土の交渉を行うことがいかに無意味・無駄で危険でさえあることが深く理解できる。