橘木俊詔著
「21世紀日本の格差」
を読んだ。日本の貧困率は、アメリカの17.4%に次いで主要先進国の中では16.0%という第2位の高さで、「貧困大国」と言える。格差拡大についてのアンケート調査では、70~80%の人が「格差拡大」を感じていると回答。その分野は業種や会社における賃金格差と認識している。しかし、高額所得者は70%が格差の拡大がないと判断している。
政権を担う閣僚や与党議員が日ごろ接触する人間は、ほとんどがこの高額所得者に対応するいわゆる金持ちだから、一般庶民の生活が見えないかあるいは無視しがちであり、格差是正や貧困解消のための富の分配政策は、選挙前の人気取りスローガン以外、本気で取り組もうとはしない。
アベノミクスが依拠するトリクルダウン理論は、現実の経済で期待通り発生して観察されていない。原因は経済の景気循環のため、大企業や中央経済から中小企業や地方経済へ潤いが波及する前に低成長経済へ突入するため。また、「一人勝ちの論理」が作用し、独占的な地位を占めている中央大企業が営利を独占しようとするので、潤いが他の企業や地方に波及しない。
成長(経済効率性)と分配(公平性)の関係は、先進諸国では不平等が経済成長率を低めていることが検証された。格差を是正するには、低所得者の所得を上げるか高所得者の所得を下げるかであるが、前者の方が経済成長率を高める効果がより強いことが分かった。
アベノミクスは、カンフル注射的な金融政策が主体で、分配による格差是正は考慮していないから、すでに息切れして実体経済と乖離した蜃気楼となっている。参院選用のスローガンとして「アベノミクスをふかす」と言っているが、蜃気楼にふかすようなエンジンはあったのかと言いたい。本音は改憲勢力で3分の2以上の議席を確保して、憲法改正の発議をしたいということだろう。選挙が近づくとそれまで大声でわめいていた本音を隠し、終わると牙をむいて襲い掛かるという卑劣なやり方を繰り返す安倍自民党を支持できますか?