14.日本語縦書き書籍の修正版
これまで進めてきた各種の修正を適用した原稿のTeXファイル、及びコンパイル後の出力結果の代表例を以下に示します。
(1)メインファイルmain.tex
\documentclass[a5j,twocolumn,openany,papersize]{mytbook} % tbook.cls のコピー
\begin{document}
\title{\textbf{未 来 の 影}}
\maketitle
\frontmatter % ページ番号はローマ字、章番号は付けない
\tableofcontents % 目次を出力
\mainmatter % ページ番号は算用数字。章番号を付ける
\include{chap01} % 第1章 未来観測
\include{chap02} % 第2章 地球機構
\include{chap03} % 第3章 地球凍結解析
\include{chap04} % 第4章 未来の選択
\include{chap05} % 第5章 忍び寄る凍結
\include{chap06} % 第6章 太陽系外へ
\include{chap07} % 第7章 地下居住空間
\include{chap08} % 第8章 ゲノム変生
\include{chap09} % 第9章 ライフステーション
\include{chap10} % 第10章 恒星宇宙船
\include{chap11} % 第11章 惑星着陸
\include{chap12} % 第12章 地下都市
\include{chap13} % 第13章 深海生物
\include{chap14} % 第14章 クローン人間
\end{document}
(2)各章ごとのファイル(第1章ファイルchap01で代表)
\chapter*{1 未来観測}
\addcontentsline{toc}{chapter}{1 未来観測}
照度を下げた会議室の空気は高性能エアコンの働きにもかかわらず重く淀み、出席者の顔のまわりに張り付いていた。眉間に深いしわを刻んだ顔、口をへの字に結んだ顔、能面のように張りつめた顔、シニカルな笑みを浮かべた顔等々、どの顔も沈痛に満ちて食い入るような眼差しを円卓中央の立体画像――漆黒の空間を背景にぽっかり浮かぶ銀色の球面――に注いでいた。その下方には所々灰色に汚れた白い起伏の連なりと、広大な白銀の鏡面が拡大像として表示されていた。\\
「他の観測点はどうなっているのかね?」\\
アメリカブロック出身で、気象物理の権威として知られているジョフ・ハミルトン博士が、眉根を寄せながら疑わしげな口調で言った。\\
「残り7つの観測点からはどうしても受信できませんでした。このG観測点のデータもノイズが多くて苦労しましたが、なんとか補正してやっと解析できたわけでして……」\\
アジアブロック出身の高次元時空解析局員シン・サンダは、申し訳なさそうに小さな声で答えた。\\
「それで同定された年代はいつなのかね?」\\
ヨーロッパブロック出身で、量子時空理論の創設に貢献したと言われているリー・クライマン博士が鋭く言った。\\
「はい、西暦2300年プラス・マイナス100年と同定されています。」\\
明快に回答できる質問にほっとしたシン・サンダは張りのある声で答えた。\\
「フム、早くてあと100年か……」\\
「それではこの画像データが何を意味しているのかについて討議をお願いします。」\\
議長を務めるアフリカブロック出身で地球機構環境保護局次長のゴリ・ガリバヌがきっぱりと言った。\\
「その前に、この画像データを得るまでのプロセスを説明してもらいたい。専門家がやってるんだから間違いはないと思うが、念のためだ。」\\
リー・クライマン博士がなだめるような口調で言った。\\
「では、時空解析局から説明してください。」\\
議長がシン・サンダの方をチラっと見ながら言った。\\
「時空解析システムはクォン・セルダンらが創設した高次元量子時空理論に基づいて開発され、今月から実稼働に入ったものであることはご承知のとおりです。
我々は定期観測時に静止軌道上にある8つの観測点から地球世界線の正の時間方向に量子波動を発信し、それを受信した未来時空の観測点から発信される負の時間方向の量子波動を受信します。
次に受信波に含まれる未来時空状態ベクトルを量子コンピュータに解析させ、トランスレータを介して立体画像処理装置でホログラムとして出力表示させます。
各プロセスにおける時空定数、境界条件、量子常数等の設定の詳細については、皆さんの席上に設置している端末にデータを送信してありますのでご確認ください。」\\
一気にしゃべり終えたシン・サンダは喉が渇いたのか卓上の給水セットから震える手でコップに水を並々と注ぎ、ゴクゴクと音をたてて飲んだ。\\
「事象年代の同定方法を説明してくれんかね?」\\
リー・クライマン博士が穏やかに言った。\\
「4次元時空ダイヤグラム上の地球/観測点間距離と、観測点からの量子波動円錐の回転角を用いて未来時空における地球までの時空距離を求め、年代を同定します。」\\
「量子波動円錐の回転角の計測方法は?」\\
「量子重力場発生装置の出力エネルギー/波動円錐回転角相関に基づく校正曲線によって算定します。」\\
「よくわかったよ、ありがとう。」\\
リー・クライマン博士は二三度軽くうなずきながら言った。\\
「それでは討議をお願いします。」\\
議長のゴリ・ガリバヌは今度こそ邪魔はさせないぞと言わんばかりの勢いで叫んだ。\\
「これが意味するものは明らかだ。何らかの原因で地球は100~300年後に氷の惑星になってしまうんだ。問題は何が原因かと言うことだ。ここ年の異常気象の頻発がさらにエスカレートして氷河期の到来を早めたのかも知れん。」\\
ジョセフ・ハミルトン博士は自説の「氷河期・気象変動相関論」を開陳した。\\
「原因は色々考えられる。小惑星の衝突、太陽異常、核戦争、異常気象等、その他にもあるかも知れん。要因系統図を作って各要因の生成確率を算定しなきゃならん。」\\
鷲を思わせる精悍な顔付きのリー・クライマン博士がきびきびと言った。\\
「ちょっと確認したいんだが、この画像は確定した未来を示しているのかね。もしもそうなら原因がわかっても何にもならんのじゃないかね?
また、確定してないんならこの画像は何を表していることになるのかね?」\\
鶴のような痩身をやや斜めに傾けて、量子意味論学の大御所として知られるインドブロックのチャンドラ・シタール博士が皮肉な笑みを浮かべながら言った。\\
「もちろん確定した未来だよ。原因がわかってもこれを変えることはできんが、どのように対応すべきかは決定できるわけだ。我々がどのように対応するかも確定してるのかも知れんが、マクロレベルの因果律が意識体にかかわるミクロレベルの情報流入を阻止しているから、我々には知ることができんのだ。」\\
むっとした顔でチャンドラ・シタール博士を睨み付けながらリー・クライマン博士がきり返した。\\
「それでは原因究明と対応策を策定するための計画概要の審議に入りたいと考えますが、その前に30分間のコーヒーブレイクを設けます。」\\
頃合いやよしと見た議長ゴリ・ガリバヌが休憩を宣した。会議は長引きそうであった。\\
(3)クラスファイルmytbook.clsの修正部分
(a)本文各章タイトルのフォントサイズ
\def\@makeschapterhead#1{\hbox{}%\vskip2\Cvs{\parindent\z@\raggedright\reset@font\large\bfseries\leavevmode\setlength\@tempdima{\linewidth}%\vtop{\hsize\@tempdima#1}}\vskip3\Cvs}
(b)タイトルページ見出し
\newcommand{\maketitle}{\begin{titlepage}%\let\footnotesize\small
\let\footnoterule\relax\let\thanks\p@thanks\let\footnote\thanks
\vbox to\textheight\bgroup\tate\hsize\textwidth\null\vfil\vskip 60\p@\begin{flushleft}%{\LARGE \@title \par}%\end{flushleft}\par\vfil{\centering\@thanks}\vfil\null\egroup\end{titlepage}%
(4)コンパイル後の出力
タイトルページ、目次、及び本文(第1章の2ページ分で代表)の出力結果を示します。




