ネット記事によると、総務省と文部科学省、経済産業省は、デジタル化した出版物に国民がアクセスできる環境整備や、その環境を利用した新しいビジネスモデルについて検討する「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」の第一回会合を開催したという。
懇談会では、(1)デジタル・ネットワーク社会における出版物の収集・保存のあり方、(2)デジタル・ネットワーク社会における出版物の円滑な利活用のあり方、(3)国民の誰もが出版物にアクセスできる環境整備――の3点について検討を行う。懇談会には、メーカー、通信キャリア、Webサービス事業者、作家、出版社、権利者団体、印刷会社、研究者、書店、図書館などの立場を代表する26名が構成員として参加。
講談社の野間省伸副社長は、出版社31社が参加して2010年3月下旬に設立する予定の「日本電子書籍出版社協会」の概要について説明。デジタル出版の課題として「出版社の権利の明確化」「官民の役割分担」「文化の多様性確保」の3点を挙げた。
国立国会図書館の長尾真館長は、デジタル時代の図書館貸し出しモデルとなる私案を説明。出版社からの納本を使って国立国会図書館が書籍をデジタル化し、アーカイブを作成。デジタルデータの利用者への貸し出しと権利処理を専門に行うNPO法人「電子出版物流通センター(仮称)」を設立し、国立国会図書館が作ったアーカイブを活用して有償の貸し出しサービスを提供。出版社や権利者には、電子出版物流通センターが利用者から徴収したアクセス料金を支払う、というモデル。
懇談会では今後、配信プラットフォームの整備や利用フォーマットのあり方など技術的な問題を議論する「技術に関するワーキングチーム」と、出版業界の産業構造の実態を踏まえつつ関係者の役割分担を議論する「出版物の利活用の在り方に関するワーキングチーム」の二つのワーキングチームを設置し、議論を進める方針。ワーキングチームでの検討を踏まえた上で、懇談会として2010年6月中に議論を取りまとめる予定。