デイヴィッド・オレル著「なぜ経済予測は間違えるのか?」を読みました。以前から経済学は予測力がないから科学ではないとは思っていましたが、その理由は知りませんでした。本書は、エコノミストが用いる主流の経済学理論の前提が現実と全くかけ離れており、その前提は物理学や工学などから借用しているため、表面的には科学らしい見かけや肌触りをしているが、実際には科学もどきのイデオロギーに近いもので自己修正の意志がないことが、経済分析や経済予測を誤らせ続けている原因であることを歴史的展望から明らかにし、ネットワーク理論、複雑性の科学、心理学、システム生物学など、様々な新しい思想を取り入れることで、経済学を現実に合うものに生き返らせる必要があると主張しています。

 著者はシステム生物学を専門とする数学者であり、正統的経済学のドグマにとらわれないという有利な立場から、主流経済学理論の根本的誤りを明確に指摘しています。
1 ニュートン力学に基づく新古典派経済学
 新古典派経済学は、経済がニュートン力学における質点の衝突や反発などの挙動と同様に、独立した個人間における商品やサービスと貨幣の交換だけで成立するとしている。個人のふるまいを予測する経済法則は、効用理論を使って導いた。個人による効用価値の差違は、平均効用だけを計算することで回避する。価格が需要と供給のバランスで最適値になるという需要と供給の法則は、数学的な法則に移し替える際に、いくつかの仮定をしており、経済予測は創発特性を有する現実と合わない。

 デイヴィッド・イーグルマン著「意識は傍観者である」を読みました。脳神経科学の成果については、特に目新しいことは述べられていない。知覚、行動、思考、信念などすべてが意識のある「自分」には手の届かない水面下で決められていることや、脳は「ライバルからなるチーム」で、脳の各部位の競合で最終的に勝った内部状態が「自分」の意識に上がるということも、以前にすでに言われている。

 本書で目新しいのは、水面下の脳活動によって引き起こされ、「自分」の意識では制御できない犯罪行為に対する法律のあり方を、神経法学という新しい分野において研究し、犯罪者の更正に重点を置く刑罰制度を提唱すると共に、最新の脳画像技術を用いて、衝動を抑制するように脳を訓練するという新しい更正手法を提案しているところです。
ただし、この手法がエスカレートして、訓練によって権力者に従順な脳に造り替えるようになったら怖いですね。犯罪者だけでなく、一般人も定期的な脳診断で不合格になった人も対象にする法律が制定されたら、権力者に支配される暗黒社会がもたらされるでしょう。

 斉藤貴男著「安倍改憲政権の正体」を読みました。総頁わずか63頁の岩波ブックレットで直ぐに読了できるが中身は濃いです。本書は安倍政権の本質をえぐり出す好著であり大いに共感しました。政権を支持する人もそうでない人も、ぜひ一読していただきたい。電子書籍にしてもっと多数の人に読んで貰えば良いのに残念です。その代わりというわけではないが、本ブログで逐次、本書の目次に沿って内容紹介したいと思います。

 斉藤貴男著「安倍改憲政権の正体」を読んだ。総頁わずか63頁の岩波ブックレットで直ぐに読了できるが中身は濃い。本書は安倍政権の本質をえぐり出す好著であり大いに共感した。政権を支持する人もそうでない人も、ぜひ一読していただきたい。電子書籍にしてもっと多数の人に読んで貰えば良いのに残念だ。その代わりというわけではないが、本ブログで逐次、本書の目次に沿って内容紹介したい。

5 恥ずかしい国へ
 安倍政権が目指す「衛星プチ(ポチ?)帝国」が実現した日本は、虎の威を借りるキツネのような植民地根性に満ち満ちて、それでいて独善的な卑しさに溢れている。安倍の「美しい国へ」「新しい国へ」(文春新書)と続いた自己PR本のタイトルに倣えば、目下の奔流は「恥ずかしい国へ」とでも表現すべきだろうか。恥ずかしい国に向かって、安倍政権の最大の応援団を買って出ているのがマスコミだ。権力に対するチェック機能がまともに働いていない。

 御用新聞や御用テレビは論外として、第一次政権の時は安倍の政治姿勢を厳しく追及していた朝日新聞までが、今や政権べったりの印象をまき散らしている。第183回国会での安倍の冒頭演説の翌日、朝日は社説で「施政方針演説 さあ、仕事をしよう」(3月1日)とエールを送った。4月5日付の社説でも「安倍首相が『経済再生でロケットスタートを』と宣言したとおり、大規模な財政出動と金融緩和の『アベノミクス』を打ち出し、TPP交渉参加に道を開くなど、次々と手を繰り出した。首相の持論である『戦後レジームからの脱却』をひとまず封印し、最大の懸案だった経済再生に集中的に取り組んできた姿勢は評価できる」とまで持ち上げている。週刊ポスト(5月17日号)によると、安倍が自民党総裁に就任する以前に、両者の手打ちが図られていたという。安倍批判の急先鋒だった朝日の前主筆が定年で退社し、前回政権当時にNHKの番組改編事件をスクープした社会部の記者が、地方支局に飛ばされたままなのも大きいのだとか。

 安倍は、前回の政権投げ出しの失敗に学び、今回はマスコミを利活用してパフォーマンスが十分に奏功していると言われている。福島県相馬市から招いた中学生の前に突然のサプライズで現れ、一緒に写真に納まった。ホテルのトレーニングジム通いや代々木公園でのジョギング。大鵬と長島・松井への国民栄誉賞授与、「アジア文化交流懇談会」でのビートたけしとの意見交換、「桜を見る会」では人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」と並んで「Zポーズ」。広告代理店やPR会社の影がちらつく。

 アメリカの議会調査局は公式の報告書(5月1日付)で「強固な国粋主義者」と評し、「帝国主義日本の侵略やアジアの犠牲を否定する歴史修正主義にくみしている」「(東アジア)地域の国際関係を混乱させ、米国の国益を害する恐れがあるとの懸念を生じさせた」と痛烈に批判した。安倍は、旧日本軍の従軍慰安婦問題への関与を認め、政府として謝罪していた「河野談話」を見直す意向を示し、植民地支配や侵略で被害と苦痛を与えた人々に、政府として反省とお詫びを表明した「村山談話」を、「そのまま継承しているわけではない」「侵略の定義は定まっていない」などという国会答弁を重ねていた。ワシントン・ポストやニューヨークタイムズといった有力紙もこれを危険視する社説を掲載していた。

 慰安婦問題に関する橋下発言は、安倍以上に独善的なセリフで世間の耳目を集めようとした浅薄な心理によるが、いずれにしても安倍流「日本ごっこ」の延長線上にある。さらに言えば二人は同じ穴のムジナだ。安倍は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長の時、「河野談話」を弾劾した会合で、「韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうこと(売買春)をたくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね。ですから、それはとんでもない行為ではなくて、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないかとすら私は思っているんですけれども」と述べていた。

 安倍はアメリカによる日本支配を積極的に受け入れ、彼らの望む方向への憲法改正を推進しようとしている政治家だ。傀儡のような政権が、過去の帝国主義時代の「栄光」に縋って自らを慰めていたら、いつの間にか行きすぎて、ガス抜きぐらいは許してくれていた相手を怒らせてしまった構図。安倍の姿勢が本質的にはアメリカにとって便利この上もない以上、いずれ矛を収めて頂けるのだろうが、その見返りにTPPや憲法「改正」等々でより一層の自発的譲歩に誘われてしまったという展開を見せつけられそうで恐ろしい。安倍政権の日本は、愛情の対象とするにはあまりにみっともなく、恥ずかし過ぎるのだ。

 以上で本書の紹介は終わりです。アメリカに隷従し、アメリカの国益のために日本の国益や国民を犠牲にする施策を進める安倍は国賊であり売国奴だ。また、自分に迎合する者だけを侍らせて悦に入っている裸の王様だ。日本が崩壊する前に、こんな政権は一日も早く終わらせなければならない。

 堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ II」を読みました。本書では、軍事費のしわ寄せと不況による教育や医療、社会保障関係の予算の削減による格差と貧困の拡大、その背景に潜む軍産複合体、学資ローンビジネス、労働組合や医産複合体、刑産複合体など、政府と手を結ぶことで利権を拡大させる様々な利益団体の存在を活写しています。この「コーポラティズム(政府と企業の癒着主義)」は、安倍政権下の日本でも顕著になってきており、アメリカと同じような格差と貧困が拡大していくのでしょう。本書の内容は次のとおりです。

1 公教育が借金地獄に変わる
 国からの公的予算削減に対応するため、大学は学費値上げや授業料の高い州外学生を惹きつけるため設備投資を行い、経営悪化を引き起こす。大学間競争により有名校と公立大学の格差が急激に広がっている。連邦奨学金制度は、授業料の高騰のため不足分を学資ローンで補うなど学生側の負担が年々増大、民営化された学資ローン(サリーメイ)が政府直営のローンを駆逐、ローンの利子を自在にアップし、債務不履行者が続出、不良債権化した学資ローンは転売されるたびに金額が上乗せされ、返済不可能な借金地獄になる。また、営利目的の教育ビジネスは、数十億ドルの巨大市場に成長し、大規模ロビイスト団体として政治的影響力を持つ。

2 崩壊する社会保障が高齢者と若者を襲う
 高齢者のための公的年金制度は、加入資格に職業差別があり、インフレ調整機能がないなど、老後を保障する力がなかった。企業は税金対策と従業員の離職防止のために企業年金を確立していた。そのため社会保障の中心が官から民へ移行した。GMは、従業員と退職者の年金と医療保険を負担し続け、自動車に上乗せされるこのコストが競争力を弱め、破産に至った。破産による退職者全員が、生涯無料の医療保険の適用廃止となった。多くの高齢者が将来に不安を抱えている。平均寿命の上昇や、物価や医療費など生活費が値上がりする一方で、社会保障が未整備で賃金の上昇が止まったままであるため。高齢者のカード破産が拡大している。現役と高齢者の世代間人口比率が逆転し、ギャップが拡大するほど年金システムの崩壊が加速する。

3 医療改革vs.医産複合体
 高い失業率の下で人々は職と保険を同時に失い、労働人口の3分の2が無保険または必要な医療を受けていない。自治体は貧困層への公的医療予算を削減し、医療費や処方薬代は上昇を続けている。そのため、多くの人が貯金を使い果たし、巨額のクレジット負債を負い、基本的な生活費の支払いができない。無保険者の主流は、貧困層や高齢者ではなく、ある程度の収入がある中流層である。「オバマ・ケア(オバマの医療改革)」は、高額な医療費支出の削減と新たな公的保険による無保険者の解消を目指すもの。しかし、オバマ主催の「医療改革サミット」では、日本と同様の単一支払い皆保険制度の推進者グループは排除されていた。

 製薬会社は、医薬品価格を今後10年で8000億ドル(処方薬の総額の2%)値下げする代わりに、高齢者向け公的保険メディケアの処方薬の値引き交渉を製薬会社と行うというオバマの公約を今後10年間見送ること、および外国から安く薬を輸入するという公約も破棄することでオバマ・ケアを支持するという合意を交わした。一方、医療保険業界と共和党は、オバマ・ケアのなかの「公的保険オプション(民間の医療保険と公的保険の競争)」に強く反対し、国会議員へのロビー活動やテレビCMによる広報活動を行っている。アメリカの医療を破綻させている医療保険会社や製薬会社などの医産複合体を排除するには、政府が一括で運営責任を負う単一支払い皆保険制度が必要不可欠だが、医療改革の議論が始まると真っ先に選択肢から外され、公的保険オプションという目眩ましの代替案にすり変わった。

4 刑務所という名の巨大労働市場
 刑務所は、もはや「犯罪防止のための場所」や「更正の場所」ではなくなった。社会復帰させるための職業訓練や教育は、コスト削減で真っ先に廃止される。今や刑務所は、連邦や州が直面する財政難の解決策に他ならない。刑務所が囚人達に押しつける負担範囲は拡大する一方である。トイレットペーパーや図書館の利用料、部屋代や食費、最低レベルの医療サービスなど、本来無料であるべき部分まで請求されている。自由市場至上主義の熱気と連邦及び州政府の財政難により、民営刑務所は急激に拡大し、巨大ビジネスの仲間入りをした。労働人口の約三割を占める非正規労働者による、劣悪な労働環境に対する訴訟増加に対する対策として、企業は、発展途上国の労働者よりも、非正規社員よりもさらに条件の良い、数百億ドル規模の巨大市場、囚人労働者に注目した。囚人労働者の仕事としては、電話交換手、番号案内サービス、データ入力、電話予約係、苦情センター、各種製品の製作、パソコンのリサイクル作業など多岐に渡る。囚人を対象にした国内アウトソーシングの拡大は、国内の労働者や組合、企業にとっても脅威になる。

 国内の投資家達は、軍需産業やIT産業と並んで今最も利益率が高く、人気急上昇の投資先として、刑務所ビジネスに注目している。犯罪率は横ばいなのに、囚人数は毎年数パーセントずつ上昇している。アメリカの総人口は世界の5%だが、囚人数は世界の25%を占める「囚人大国」である。国も州政府も刑務所建設を推進するのは、今最も価格が高騰している刑務所REIT(不動産投資信託)による。刑務所の建物と土地を所有して、州の自治体などのテナントに賃貸する。建設費用のスポンサーは、ウォール街の金融大手が投資する。

 サブプライムローン破綻によるホームレス人口の増加が、刑務所人口拡大につながった。ホームレス対策として各自治体が厳罰化を適用、ホームレスを犯罪者として取り締まり始めた。警察はホームレスを徹底的に監視し、交差点以外の道路横断、公共の場をうろうろすること、屋外で開封した酒類を所持することなど、ありとあらゆる小さな行動を理由に逮捕している。軍需産業を潤わせた「共産主義への恐怖」に代わる「テロや凶悪犯罪への恐怖」という新たなマーケティングが、刑務所産業複合体を巨大なビジネスに成長させている。

 斉藤貴男著「安倍改憲政権の正体」を読みました。総頁わずか63頁の岩波ブックレットで直ぐに読了できるが中身は濃いです。本書は安倍政権の本質をえぐり出す好著であり大いに共感しました。政権を支持する人もそうでない人も、ぜひ一読していただきたい。電子書籍にしてもっと多数の人に読んで貰えば良いのに残念です。その代わりというわけではないが、本ブログで逐次、本書の目次に沿って内容紹介したいと思います。

4 改憲への意欲
 この国の戦後史は、いつもアメリカの戦争とともにあった。占領時代の朝鮮戦争に伴う特需景気が、経済復興の契機となり、「主権回復」後の奇跡的な高度経済成長も、ベトナム戦争によってもたらされた側面が大きかった。ベトナムの直接特需を享受している東南アジアの国々や戦時好景気に沸いたアメリカ本国への民生品需要、すなわち間接特需のインパクトが半端ではなかった。機械輸出総額は、東南アジア向けが4.5倍、北米向けが21.5倍に膨らんだ。対米輸出の激増は、日本列島を在日米軍基地だけでなく丸ごと最前線基地か兵站基地とし、インフラや設備など日本中の機能を米軍に提供した見返りであった。日本は在日米軍に守られてきたというより、むしろアメリカの戦争の片棒を担ぐことによって、経済大国になり果たせたのだ。

 安倍とその周辺は、「九条は欺瞞だからさっさと捨てて、日米安保を本物の日米軍事同盟に育てよう」と考えているのだろう。アメリカがイラク戦争あたりから「ショウ・ザ・フラッグ、血を流せ」とせっついてきており、構造改革が進んで経済社会の同化も完成に近づいていることだし、積極的かつ自発的にアメリカの戦争に参戦できるようにするための憲法「改正」であれば、グローバル巨大資本も合衆国政府大いに喜び、1955年の自民党結党以来の「使命」にも合致するというわけだ。

 安倍政権の主導で憲法九条「改正」がなされた場合、私たちは常にアメリカの戦争に付き従う義務を背負わされることになる。2005年10月、日米安保協議委員会の合意計画によれば、①在日米軍横田基地に府中市の航空自衛隊航空総隊司令部を移転し、日米統合運用調整所を設置する。②在日米陸軍キャンプ座間に本国ワシントン州から陸軍第一軍団の司令部の一部と、陸上自衛隊の中央即応集団の司令部を移転する等々。いずれの基地にも、在日米軍陸海空三軍の各司令部が置かれており、陸海空三自衛隊との一体化が進んでいて、ここまで進めば、むしろ一緒に戦争をしない方が奇妙だとさえ思える。これらの合意内容はいずれも実現してしまっていて、いまや憲法九条だけが戦争の歯止めになっている。

 2010年6月、民主党政権が「新成長戦略」の中で具体的な国策として「パッケージ型インフラ海外展開」を位置づけた。原発もその中に含まれていたが、3.11以後も何の反省も伴わずそのまま継続されている。安倍はこの国策に「邦人の安全」とか「資源の海外権益確保」といった要素を追加して、首相官邸に「経協インフラ戦略会議」を立ち上げている。
 パッケージ型インフラ海外展開という国策は二通りの危険を導く。第一に、「だから原発の再稼働だ」という流れが形成されること。危ないからと原発を停止し続けていたら外国は買ってくれないし、相手国の要人を接待のために招待する口実も作れない。第二に憲法の問題に直結する。パッケージ型インフラ海外展開の推進とともに、それに関わる日本国民が海外でトラブルに巻き込まれる可能性は飛躍的に高まる。資源の権益確保を絡ませれば、アルジェリアの天然ガスプラントが武装グループに襲撃され、10人の日本人を含む40人もの関係者が殺害された事件のようなテロに遭遇することも珍しくなくなる。だからこそ安倍政権は、自衛隊が海外で緊急事態に遭遇した邦人の陸上輸送を可能にする自衛隊法改正案を国会に提出したのだ。想定される様々な事態への対応を煮詰めていくと必ず九条がネックになり、これを取り除くために憲法改正が必要になるのだ。

 堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ」を読みました。本書は、アメリカ社会のすみずみから噴き出している問題一つ一つを検証し、つなぎ合わせることによって、国境、人種、宗教、性別、年齢などあらゆるカテゴリーを超えて世界を二極化している格差構造と、それを糧として回り続けるマーケットの存在、国家単位の世界観を根底からひっくり返さないと一方的に呑み込まれて行きかねないほどの恐ろしい暴走型市場原理システムを浮かび上がらせています。そこでは「弱者」が食いものにされ、人間らしく生きるための生存権を奪われたあげく、使い捨てにされていく。世界を覆うこの巨大な力に抵抗する術はあるのだろうか?これは、政治・経済システムがアメリカ追従型の日本にとって決して他人事ではないでしょう。取り上げられている問題は次のようなものです。

1 サブプライムローン問題
 アメリカの住宅ブームが勢いを失い始めた時、業者は増え続ける不法移民と低所得層をターゲットにした。自己破産歴を持つ者やクレジットカードが作れない者でも住宅ローンを組めるという触れ込みで顧客を掴むやり方だ。ローン返済ができず差し押さえられた物件の債権を担保としたサブプライム担保証券は、住宅価格が下がり貸し倒れが増え、証券の格下げにより株価が大きく動揺、大手銀行によるファンドの凍結を契機として株安の波が拡大し、世界中の株式市場を大パニックに引き入れた。「サブプライムローン問題」は単なる金融の話ではなく、過激な市場原理が経済的「弱者」を食いものにした「貧困ビジネス」の一つだ。

2 貧困が生み出す肥満国民
 レーガン政権は、効率重視の至上主義を基盤にした政策を次々に打ち出し、アメリカ社会を大きく変えていった。目的は、大企業の競争力を高めることで経済を上向かせること。そのために企業に対する規制を撤廃・緩和し、法人税を下げ、労働者側に厳しい政策を許し社会保障を削減する。(これは正に安倍政権が今進めている政策そのものだ。)レーガン政権以降、所得格差を拡大させている市場原理主義は、中間層を消滅させ、下層に転落した人々が社会の底辺から這い上がれないという仕組みを作り出し、貧困層救済のための社会保障政策を徐々に縮小していった。

 共働きと貧困家庭生徒の栄養改善を目的として、すべての学校が任意で参加できる無料―割引給食制度があるが、メニューはコスト削減のためのジャンクフードばかりで、肥満児童増加の原因になっている。貧困地域ではフードスタンプ受給者が多く、受給者達はカロリーばかり高くて栄養価のないジャンクフードやインスタント食品をフードスタンプを使って買えるだけ買う。その結果、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増えていく。

3 一度の病気で貧困層に転落する人々
 政府が大企業を擁護する規制緩和及び福祉削減政策に切り替えてから、普通に働く中間層の人々が次々に破産するようになった。その原因の半数以上があまりに高額の医療費負担だった。例えば、急性虫垂炎の手術入院一日だけで一万二千ドルと会社の保険ではカバーしきれない。専門医の初診料は200~500ドル、入院すると部屋代だけで一日約2000~5000ドルかかる。病気になり医療費が払いきれずに自己破産した人の殆どが中流階級の医療保険加入者という。その地域の保険市場の50%以上を一社が独占している都市は全米都市の半数以上で、競争相手がいない保険会社は保険料をいくらでも値上げできる。

4 出口をふさがれる若者たち
 「落ちこぼれゼロ法」という教育改革法の名の下に、学校の助成金と引き替えに高校生徒の個人情報を軍のリクルーターに提出させる。軍はこれを貧しく将来の見通しが暗い生徒たちのリストに作り直す。そして七週間の営業研修を受けた軍のリクルーターたちが、生徒たちの携帯に電話を掛けて直接入隊の勧誘をする。若者の入隊希望理由は、大学の学費免除や兵士用の医療保険加入、合法および不法移民に与えられる市民権の取得などである。コミュニティ・カレッジ(二年制の大学)の学生もターゲットになる。卒業までの費用を軍が負担し、卒業と同時に入隊するという契約形態だ。全米の学生の33%が学資ローンの受給者であると同時にクレジットカード返済滞納者である。軍に入隊すれば国防総省が学資ローン返済額の大部分を肩代わりするという。

これらは言うならば経済的徴兵制である。日本の自衛隊でもリクルーター部隊がニートなどを勧誘しているが、憲法改正で自衛隊が国防軍になったら、アメリカを参考に貧困層を増やして日本版の経済的徴兵制の社会がつくられるだろう。いわゆる「徴兵制」は必要ないのである。

5 世界のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
 米軍は民間の戦争請負会社に、後方支援として現地の様々な業務を依頼している。基地への食料や武器の輸送、倉庫内の作業員、電気技師やトラック運転手、VIPの護衛など多岐にわたる。人材募集のターゲットは、世界中の貧困層である。戦闘自体を請け負う、いわば「傭兵」の派遣会社もある。
9.11以降、「テロとの戦い」の名の下にアメリカ政府はあらゆる場所から国民の個人情報を入手している。NSAは大手電話会社から提供された顧客情報を利用し、電話記録を極秘裏に集めている。国防総省は、国内の一般市民による活動を監視し「脅威」と記した極秘文書を作成している。日本でも2007年6月、自衛隊の「情報保全隊」による大規模な国民監視活動を詳細に記録した内部文書が公表され、憲法13条及び21条違反であるという批判の声が高まった。

安倍が設立を目論む日本版NSAができたら、その下部組織の実行部隊により一層大規模で詳細な国民監視活動が行われ、その情報データは特定秘密保護法の下で特定秘密に指定され、政府の憲法違反行為は永久に隠蔽されることになるだろう。そんな暗黒の監視社会を阻止するために、国民一人一人が声をあげなければならない。


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