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 ミチオ・カク著「2100年の科学ライフ」を読みました。本書は、量子物理学者である著者が、最先端の科学者300人以上への取材にもとづいて、近未来(現在~2030年)、世紀の半ば(2030~2070年)、遠い未来(2070~2100年)の各段階で、コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行などのテクノロジーがどのように発展し、日常生活や人類文明がどのように形作られるのかを予測したものです。

今世紀の終わり頃には、センサーを介した脳とコンピュータの相互リンクによって、心が物を支配したり逆に心を読めたりするようになる。人工知能は人間の脳を凌駕するようになり、人間とロボットの融合が進む。医療はバイオテクノロジーの進歩によって、遺伝子治療、再生医療、老化防止などが普通に行われるようになる。ナノテクノロジーは、どんなものでも作れる分子アセンブラ「レプリケーター」を生み出す。エネルギーは核融合、常温超伝導体による磁気力、宇宙太陽光発電が使われる。宇宙旅行は、宇宙エレベーターを使って火星と小惑星帯に基地が建てられる。また、太陽帆、原子力ロケット、核融合ラムジェット、ナノシップ、反物質ロケットなどによる恒星間探査機(スターシップ)が実現する。

 上記のテクノロジー革命はすべて、たったひとつの点―――惑星文明の創造―――へ向かっている。文明を消費するエネルギーによってランク付けすると、タイプⅠ、Ⅱ、Ⅲになる。タイプⅠ文明は、惑星規模の文明で、惑星に降り注ぐ主星の光およそ10の17乗ワットを消費する。タイプⅡ文明は、恒星規模の文明で、主星が放つ全エネルギーおよそ10の27乗ワットを消費する。タイプⅢ文明は、銀河規模の文明で、数十億個の恒星のエネルギーおよそ10の37乗ワットを消費する。各タイプのあいだには、100億倍の開きがある。現在の我々の文明はタイプ0、正確には0.7にあたり、100年以内にタイプⅠ文明に到達する。AからZまでのアルファベットの文字が情報量に対応するような、情報処理に基づく別の尺度によると、われわれの文明はタイプHに分類される。従って、処理するエネルギーと情報量を加味して、現代文明はタイプ0.7H文明だと言える。

 わくわくするような未来のテクノロジー満載で、要約することは到底でませんが、未来文明がどのようになり得るのかについて、明確なビジョンを与えてくれます。SFを読んだり創作したりするときには、大いに参考になると思います。

 ヨルゲン・ランダース著「2052」を読みました。本書は1972年のローマ・クラブ「成長の限界」から40年過ぎた今の状況を検証すると共に、他の科学者、未来学者、各分野のキーパーソンの予測に基づいて、今後の40年間を予測したものです。
本書の主なメッセージは次の通りです。
●都市化と出生率急減により、世界人口は2040年直後に81億人でピークとなり、その後減少する。
●人口増加率の鈍化、生産性減少により、世界のGDPは予想より成長が遅く、2050年に現在の2.2倍になる。
●資源枯渇、環境汚染、気候変動、生態系の損失、不平等といった問題を解決するために、GDPの大部分を投資に回す必要があるため世界の消費は鈍り、2045年にピークになる。
●気候の問題は2052年までは壊滅的レベルに達しないが、21世紀半ば以降、気候変動は歯止めが利かなくなり、人類は大いに苦しむ。
●21世紀前半に集中的な対応策を強制的に進めていかないと、21世紀後半に温暖化は自己増殖し始める。
●資本主義と民主主義は短期志向になりがちなため、長期的な幸せを築くための合意がなかなか得られず、手遅れになる。
●世界中で都市化が進み、自然保護が疎かにされ、生物多様性は損なわれる。
●予想外の敗者は現在の経済大国、なかでも米国で、勝者は中国。BRISE(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ、その他の新興大国10カ国)は発展するが、残りの地域は貧しさから抜け出せない。

これまでの40年間、「成長の限界」の警告に対する対応策は殆どなされていないことを見れば、今後の40年間も地球温暖化をはじめとする深刻な問題の対応策は遅れ、21世紀後半には取り返しが付かない状態になると予測されています。それは政府も企業も国民も皆が短期志向で、有限の地球で持続可能な社会を維持するための、長期的な視点に立った対応策を考えて実行しようとしないからです。このままでは、22世紀には地球環境は悲惨な状態になって、人類社会の存続すら危ぶまれるようになるでしょう。政治家は目先の選挙だけに関心を持つ政治家根性を捨てて、有限の地球で持続可能な社会を維持するための長期ビジョンを創出し、具体的な実行計画を反映した政策を立案すべきと考えます。

 ジェイムズ・S・A・コーリイ著「巨獣めざめる」を読みました。太陽系内に人類が進出した近未来を舞台にしたリアルなスペースオペラです。土星から小惑星帯に帰還中の氷運搬船が、何者かの攻撃を受け破壊されるプロットから、内惑星連合と小惑星帯との緊張が高まり太陽系全体が戦争へ動き始めるなか、氷運搬船の生き残りの船乗りによる襲撃の真犯人探しと、小惑星ケレスの刑事による失踪した富豪の娘の探索がからみ、20億年前に太陽系外から地球めがけて投げ込まれたが土星で捕捉された、生体のままでの遺伝子改変機能を有するプロト分子が発見され、ある地球企業による小惑星規模での人体実験の強行、一個の遺伝子改変生体となった小惑星の地球への侵攻と阻止の攻防へストーリーが展開します。

ヒューゴー賞やローカス賞の候補にもなっただけあって、背景や人物もリアリティがあり、ストーリーもそれなりに面白いのですが、もともとロールプレイングゲーム用の設定として構想したものらしく、SFとしてのセンスオブワンダーに欠けるきらいがあります。


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