小林雅一著「ゲノム編集とは何か」を読んだ。本書は、遺伝子工学の最先端技術であるゲノム編集の現状と将来展望について解説したものである。従来の遺伝子組み換え技術は、実現精度が100万分の1と極めて低く、偶然や運に頼ったランダムな技術だったため、遺伝子組み換えには膨大なコストと期間を要した。ゲノム編集は、遺伝子やDNAを構成する塩基を、ピンポイントで削除したり、書き換えたりできる。

中でも「クリスパー」と呼ばれる最新鋭のゲノム編集技術は、高校生でも使えるほど扱いやすく、従来の遺伝子組み換えに要していた期間やコストが劇的に圧縮された。クリスパーはまた、極めて汎用性に富む技術で、あらゆる動物や植物のDNAを操作できる。原因となる遺伝子変異が明確に特定されている遺伝病の治療に適用できる。また、各種のがんや糖尿病、アルツハイマー病など、いくつもの遺伝子変異が環境要因と相互作用しつつ複雑に絡み合って発症する病気に対しては、最先端の人工知能による医療ビッグデータの解析により、原因遺伝子や発症メカニズムを解明し、クリスパーによって遺伝子レベルで手術できるようになる。

医療だけでなく、この技術を「人類の改良」に使おうとする計画もある。体細胞に対する適用は、病気やケガになりにくい体質への強化や老化防止、若返りなどが考えられている。受精卵など生殖細胞への適用は、高い知性と強靭な肉体、美貌を兼ね備えた「デザイナー・ベイビー」を作り出すことになり、優生学的な思想の復活につながる。
さらに、遺伝子工学の力を使って人間が有害生物を意図的に駆逐してしまう「遺伝子ドライブ」も可能になり、地球の生態系を破壊する恐れがある。

ゲノム編集のさらに先を見越した研究も始まっている。ヒトのDNAを完全に化学合成するプロジェクト「ヒト・ゲノム設計計画」である。人工ゲノムは、例えば「あらゆるウイルスへの耐性を備えた臓器開発など、医療技術の進歩に資することができる」というが、人工ゲノムから完全な人造人間を誕生させることもありうる。

先進諸国に共通の生産年齢人口の減少対策として、AIや知的ロボットの活用と、人類自体を遺伝子レベルで強化する方法が考えられている。しかし、倫理面でのガイドラインが存在しないという問題が残されている。

世界は益々SFに近づいていく。宇宙へ出ていくのは人工ゲノムを持つ人造人間なのか?

 青木理著「日本の公安警察」を読んだ。自公政権は、盗聴法、改正住基法、ガイドライン関連法、国歌・国旗法、団体規制法、破防法改正、日本版NSC、秘密法、戦争法、マイナンバー制、さらには共謀罪法案、自民党憲法改正草案と、国民の監視と管理のシステム強化を図るための一連の治安法の整備を進めてきた。それを実行する治安機関は、戦前・戦中の特高を継承する公安警察であり、法整備に伴いその組織強化が急速に進められているはずである。

本書は、公安警察の組織機構、資金と人員、刑事警察との違い、情報収集術、公安秘密部隊、公安事件例などについて記述している。また、治安機関を覆い隠すベールは厚く、密行性と閉鎖性の壁の向こう側で活動は肥大し、制御を失いかねないと述べている。
残念ながら本書は16年前の発行でいささか古く、安倍自民党政権による治安法整備の強行に伴い、間違いなく急速に組織強化されているはずの公安警察を筆頭とする治安機関についてのデータがない。最新のデータに基づくレポート出現を強く望む。


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