デイビッド・ウォレス・ウェルズ著
「地球に住めなくなる日」
は、気候変動(地球温暖化)によっていま世界に何が起きているのか、それによって我々の生活は、そして現代文明はどう変わるのかを、膨大な調査をもとに解説している。いわば「気候変動によるリアルな未来図を提示した警告の書」と言える。
2015年、COP21で採択されたパリ協定は、平均気温の上昇を、産業革命前を基準に2℃より十分低く抑え、さらに1.5℃目標を追求するとした。1.5℃の上昇は、現状の排出ベースであれば2040年前後、早ければ2030年には到達する。
地球の地質時代を探る最近の研究によれば、パリ協定の排出目標をすべて達成しても、2100年に気温上昇幅は4℃になる。そして地球全体が生命の住めない星になりかねない。それを「ホットハウス・アース」と呼ぶ。
気候変動による様々な影響として、1 殺人熱波の頻発、2 世界を襲う飢餓、3 世界の水没、4 史上最悪の山火事、5 日常的自然災害、6 脅威的水不足、7 死にゆく海、8 大気汚染による生命の危機、9 グローバル化する感染症、10 世界を揺るがす経済崩壊、11 気候戦争の勃発、12 大規模な気候難民 などが想定される。
地球上では、過去に大量絶滅が5度起きていて、そのたびに動物の顔ぶれが完全に入れ替わり、進化がリセットされた。恐竜の絶滅は例外だが、それ以外のすべての絶滅には、温室効果ガスが引き起こした気候変動が関わっていた。私たちは今、大量絶滅のときの少なくとも10倍、産業革命以前の100倍の二酸化炭素を出している。
化石燃料を燃やして大気中に放出された二酸化炭素は、この30年に発生したものが半分以上を占める。つまり地球の運命を揺るがし、人間の生命と文明の維持を危うくさせているのは過去のどの時代でもなく、いま生きている私たちの仕業ということだ。1992年、国連は気候変動枠組条約を採択して、温室効果ガスの影響を明白な科学的事実として世界に突き付けた。それなのに私たちは、良くないことがわかったうえで、何も知らなかったころと同じように環境破壊を続けている。
人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与える「人新世」は、地球上の6度目の大量絶滅が起きる地質時代となるのか?人類が絶滅した後、地球を継ぐものは何か?