久米他3著
「政治学」
を読みました。本書は、政治を「本人」「共通の目的」「代理人」という三つの要素に注目し、現在の日本を題材として整理・解説した教科書。「本人」とは主権者である国民、「共通の目的」とは本人である国民の利益の実現、「代理人」とは目的実現のために国民が雇う議員や政府を意味する。「代理人」には負託された目的実現が期待され、「本人」は「代理人」を監視し、コントロールする必要がある。このような観点に立ち、政治学諸分野の知識や考え方、対象とする問題を政治学全体の中に位置づけたもので、一読に値します。
本書は序章と第1部~第4部の24章とで構成されています。序章では映画「七人の侍」を例にとり、統治の正当性、統治の効率、統治のプロセス、統治のモニタリングについて本人―代理人モデルによる説明を試みています。
第1部は統治の正当性で、政策の対立軸、政治と経済、自由と自由主義、福祉国家、国家と権力、市民社会と国民国家、国内社会と国際関係、国際関係における安全保障・富の配分、第2部は統治の効率で、議会、執政部、官僚制、中央地方関係、国際制度、第3部は統治のプロセスで、政策過程、対外政策の形成、制度と政策、第4部は統治のモニタリングで、デモクラシー、投票行動、政治の心理、世論とメディア、選挙と政治参加、利益団体と政治、政党について解説されています。
内容が多岐にわたりどの部分も重要で要約は困難ですが、特に第4部「統治のモニタリング」が興味深かった。政治は「代理人」である議員や政府まかせではダメで、目的実現のためには「本人」である国民がしっかり監視し、行動しなければならないと納得できました。