渡辺治 外3著「〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機」を読みました。本書は、安倍政権の権力構造とその担い手、およびその国家改革・社会改革の目標とそのための諸施策の全体像を解明し、同時にそれらがどのような矛盾と困難を人々にもたらすのか、彼らの描く「絵」はどのような矛盾を内包しているのかを明らかにしています。歴代の保守政権の中でも特異で危険な安倍政権の全体像を的確にあぶりだしており、安倍の暴走を阻止するためにも繰り返し熟読すべき本です。

1 安倍政権の二つの顔・・・グローバル競争大国への野望(2)
 安倍政権が目指す「大国」とは「グローバル競争大国」である。この国家の最大の特徴は、自国の多国籍企業(グローバル企業)の利益を擁護し、その発展で国家の繁栄を確保しようとする点にある。そのためグローバル企業が活動しやすい秩序(アメリカ中心の自由な市場秩序)を維持するために、強大な軍事力を保持・使用するし、グローバル企業が世界的大競争で勝ち抜けるよう、政治経済を全面的にグローバル企業本位に改変する新自由主義改革にも強い執着を持つのである。

戦前の古典的帝国主義は、自国の大企業の権益を守るために植民地や勢力圏の拡大に血道をあげ軍事力を競い合ったが、戦後のアメリカを盟主とするグローバル競争大国は、どんな国の企業も自由に動き回れ活動できる「自由な」世界市場を求め、軍事力によってその維持と拡大に力を入れる。したがって、安倍の「軍事大国化」は日米同盟を強化しアメリカの戦争に協力する集団的自衛権として現れることになる。

第二次世界大戦後の先進各国では、拡大した国内市場を基礎に経済成長が持続し、福祉国家や開発主義国家が定着したが、経済成長のもとで巨大化したグローバル企業は、国家の壁を越えて直接世界市場を相手に商売を始めた。冷戦終焉、社会主義圏の崩壊、自由市場の大拡大が、それを加速した。グローバル企業にはもはや国内市場は狭すぎ、福祉国家や開発主義国家は、グローバル企業の競争力にマイナスとなり、競争力強化のための労働コスト低減や福祉削減、割高な農業や中小企業の淘汰を伴う新自由主義改革が推進されることになった。

安倍政権は、現代の大国化を正当化するために、一方では現代のグローバル世界に合ったイデオロギーを使っているが、同時に大日本帝国の時代を正当化の根拠に使っている。その理由は三つある。一つは、どの大国も自国のグローバル企業の利益を「国益」として擁護する必要があり、それを正当化するには多かれ少なかれ自国のナショナリズム・伝統に訴えざるを得ないという理由である。日本の場合、強い国家は大日本帝国以外にない。
二つ目、日本ではドイツのように戦前の政治と行動を全面否定するほど、戦前と断絶していないことだ。日本国家の強固な統合を象徴するシンボルとして戴きたい天皇は、大日本帝国を率いた天皇でもあったからである。
三つ目は、現代の大国化を認めさせるために、戦後日本の国家を否定する必要があるからだ。

戦後日本は、戦前の大日本帝国の凶暴な軍国主義を否定しただけでなく、軍事力の保持を禁止する憲法を掲げて、そもそも「大国」になることを拒否し、保守政権も「大国」になることを否定する国民の心情を認めるかたちで支配を継続してきた。そのため、日本が大国化するには、戦前との断絶よりは、この戦後国家とその支配的理念を否定しなければならないのである。それには、日本が積極的に海外に打って出た戦前を称揚しなければならない。
いま、安倍政権が直面しているのはこうした「困難」なのである。だから安倍は一方で、場所によっては戦前日本に一応「痛切な反省」を表明しつつ、歴史の見直しや靖国参拝に固執せざるを得ないのである。

 ジェフ・カールソン著「凍りついた空」を読みました。22世紀初頭、木星の衛星エウロパの分厚い氷殻内部でのファーストコンタクトを描いたもので、未知の生物との闘争、コミュニケーションを通じての協力合意に至るスリリングな過程が、地球およびエウロパ上での利権争いと絡めて描かれています。

当初に遭遇した生物の知性は低く攻撃的な動物で、言語をもたずコミュニケーションは不可能と思われましたが、これらの群は、大昔の大戦争で劣悪な環境の氷殻上層部に追いやられ知性が衰退した敗者群で、氷殻下層部やその下にある液体の海には、高度の知性を維持した戦勝者群がいると暗示されています。次作では、これらの高知性体とのコンタクトと展開が描かれると思われます。

核戦争後に地球を訪れたエイリアンは、放射線で知性が退化した地上人と、高度知性を維持した地下人に分かれた人類とのコンタクトに戸惑うことになるのかも知れません。


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