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 渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

4 新自由主義改革の新段階----改革路線と司令塔の競合(2)
 新自由主義改革の司令塔として競合する三つの組織(経済財政諮問会議、産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議)がいずれも内閣総理大臣を議長としていることに注目し、安倍新自由主義改革の特徴をさらに明らかにする。
経済財政諮問会議の第一の役割は、「骨太の方針」というかたちで安倍政権の目指すグローバル競争大国の総路線(全体像)を提示していることである。第二の役割は、後期新自由主義改革の二つの柱(財政支出削減とグローバル企業の積極的支援体制)の全体像は提示するものの、積極的支援体制づくりは産業競争力会議に任せ、もっぱら財政支出削減、社会保障や公共事業削減について方向性を打ち出すことである。特に重点が置かれるのは、財政支出のなかで最も大きな社会保障費の削減である。

産業競争力会議は、「アベノミクス第三の矢」となる成長戦略「日本再興戦略」を発表した。この核となる競争力強化方針は、全体として「外需依存・投資主導型」による競争力強化策となる三つの柱からなっている。
第一の柱は、「日本産業再興プラン」で、日本企業が民間投資を拡大し、競争力をつけて輸出と海外投資の二本立てで拡大し「貿易立国」と「産業投資立国」という双発エンジンで成長するための構想であった。具体的方策には二つの方式がある。一つは、国家が競争力を強化したい産業等を指定し、税制、補助金、規制などの全面支援を行う国家的支援方式であり、もう一つは、その産業部門に民間企業を参入しやすくするために様々な規制を取り払う、企業の自由拡大方式である。

第二の柱は、「戦略市場創造プラン」で、国家的支援、規制緩和により、いままで成長産業とは見込めなかった領域を新成長分野にすることである。その第一は健康寿命の延伸市場、第二はクリーンエネルギー市場、第三は次世代インフラ市場、第四は地域の農業等の市場である。第三の柱は、「国際展開戦略」で、日本の輸出と海外投資を拡大するための戦略である。TPPやインフラ輸出の強化が官民一体で取り組まれる。

しかし、欧米メディアから新自由主義改革がまだまだ不十分という批判を受けて、新自由主義改革のさらなる急進化、改革の大規模化が企てられた。一つは、グローバル企業支援の目玉として提案されながら、これまで決定できなかったいくつかの改革が打ち出されたことである。財務省の抵抗の強かった法人税引き下げや国家戦略特区の具体化である。二つ目は、新自由主義急進派が主張しながら運動側の抵抗によって実現できなかった労働市場改革や、医療・介護構造改革の具体化が推進されたことである。
こうして競争力会議は、国家が総力を挙げて企業の競争力強化のために文字通り至れり尽くせりの支援策を策定、具体化する機構として、安倍新自由主義改革の中心司令塔にのし上がったのである。

 渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

4 新自由主義改革の新段階----改革路線と司令塔の競合(1)
 安倍政権の新自由主義改革の第一の特徴は、新自由主義改革の司令塔の分立、競合である。それが起きた理由の第一は、新自由主義改革が第三期すなわち後期に突入したことである。後期には、既存政治経済の体制を攻撃・再編する司令塔としての経済財政諮問会議のみでなく、国家の力を使って積極的に大企業支援体制の構築に取り組む産業競争力会議などが、ともに必要となってくるのである。

司令塔分立の第二の理由は、新自由主義推進派の中に、いくつかの勢力、分派が現れ、時に激しく衝突するに至ったことだ。それらの勢力が、各々別の司令塔に蟠踞して自らの新自由主義政策を実行しようとしている。
新自由主義推進派の第一の勢力は、財務省官僚である。財政再建という目標達成のために、社会保障や公共事業への「過大な」支出の削減に意欲を燃やすとともに、企業負担の軽減を行うための財源という意味を持つ消費税引き上げも、税収増の見地から強力に推進する。

第二の勢力は、経産省官僚に代表される勢力である。経産省官僚は税・財政面から国家的支援に力を入れるため、一方で法人減税などで財務省と対立し、他方で国家的規制の排除を求める急進派とも対立する。
第三勢力は、急進派自由主義勢力で、特定省庁を背景にはしていない。多くは産業競争力会議、規制改革会議の民間議員グループに依拠する学者や財界人からなる。急進派は、企業競争力強化は規制緩和と減税による企業間競争喚起以外にないと主張し、特定企業や産業への国家的支援に強く反対する。特に、教育・労働・医療・農業など、従来国家の関与によりナショナル・ミニマムが守られてきた領域の規制緩和を主張する。

安倍政権における新段階の第二の特徴は、新自由主義改革の目標が、社会保障費などへの新たな削減、切込みと、大企業支援のための市場創出をはじめとする、より積極的なグローバル企業支援政策という二つの目標が並立しているということである。
これは、後期新自由主義になって新自由主義改革の目標が複数化したこと、さらに、目標が単なる既存制度への切込みだけでなく、そこで生じた矛盾の手当てや新自由主義体制存続を含めたグローバル競争国家の制度作りへと移動した結果である。
司令塔の分担関係では、新自由主義の第一目標については経済財政諮問会議が受け持ち、第二の積極的支援政策のほうは産業競争力会議が受け持つという分担になっている。また、改革目標の包括化にともない、安倍政権の新自由主義改革が、官邸主導でありながら財務、経産、厚労、文科、総務、法務、国土交通など各省の官僚機構が総動員されざるを得なくなっている。

 ミチオ・カク著「フューチャー・オブ・マインド―」を読みました。本書は、自然界の大きな二つの謎である宇宙と心のうち「心」にスポットを当て、多数の神経科学の専門家へのインタビューを通じて、最新の研究の成果と未来の展望を語ったものです。

第1部「心と意識」では、脳研究の歴史を概観し、MRIやPET、脳磁計などの新しい機器が、思考のメカニズムを明らかにすることを述べている。また、物理学者の視点から、動物を含めた意識の定義を提示し、意識をタイプごとに分けてランク付けを行っている。
第2部「心が物を支配する」では、記憶を記録し、心を読み、夢を録画し、念力を実現することを可能にした新しいテクノロジーであるBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)について述べている。コンピュータを介することにより、SFに出てくる超能力が実現される。

第3部「意識の変容」では、夢や薬物、精神疾患、ロボット、エイリアンにいたるまで、別の形態の意識を探っている。また、脳を制御・操縦することで、うつ病やパーキンソン病、アルツハイマー病、その他多くの病気を治せる可能性について明らかにしている。さらに、米国のBRAIN(革新的神経テクノロジーの推進による脳研究)プロジェクトと、欧州連合によるヒューマン・ブレイン・プロジェクトについて詳述している。これらは、新しい研究領域を切り開き、精神疾患の新治療法をもたらして、意識の深遠な秘密を明らかにすることが期待される。

 渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

3 軍事大国化と解釈改憲、明文改憲戦略(2)
 安倍は、己の目指す軍事大国をつくるために、アメリカや保守支配層が安倍に求めていることを超えて、「国益」実現のために「自由」に軍隊を使えるようにすること、その障害となる憲法とそれに基づく非戦体制全体をひっくり返すことをもくろんでいる。
2013年12月、日本版NSCといわれる「国家安全保障会議」と「国家安全保障局」を新設し、67人の人間を配置した。さらに、12月17日戦後初めての「国家安全保障戦略」を発表した。これらは、そのスローガン「積極的平和主義」とともに、海外での武力行使を解禁する集団的自衛権とセットであった。

軍事大国をめざす安倍は、解釈改憲を先行させながら、明文改憲をあきらめていない。その理由の一つは、日本がアメリカに追随して戦争に参加するとなれば、日本国憲法の全体系がそれに立ちはだかるからだ。第2は、軍事大国としての完成には、自国の戦略遂行上「国益」実現のためにいつでも軍事力に訴えることができる体制、非常事態規定の創設をはじめとした憲法の全面的改変は不可避と考えられていることである。第3は、集団的自衛権の限定行使や集団安全保障参加の曖昧化など現状の政府解釈では、国民の運動次第で再び解釈改憲の限界に悩まされることが必定だからである。

自民党が2012年4月27日に発表した「日本国憲法改正草案」こそ、安倍の目指す軍事大国がもつべき憲法のモデルである。草案は、憲法9条を改変して日本が個別的、集団的自衛権を持つことを明記している。さらに国防軍の保持を謳うとともに、軍法や軍法会議の設置を謳っている。また、憲法21条を「改正」し、「公益及び公の秩序を害することを目的とした」活動や結社の禁止を規定している。戦時下の反戦活動や団体を取り締まる立法の根拠規定である。さらに、第6章に「緊急事態」の章を新設し、緊急事態においては首相が国会を通さずに、命令で国民の自由を制限することができる規定(戒厳令)をおいている。

安倍は当面、明文改憲については二段階戦略を考えている。第一段階では、公明党の主張する「加憲」方式で、「新しい人権」などの追加を柱とする改憲をまず実現し、その際あわよくば96条改正をセットでやってしまう。こうして改憲について国民を慣れさせたうえで、9条改憲に臨むという二段階戦略である。
安倍政権が一方で解釈改憲を強行しつつ、同時に、2014年通常国会で8党派共同で改憲手続法改正を提案し、通過させたのは、憲法問題での超党派合意づくりを進める重要な一歩に位置づけられている。

 アマゾンジャパンは4月28日、短編作品を電子書籍で販売できる「Kindle Singles」を日本でスタートした。ある程度のページ数が必要な紙の書籍と異なり、小品であっても著者が出したい長さで出版できるのが売りで、まず池井戸潤さんの作品などを99~399円で販売する。

 400字詰め原稿用紙で30~150ページ程度の作品が対象。米国では2011年1月にスタートしており、紙の書籍と異なる電子書籍ならではの出版手法として注目を集めた。著者には売り上げの最大70%を還元する。

 まず短編小説やノンフィクション作品をそろえ、Kindle Singlesで出版したい作家やジャーナリストらからのも作品も募集する。今後は漫画にも対応し、中田永一さんのKindle Singles作品「ファイアスターター湯川さん」(112ページ、99円)を原作とし、児嶋都さんが作画を手掛けるコミカライズ版の発売を予定している。



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