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 塚田穂高編著「日本の右傾化」を読んだ。本書は、「社会」「政治と市民」「国家と教育」「家族と女性」「言論と報道」「宗教」の6分野において、各専門家が日本の右傾化の実態を明らかにしたものである。

「社会」では、新自由主義、レイシズム、ヘイトスピーチ、日本会議について、「政治と市民」では、排外主義、自民党の右傾化、有権者の右傾化について、「国家と教育」では、日本のネオナショナリズム、教育基本法改定、国に都合のいい人をつくる教育政策について、「家族と女性」では、上からの押し付け、連動する草の根について、「言論と報道」では、自己賛美と憎悪の連鎖について、「宗教」では、神道政治連盟、創価学会・公明党、統一教会=勝共連合、幸福の科学=幸福実現党について論じられている。

日本全体が一律に右傾化しているわけではないが、安倍政権のように政策的に上からの右傾化を強烈に推進している部分集合があり、これと呼応して日本会議や宗教組織のように、草の根的に右傾化を拡散させている部分集合がある。これらの言わば右傾化がん細胞が、まだ健全な中道細胞群を侵食しつつあるということである。ステージⅡ~Ⅲといった段階か?

 梅林宏道著「在日米軍」を読んだ。本書は、在日米軍の組織の現状と作戦実体、日米防衛協力、市民生活への影響、今後の変化、非軍事的な安全保障体制への転換について論じたものである。

在日米軍の法的基盤は日米安保条約で、日本の防衛が第一義的な任務であるが、実態は時代とともに大きく変容してきた。2017年2月10日、安倍とトランプが発した日米共同声明によれば、在日米軍はもはや日本を防衛対象とした米軍ではなく、アジア太平洋全域を対象とする米軍になっている。ここでいうアジアは太平洋側から接近されるすべてのアジア、つまりアラビア海やペルシャ湾地域に至る全地域を意味している。

また、安保条約の解釈拡大により、今日の日米安保体制下における日本の軍事的な役割と責任もグローバルに拡大している。日米の軍事協力が行われる内容や地理的範囲は、ガイドラインの改定とともに拡大され続け、2015年の改定では、安倍の戦後日本の平和体制を否定する政策と軌を一にして一気に拡大した。その結果、自衛隊と米軍の協力は地理的に無制限となり、内容的には集団的自衛権行使による日米軍事協力の新しい訓練が行われるようになった。

日本政府は、米軍の活動を保護するためにいくつもの特例を作ってきた。多くの特例は、安保条約や地位協定の問題点を反映して、日本の市民権をさまざまな形で制約している。のみならず、安保条約上の義務の範囲を超えて、ひたすら米軍活動を支援する内容のものも多い。憲法に基づく理念を主体的に提示できない日本外交の姿が現れている。また、米兵の凶悪犯罪や米軍基地の環境汚染、米軍機による騒音・墜落事故被害など、基地がもたらす被害によって市民生活が脅かされている。

軍事的危機のシナリオの虜になるのではなく、現実的外交による非軍事的安全保障の例として、「モンゴル国の国際的安全保障と非核地位」と題する国連総会決議を勝ち取ったモンゴル国の努力がある。これまで成立している五つの非核兵器地帯条約は、各地域の安全保障上の大きな利益となってきた。

日本と朝鮮半島を含む北東アジアにおいてもまた、非核兵器地帯は極めて現実的な非軍事的安全保障の出発点となりうる。2015年に「北東アジア非核化への包括的枠組み協定」という現実的な提案がまとめられた。条約の構成国は韓国、北朝鮮日本の「地帯内国家」と米国、中国、ロシアの「周辺核兵器国」の六か国の形が、現状ではもっとも実現可能性が高いと考えられる。
このほかのアプローチの一つとして、日本の専守防衛政策を、国内において行動規範にまで高め、その規範を国際化することも可能である。これによって在日米軍の大幅削減が可能になる。

国民の多くが、自民党政権への消極的支持を続けている限り、日本の非軍事的安全保障を構築することはできないだろう。国民の多くがそれへの意思と行動を示し、政治的圧力とならなければ、日米軍事同盟によるさらなる悪化を阻止することはできない。


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