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記事ネタがなくて長らく更新できてません。以下は読んだ本のレビューです。今後も時々この手のものを載せますのでご了解ください。

 マーク・ブキャナン著「歴史の方程式」は、複雑系科学のような物理科学的な手法による未来予測の可能性を模索したものです。SFファンであればアイザック・アシモフ著「ファウンデーション」で提示された未来予測学である<歴史心理学>を思い浮かべてニヤリとするでしょう。翻訳者も「ファウンデーション」に言及しているので、恐らくSFファンなのでしょう。

 砂山の雪崩、地震、森林火災、生態系の異変など、各要素間の相互作用が時間的に累積していく系においては、ある時点でひずみが限界に達して不安定状態に移行するが、これらの系は必然的に自らをその間際の状態である臨界状態に自己組織化するという。統計によればこれらの系は、現象の発生規模と頻度の間に冪乗則が成り立ち、発生は広範囲の規模にわたって連続的に分布しており、体重や試験の得点を統計処理したときの正規分布の中央値のような典型的な発生規模というものはない。しかも、臨界状態の系の挙動は極めて少ないパラメータに依存し、構成要素の属性の詳細には関係しないという普遍性を示し、非常にシンプルな物理モデルで正確にシミュレーションできる。

 臨界状態は自然現象だけではなく、人間が関与する株価の変動、都市の発展、科学革命、戦争などにも見られ、自然現象と同様の冪乗則が成り立つ。しかし、これは未来予測が可能であることを示すのではなく、むしろ現象の典型的な原因がないという意味で未来予測の困難さを暗示している。歴史には無数の力が働いており、歴史の典型的な傾向を理解するには、多くの独立した物事が相互作用しているような系を表す歴史科学が必要となる。それは非平衡統計物理学の分野に属する。系の正確な予測はできないが、個々のできごとの無秩序さが相殺し合うことで、深いところでは規則性が成り立ち、特定の出来事の裏にあるより深遠な歴史的過程の普遍的な特徴を明らかにする。

 私は未来予測の実現を切望していますが、現時点では無理のようです。以下は私のささやかな幻想です。
世界を多数のノードとラインからなるネットワークで表す。各ノードは政治、経済、科学技術などの影響因子伝搬端子を持ち、他の多数のノードの端子と影響伝搬ラインで繋がっているものとする。あるノードの入力端子に入ってきた影響因子の信号レベルの累積が臨界値を超えると、出力端子からラインで繋がった他のノードの入力端子に影響因子の信号が送られる。各ノードの影響因子臨界値は異なるものとする。任意の信号レベルを任意のノードに入力し、各影響因子に対して臨界値を超えたノードを記録するという操作を繰り返したときのネットワークの挙動を調べる。このネットワークが現実世界の歴史過程を再現するように、影響因子、信号レベル、入力位置などをコンピュータ・シミュレーションによる試行錯誤によって適正化できれば、未来予測は可能になる。


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