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 ネッサ・キャリー著「エピジェネティクス革命」を読んだ。私たちを構成する基本素材であるタンパク質をコードしているDNAは、ゲノム全体の2%でしかない。残りの98%は遺伝子発現の制御に関係しており、その制御機構を解明するのが、エピジェネティクスの分子生物学である。

細胞分裂において、DNAだけでなくDNAへの分子修飾も母細胞から娘細胞へ伝えられるが、分子修飾はDNA塩基配列を変えることはない。この分子修飾(エピジェネティック修飾)は、遺伝子コード自体を変化させず、遺伝子発現の程度を変化させる。エピジェネティック修飾としては、DNAメチル化やヒストンのアセチル化がある。DNAメチル化は、DNA塩基のシトシンにメチル基が付加され、5-メチルシトシンが形成されることである。ヒストンのアセチル化は、DNAが巻き付いているヒストンと呼ばれる球状のタンパク質上のリシンに、アセチル基が付加され、アセチル化リシンが形成されることである。

タンパク質をコードしていないゲノム領域での膨大な転写により、多数の非コードRNA(ncRNA)が生み出されており、それがさらに編集されることにより、遺伝子発現を調節している。ヒトは、他のどんな種よりも広範にncRNA分子を編集しており、他の霊長類を見てもヒトと同じ程度に編集している例はない。ヒトでは特に脳の中で大規模な編集を行っている。これがヒトの知的洗練を説明する有力候補とされている。

エピジェネティクスは、DNAによる遺伝型が同じでも発現型が異なる現象を説明する生物学のパラダイムシフトである。


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