TeXの解説書を見ても一般的なフォントの説明はあるがOCR-Bの使い方については書いていません。TeX Q&Aで検索すると1件だけOCR-Bの使い方に関する質問と回答があり、それに従ってCTANからOCR-Bのパッケージをダウンロードし、所定位置にインストールしました。そして上記回答に述べてあるとおりプロンプトからフォント作成コマンドを入力しましたが、フォントファイルが途中までしか作成されず、次のコマンドを入力してもエラーになってしまいます。色々試してみましたがどうしてもそれ以上動かず、時間が経つばかりなのであきらめました。
TeXで直接OCR-Bを使えないので、別の方法でOCR-Bフォントの文字列を作り、PDFで保存したTeXによるバーコード画像と合体させることを試みました。幸い、WordでOCR-Bフォントが使えたのでこれで文字列を書き、バーコードのPDFファイルを挿入しようとしましたが、Wordは直接PDFを読めないことが分かりました。そこでPDFファイルを開いてバーコード画像をクリップボードにコピーし、Word画面に貼り付け、テキストボックスにOCR-Bで文字列を書いて、バーコード画像の下に移動させました。
これで一応体裁は整うのですがバーコードの画質が悪く、1モジュールの白バーがつぶれている箇所もありました。そこで、PDFのバーコード画像をよく見ると、それ自体がすでに1モジュールの白バーがつぶれているように見えたので、1.5倍くらいに拡大してみると白バーのつぶれはなく、1本1本のバーすべてが鮮明でした。そこでこれをWordに貼り付け、文字列も1.5倍に拡大しました。ディスプレイでは白バーがつぶれたように見える拡大なしのPDFのバーコード画像も、直接印刷するとつぶれはなく鮮明であることから、ディスプレイの解像度の問題だと考えました。そこで、1.5倍のバーコード画像と文字列を、プリンターの縮小機能で縮小して印刷すると一応つぶれはなくなりましたが、バー幅が位置によって若干異なるように見えて完全には満足できません。やはり、拡大・縮小によるひずみが出ていると思います。
そこで、Wordで作った無拡縮のOCR-Bフォントの文字列(12pt)をクセロPDFでPDFファイルとして保存し、原寸のバーコードPDFファイルとTeX上で一体化し、再度PDFファイルとして保存、印刷することを考えました。TeXは画像のサイズを決めるバウンディングボックス(bb)に相当するPDFの情報を読めないので、bbファイルをTeXコマンドで作成する必要があると解説書に書かれていました。そこでその通りにしましたが、画像挿入コマンド"includegraphics"を使ってバーコードとOCR-B文字列を挿入すると、かけ離れた位置に見えないくらい小さく表示されてしまいました。どうやら画像だけでなくPDF画面全体のサイズでbbファイルが作成されているようです。エディタでbbファイルを開いて画像だけのサイズに書き直して保存し、再度TeXコンパイルしましたが、今度は何も表示されません。bbファイルを勝手に書き直してはいけないようです。TeX解説書によると、PDF画像の過大な余白をAdobe Acrobatでトリミングすればよいようですが、高価なAcrobatを購入する気はありません。色々試みましたがどうしてもできないのであきらめました。
Wordへの貼り付けで一応は書籍JANコードができるのであきらめてこれで妥協しようか、あるいは自力作成の目標を断念して、万一のためと思って探しておいたバーコード作成の市販ソフトを購入するかと追いつめられた心境になっていました。この市販ソフトは28,000円と他のソフトより安めで、単体で書籍JANコードも作成できるとうたっています。しかし、ここで降参するのもしゃくなので、バーコードを貼り付けるアプリケーションをWord以外のものに変えて何とかならないかと考えていたら、一度は捨てたオープンソースフリーDTPソフトのScribusが使えるのではとひらめきました。
ScribusはDTPソフトとしては優れていますが、日本語縦書きができないので、小説の組み版には使えないと思ってあきらめていたのです。しかし、バーコード画像と横書きの欧文文字列(数字列)であれば全く問題ないはずです。早速試してみると、バーコードのPDF画像はファイルから画像フレーム内にそのまま挿入できますし、文字列はテキストフレーム内にキーボードから入力し、編集エディタでOCR-Bフォントに変換できて、あっけないほど簡単に無拡縮でひずみが全くない規定サイズ通りの書籍JANコードが作成できました。図1に完成した2段の13桁書籍JANコードを示します。
図1 書籍JANコード 予想外にてこずりましたがやっと懸案の書籍JANコードが完成しほっとしています。多大の時間を消費しましたが、ここまでやったおかげでScribusの更なる活用方法がひらめきました。すなわち、小説本文のような長文の日本語縦書きは無理ですが、書籍表紙に含まれるタイトルや著者名程度のものであれば、一文字ごとにEnterキーを押して縦書きにした日本語文を、以前Scribusの利用で述べた方法でテキストフレームに読み込むことで、短文の日本語縦書きは可能だということです。画像は問題なく画像フレームに読み込むことができ、テキストおよび画像フレーム、はマウス操作または座標値入力によって任意の位置に簡単に配置できるので、表紙作成には最適です。これはよく考えてみれば、ScribusはDTPソフトなのだから当たり前のことだったのに、それに気づかなかったという次第です。