書店数の激減、出版社の倒産、市場の縮小に反する新刊の増大による40%にもなる異常な返品率など、出版業界の危機が叫ばれながら一向に改善に向かう施策が採られているように見えないのが現状です。目を欧州に転じ、ドイツ、イギリスでの取り組みを通じて日本の出版再生のカギを模索するという趣旨の
ネット記事があったので、紹介します。
ドイツでは書店員の育成および流通の効率化によって本の返品率は1割以下ということです。育成は書店などで3年間の実習期間中、実習先から「書籍業学校」派遣されて計18週をここで学び、本にかかわる仕事に就く基本を身につける。学校は業界団体の書籍業組合が設立し、短期研修を含めて年間延べ1000人が学ぶ。読者の要望や知識欲をくみ、「本を選ぶ能力」が備わった出版人が育つということです。
流通の効率化は、110万点に及ぶ書籍のデータベースによって支えられているということです。これは業界統一の共有財産で、出版社は刊行6カ月前にタイトルを登録するのがルールで、価格変更や絶版などの情報はその都度更新する。情報はオンラインで見られ、書店はそれを元に注文するということです。流通の早さも日本と段違いとのこと。取り次ぎの巨大流通センターが全国の書店の注文を受け、50万点の在庫から本が選ばれ、1日の注文数は25万冊に及ぶが、在庫がある限り午後6時までの注文は必ず翌朝までに届けるということです。日本でも二大取次会社、日本出版販売とトーハンも、数百億円の大型投資でそれぞれ巨大流通センターを整備し、流通改革に取り組んでいるが、データベースを業界全体で共有しておらず、遅れているということです。
イギリスでは書籍の価格を拘束する再販制度が95年に崩壊。価格競争が激化し、体力がない小さな書店は急速に姿を消したそうです。行きすぎた競争を反省し、書店への支援に取り組んでいるということです。中堅出版社10社が提携し、独立系書店専用のベストセラー作家のサイン本を作ったり、取引条件を大型書店と同等にするなど、「町の書店」の維持に本腰を入れるということです。日本では書店数激減のなか、大型店は出店ラッシュ。出版社や取次会社は大型店への配本を優先し、地域の書店は欲しい本が手に入らない悪循環が強まっているということです。
結論として、日本でも書店の本を選ぶ能力や大型店偏重の配本の見直しが必要。日本は返品自由の委託制がほとんどで、本を返せるから「選択眼」が育たず、売れ筋は大型店に集中する。独英などでは、返品も認めるが買い切りが原則、書店はリスクを負うが粗利益率も35%程度(ドイツ)で、日本の2割強よりはるかに高い。買い切り原則の「責任販売制」を広げ、英国のような小さな書店の具体的な支援策が求められる。抜本的な対策を講じなければ出版文化そのものが危うくなると書かれています。