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 青木理著「情報隠蔽国家」を読んだ。本書は、「サンデー毎日」誌上で発表したルポルタージュやコラムを加筆修正して収録したものである。特定秘密保護法や盗聴法、共謀罪法などによって政府や治安当局の権限ばかりが大幅に強化され、私たちの情報を吸い上げる準備が整い、すでに実行されている。一方で森友学園や加計学園、防衛省・自衛隊をめぐる事例などで明らかなとおり、本来は公開されるべき公的情報は徹底して隠され、私たちは情報獲得の手段すら与えられていない。私たちはまさに暗闇の中に立たされ、無知に追いやられ、都合よく支配されようとしている。

2015年9月、安全保障関連法制の国会質疑で、統合幕僚長の河野が2014年12月中旬に訪米し、米軍幹部らと会談した際の内容を記録した文書が暴露され問題になった。会談記録には安保法制進捗状況についての米陸軍参謀総長の質問に対して、河野統幕長が「与党の勝利により、2015年夏までには終了するものと考えている」と回答したとある。問題点は統幕長の訪米時点では、法案の具体的内容の検討も与党協議すら行われていないことである。さらに、2015年4月に安倍首相が訪米し、上下両院の合同会議の演説で「安保関連法制はこの夏までに成就させる」と法案すら固まっていない段階で対米公約した。

政府と防衛省は、上記の文書について公式には「存在しない」とする一方、国家機密というべき当該文書の「漏洩元」を探る警務隊の操作がひそやかに進められ、11月に1人の幹部自衛官へと捜査の的が絞られ、家宅捜査などをはじめとする強制捜査が繰り広げられた。警務隊が当該自衛官を自衛隊法違反(機密漏洩)容疑で送検したが、東京地検は不起訴処分(証拠不十分)を決定した。

当該文書の会談記録を見ると、河野統幕長が自ら嬉々として米国にすり寄り、超高額兵器を大量購入することを盛んにアピールし、新たな基地まで提供し、米側の意向に沿って集団的自衛権の行使に道を開き、「同盟」の「深化」と称して米軍への従属体制を強化していく構図が垣間見える。

河野統幕長は、自衛隊を治外法権の在日米軍と一体化することで、自衛隊も米軍と同等の権限(治外法権)を要求しようとしている危険人物ではないか?すでに首相や防衛相を飛び越えて、米軍制服組との協議に基づき日米同盟の深化を具体的に推進し、将来は文民統制を外そうとしているのではないか?戦前の東条英機のように。

本書にはこのほか公安警察の謀略活動や、盗聴法強化、マイナンバー制、特定秘密保護法、武器輸出解禁、安保法制、共謀罪、米軍基地問題など国家権力強化に邁進する隠蔽国家・日本の闇を暴くルポやコラムが収録されている。


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