矢部宏冶著
「日本はなぜ戦争ができる国になったのか」
を読んだ。前著「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」は、「基地権」を主体に日本がいまだに「占領状態」にあることを示したのに対し、本書は基地権と双璧を成す「統一指揮権」の法的根拠となる対米条約、交換文書、密約を通じて、日本がアメリカの戦争に米軍の指揮のもと、その一部として従軍せざるを得ない属国状態にあることを明らかにし、その打開策を提案している。
1950年6月25日朝鮮戦争勃発に伴い、それに対する協力過程(軍隊の創設と参戦という二つの憲法破壊)で生まれた米軍への完全な従属関係が、その後の2度の安保条約によって法的に固定され、現在まで受け継がれることになった。
指揮権密約の法的構造の骨格は、ダレスの「6・30メモ」(1950.6.30)⇒アメリカ軍部の「むき出しの軍事同盟」(マグルーダー原案)⇒オモテ側の条約や協定+密約、である。ダレスの「6・30メモ」は、日本が「国連のようなアメリカ」と「国連憲章・特別協定のような旧安保条約」をむすんで、「国連軍のような米軍」を支援するというもの。さらに、「吉田・アチソン交換公文」という巨大な不平等条約によって、日本は占領下で米軍(朝鮮国連軍)に対して行っていた戦争支援を、独立後も続ける法的義務を負わされてしまった。この公文とセットになって、日本に駐留する国連軍(実態は米軍)の法的権利(特権)を定めているのは、「国連軍地位協定」である。
真の独立を果たすために、二つの「独立モデル」を提案している。
1.憲法改正によって米軍を完全撤退させた「フィリピン・モデル」
2.東西統一とEUの拡大によって国家主権を回復した「ドイツ・モデル」
フィリピン・モデルは、「米軍撤退条項」と「加憲型」改憲である。「加憲型」改憲とは、現行憲法に「ダレスの43条のトリック」を逆回転させ、サンフランシスコ・システムの呪縛を解くための条文を追加するものである。
ドイツ・モデルは、朝鮮半島の統一(または連邦化)を促進する過程で、明らかな不平等条約(安保条約、地位協定、吉田・アチソン交換公文の交換公文、国連軍地位協定、無数の軍事上の密約など)の解消を粘り強く交渉していくというものである。
いずれのモデルにしても、アメリカとの不平等条約や違法な軍事上の密約についての知識が広まり、大多数の国民が真の独立を求める機運にならなければ、実現は困難であろう。フィリピン・モデルは、改憲手続きを考えれば、復古国家主義的「自民党改憲草案」を恥ずかしげもなく推進しようとする自民党独裁政権が存続する限り、実現しないどころか悪用される危険性がある。ドイツ・モデルも日本が朝鮮半島の統一に寄与する手段がないし、アメリカ隷従政策を根幹とする自民党政権が続く限り、自己保存本能から見てもアメリカの不興を買うような、不平等条約の解消を一歩でも申し出ることはありえない。
要は、真の独立を求めるならば、国民が選挙や反政府運動を通じて自民党政権を打倒し、独立政策を推進する政権を擁立するしかないということ。