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 スティーブン・レビツキー著「民主主義の死に方」を読んだ。本書は、アメリカにおける民主主義が二極化する政治によってどのようにして死んでいくか、そして独裁への道を招くかを、建国から現在までの歴史を見据えて探求し、その対処法を提言したものである。
現代の民主主義の崩壊は、かつてのような革命やクーデターによるのではなく、選挙で選ばれた政治家が率いる政権そのものによって合法的に引き起こされる。

アメリカの抑制と均衡のシステムはこれまで、二つの基本的規範すなわち「相互的寛容」―競合政党が互いを正当なライバルとして受容するという理解と「自制心」―組織的特権行使時、政治家は節度をわきまえるべきという考えによって当たり前のように保たれてきた。
寛容と自制の規範はアメリカ民主主義の”柔らかいガードレール”として機能してきたが、その衰退は1980年代と90年代に始まり、2000年代に入って加速した。
民主主義的な規範の弱まりは政党の極端な二極化に根差したものであり、単なる政策の差を超えて人種と文化の大きな対立にまで影響を及ぼしている。

独裁者を見極めるための四つの危険な行動パターンは、①ゲームの民主主義的ルールを言葉や行動で拒否しようとする。②対立相手の正当性を否定する。③暴力を許容・促進する。④対立相手(メディアを含む)の市民的自由を率先して奪おうとする。

①の具体例―憲法拒否、憲法違反容認、憲法侵害・停止、基本的管理の制限
②の具体例―ライバルを危険分子や犯罪者とみなす
③の具体例―暴力的な反社会的勢力とつながる、支持者の暴力を容認
④の具体例―市民的自由を制限する法律や政策を推進・支持、対立相手に法的・罰則措置

選挙で選ばれた独裁者が少しずつ制度を壊していく過程としては、不正を調査・処罰する権限を持つさまざまな機関を抱き込み、対立相手(野党政治家、起業家、大手メディア、宗教家、文化人など)を買収または逮捕・訴訟・罰金で排除し、ルールを変え(選挙区の変更、投票の制限)、危機(経済危機、自然災害、安全保障上の脅威)による反民主主義的な政策を正当化する。

本書はあくまで二大政党下の大統領制をとるアメリカの民主主義についての調査研究であり、一強多弱政党下の議院内閣制をとる日本にそのまま当てはめることはできないが、独裁者を見極めるための四つの危険な行動パターンの具体例と、選挙で選ばれた独裁者が少しずつ制度を壊していく過程は、安倍政権で該当する箇所も多く大いに参考になる。


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