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 ナオミ・クライン著「これがすべてを変える」(下)を読んだ。上巻では気候変動対策が遅れる原因の詳細な検証について記述されていたが、下巻では解決に向けての希望の兆しとして、化石燃料を基盤にした経済・社会の在り方そのものにノーを突き付ける草の根抵抗運動が世界各地で展開し、拡大しつつあることを報告している。

従来の化石燃料採掘よりも温室効果ガスを多く排出し、有毒物質による環境汚染の危険が大きいオイルサンド採掘やフラッキングによるシェールガス・オイルの抽出に対するカナダ先住民を中心とする抵抗運動、北米各地でのパイプライン建設やオイルサンド掘削リグ用の巨大装置の輸送、採掘石炭輸出のターミナル建設などの地域住民による実力阻止闘争、SNSなどによるこれらの運動のネットワーク形成、化石燃料企業から投資を撤退するダイベストメント運動などが急速に広がっている。

著者は本書で、気候変動という人類にとっての危機が、大きな歴史的チャンスであると訴えている。破滅的な気候変動を回避するためには、政府の介入によって規制を強化し、化石燃料に基づく中央集権的な経済から、地方分散型の再生可能エネルギーに基づく経済へ移行する以外に方法はない。そしてそれは同時に、人々の生活の質を向上させ、国内の経済格差、南北の格差の是正をもたらし、より公正な経済と民主主義の活性化を実現するという、一石二鳥にも三鳥にもなる結果を生む。

だが、そうした根本的な変化を起こすために何より必要なのは一人一人の意識の変革、生き方の革命である。地球が私たちの子孫、そのまた子孫の代まで快適に住み続けられる環境であるために今、何をなすべきか。本書の突き付ける問いは重く、また誰一人その問いを逃れることはできない。


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