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9.LaTeX処理結果のPDF化サンプル
 TeXファイルのLaTeX処理結果を、印刷・配布用にPDF化したものの一部をサンプルとして示します。このブログサイトのサーバーはPDFファイルのアップロードを受け付けないので、やむなく、ビットマップ経由でGIFに変換してアップしました。無駄な作業をしているようでうんざりです。いまどきPDFファイルくらいアップできるようにして欲しいですね。LaTeX処理結果をhtmlファイルに変換する方法もあるようですが、私はまだやり方が分からないので使えません。そのうち勉強してできるようにしたいと思います。

 サンプルで分かるように、目次、ノンブル(ページ番号)、章番号、柱(上端の章タイトル表示)などは自動生成されます。目次のノンブル表示、章タイトルと本文の文字サイズのバランスなど、まだまだ不満な箇所があり、今後修正していきたいと思いますが、修正のやり方はまだ良く分かりません。
未来の影1

20060827144120.gif

未来の影3

未来の影4

未来の影5




8.LaTeX処理結果のPDF化
従来はTeXでdviファイルを出力、dvioutなどでプレビューし、印刷・配布用にはdvipsでPostScript形式に変換するのが普通でしたが、現在はPDF形式のほうが便利で一般的になったようです。原稿の入稿などもPDF形式が要求されることが多くなってきました。

WinShellを使う場合は、LaTeX処理後pdfLaTeXボタンをクリックするだけで、dviファイルがPDF化されます。ただし、WinShellインストール後の設定において、メニューのOptions→Program Callsで開くダイアローグボックスで、Program欄のPDFLaTeXをクリックしたとき、exe – File欄をdvipdfmxに、cmd – Line欄を%s.dviに書き直しておく必要があります。WinShellを使わない場合は、コマンドプロンプトでmain.dviファイル格納ディレクトリに移動し”dvipdfmx main”と打ち込むことでPDF化できます。

6.コンパイル(LaTeX処理)
原稿ができたのでいよいよコンパイル(LaTeX処理)を行います。TeX統合環境ソフトWinshellでメインファイルmain.texを開き、LaTeXボタンをクリックするだけです。1回だけだと目次が一部しか出力されなかったので、2~3回実行することで全部出力できました。処理時間は数秒でした。幸いにコンパイルエラーは出ませんでしたが、エラーメッセージが出たらその箇所を修正する必要があります。

Winshellを使わずに処理をコマンドで行う場合は、Windows XPであればコマンドプロンプト画面において、cdコマンドでメインファイルを格納したディレクトリに移動し、そこで”platex main”と打ち込みます。XPのコマンドプロンプトは、すべてのプログラム→アクセサリ→コマンドプロンプトをクリックすることで表示されます。

 章ごとにコンパイルする場合は、メインファイルのプリアンブル(\begin{document}の前)に
  \includeonly{chap01}、あるいは \includeonly{chap01,chap02}
のように、{ }内にコンパイル対象の章ファイル名を書き込みます。同様にして全部の章をチェックし終えたら、\includeonlyの行を削除して、全体を一括処理します。

7.処理結果の画面表示
 処理結果はWindows用の画面表示ソフトdvioutで行います。Winshellの場合は、LaTeXコンパイル終了状態でDVIWinボタンをクリックするだけで表示されます。Winshellを使わない場合は、dvioutを起動して、LaTeXコンパイル時に自動作成されているmain.dviファイルを開けば表示されます。

5.章ごとのファイル
章ごとのファイルはメインファイルから読み込まれるようにしたので、文書としてのコマンドは不要で、いきなり\chapter{章の名称}と書き、以下に内容を入力するだけです。例として第1章「未来観測」のファイルを示します。行末の「\\」はTeXの改行コマンドです。

TeXは行の最後の文字が和文(全角文字)の場合、直後に打った1度だけのEnterキーを無視します。2度続けて打つと空行ができるので、改段落して次の行の先頭を1文字分インデントします。試しにTeXで1章だけをコンパイルしたとき、地の文と会話文が改行されずにべったりとひとつにつながっていました。これは、今回の原稿として当初MS Wordで書いていたものを使ったので、Wordでの各行末1つだけのEnterキー入力による改行コードが無視されたためだと考えました。

そこで、テキストエディタの秀丸を使って、ファイルの改行文字\nを\\に置換する操作を行いましたが、目に見えない何か余計なコードが混入したらしくて、何度やり直してもTeXコンパイルでエラーになり、出力されませんでした。やむなくファイルを開き、手動で必要な箇所にTeXの改行コード\\を入力しました。これでエラーなくコンパイルできました。

\chapter{未来観測}
 照度を下げた会議室の空気は高性能エアコンの働きにもかかわらず重く淀み、出席者の顔のまわりに張り付いていた。眉間に深いしわを刻んだ顔、口をへの字に結んだ顔、能面のように張りつめた顔、シニカルな笑みを浮かべた顔等々、どの顔も沈痛に満ちて食い入るような眼差しを円卓中央の立体画像――漆黒の空間を背景にぽっかり浮かぶ銀色の球面――に注いでいた。その下方には所々灰色に汚れた白い起伏の連なりと、広大な白銀の鏡面が拡大像として表示されていた。\\
「他の観測点はどうなっているのかね?」\\
アメリカブロック出身で、気象物理の権威として知られているジョセフ・ハミルトン博士が、眉根を寄せながら疑わしげな口調で言った。\\
「残り7つの観測点からはどうしても受信できませんでした。このG観測点のデータもノイズが多くて苦労しましたが、なんとか補正してやっと解析できたわけでして……」\\
アジアブロック出身の高次元時空解析局員シン・サンダは、申し訳なさそうに小さな声で答えた。\\
「それで同定された年代はいつなのかね?」\\
ヨーロッパブロック出身で、量子時空理論の創設に貢献したと言われているリー・クライマン博士が鋭く言った。\\
「はい、西暦2300年プラス・マイナス100年と同定されています。」\\
明快に回答できる質問にほっとしたシン・サンダは張りのある声で答えた。\\
「フム、早くてあと100年か……」\\
「それではこの画像データが何を意味しているのかについて討議をお願いします。」\\
議長を務めるアフリカブロック出身で地球機構環境保護局次長のゴリ・ガリバヌがきっぱりと言った。\\
「その前に、この画像データを得るまでのプロセスを説明してもらいたい。専門家がやってるんだから間違いはないと思うが、念のためだ。」\\
リー・クライマン博士がなだめるような口調で言った。\\
「では、時空解析局から説明してください。」\\
議長がシン・サンダの方をチラっと見ながら言った。\\
「時空解析システムはクォン・セルダンらが創設した高次元量子時空理論に基づいて開発され、今月から実稼働に入ったものであることはご承知のとおりです。我々は定期観測時に静止軌道上にある8つの観測点から地球世界線の正の時間方向に量子波動を発信し、それを受信した未来時空の観測点から発信される負の時間方向の量子波動を受信します。次に受信波に含まれる未来時空状態ベクトルを量子コンピュータに解析させ、トランスレータを介して立体画像処理装置でホログラムとして出力表示させます。各プロセスにおける時空定数、境界条件、量子常数等の設定の詳細については、皆さんの席上に設置している端末にデータを送信してありますのでご確認ください。」\\
一気にしゃべり終えたシン・サンダは喉が渇いたのか卓上の給水セットから震える手でコップに水を並々と注ぎ、ゴクゴクと音をたてて飲んだ。\\
「事象年代の同定方法を説明してくれんかね?」\\
リー・クライマン博士が穏やかに言った。\\
「4次元時空ダイヤグラム上の地球/観測点間距離と、観測点からの量子波動円錐の回 転角を用いて未来時空における地球までの時空距離を求め、年代を同定します。」\\
「量子波動円錐の回転角の計測方法は?」\\
「量子重力場発生装置の出力エネルギー/波動円錐回転角相関に基づく校正曲線によって算定します。」\\
「よくわかったよ、ありがとう。」\\
リー・クライマン博士は二三度軽くうなずきながら言った。\\
「それでは討議をお願いします。」\\
議長のゴリ・ガリバヌは今度こそ邪魔はさせないぞと言わんばかりの勢いで叫んだ。\\
「これが意味するものは明らかだ。何らかの原因で地球は100~300年後に氷の惑星になってしまうんだ。問題は何が原因かと言うことだ。ここ年の異常気象の頻発がさらにエスカレートして氷河期の到来を早めたのかも知れん。」\\
ジョセフ・ハミルトン博士は自説の「氷河期・気象変動相関論」を開陳した。\\
「原因は色々考えられる。小惑星の衝突、太陽異常、核戦争、異常気象等、その他にもあるかも知れん。要因系統図を作って各要因の生成確率を算定しなきゃならん。」\\
鷲を思わせる精悍な顔付きのリー・クライマン博士がきびきびと言った。\\
「ちょっと確認したいんだが、この画像は確定した未来を示しているのかね。もしもそうなら原因がわかっても何にもならんのじゃないかね?また、確定してないんならこの画像は何を表していることになるのかね?」\\
鶴のような痩身をやや斜めに傾けて、量子意味論学の大御所として知られるインドブロックのチャンドラ・シタール博士が皮肉な笑みを浮かべながら言った。\\
「もちろん確定した未来だよ。原因がわかってもこれを変えることはできんが、どのように対応すべきかは決定できるわけだ。我々がどのように対応するかも確定してるのかも知れんが、
マクロレベルの因果律が意識体にかかわるミクロレベルの情報流入を阻止しているから、我々には知ることができんのだ。」\\
むっとした顔でチャンドラ・シタール博士を睨み付けながらリー・クライマン博士がきり返した。\\
「それでは原因究明と対応策を策定するための計画概要の審議に入りたいと考えますが、その前に30分間のコーヒーブレイクを設けます。」\\
頃合いやよしと見た議長ゴリ・ガリバヌが休憩を宣した。会議は長引きそうであった。\\

3.ドキュメントクラスの選定
LaTeX2eの文書ファイルでは、最初にドキュメントクラス(文書の種類)を指定する必要があります。欧文(標準)では、論文・レポートがarticle、長い報告書がreport、本がbook、和文(標準・横)では各々jarticle、jreport、jbook、和文(標準・縦)では各々tarticle、treport、tbookとなっています。articleの類はいくつかの節(section)からなる文書、bookやreportの類はいくつかの章(chapter)からなる文書です。

そこで、ドキュメントクラスとしてtbook和文(標準・縦)を選び、このクラスファイルをTeXがインストールされたフォルダから探し出して(C:\usr\local\share\texmf\ptex\platex\base\tbook.cls)コピーし、作成済みの原稿用フォルダ「未来の影」に入れ、ファイルの名前をmytbook.clsに変えました。

4.メインファイルの作成
先に作った章ごとのファイルを一括処理するために、次のようなメインのファイルを作成し、main.texという名前を付けて原稿用フォルダに入れました。

\documentclass[a5j,twocolumn]{mytbook}   % tbook.cls のコピー
\begin{document}
\tableofcontents    % 目次を出力
\mainmatter      % ページ番号は算用数字。章番号を付ける
\include{chap01}    % 第1章 未来観測
\include{chap02}    % 第2章 地球機構
\include{chap03}    % 第3章 地球凍結解析
\include{chap04}    % 第4章 未来の選択
\include{chap05}    % 第5章 忍び寄る凍結
\include{chap06}    % 第6章 太陽系外へ
\include{chap07}    % 第7章 地下居住空間
\include{chap08}    % 第8章 ゲノム変生
\include{chap09}    % 第9章 ライフステーション
\include{chap10}    % 第10章 恒星宇宙船
\include{chap11}    % 第11章 惑星着陸
\include{chap12}    % 第12章 地下都市
\include{chap13}    % 第13章 深海生物
\include{chap14}    % 第14章 クローン人間
\end{document}

各コマンドの意味は次の通りです。%以下はコメントでTeXはコンパイル時に無視します。

●\documentclass[a5j,twocolumn]{mytbook}
tbook.clsのコピー・改名版mytbook.clsを指定し、[]内のオプションで、用紙サイズA5、二段組みの指定を追加しています。
●\begin{document}
 文書の始まりを示すコマンドです。
●\tableofcontents
 目次出力を指定しています。
●\mainmatter
 本文の開始を意味します。奇数ページ起こしで、ノンブルは算用数字(1, 2, 3, …)になります。
●\include{chap01}~{chap14}
 各章ごとのファイルを読み込みます。{}内は拡張子.texを除いたファイル名を指定します。
●\end{document}
 文書の終わりを示すコマンドです。

ほかにも索引出力、付録、奥付、参照文献出力など様々なコマンドがありますが、今回は対象が小説なので、指定していません。

 いよいよLaTeXによる書籍製作に取りかかりました。原稿は自作の長編SF「未来の影」です。製作手順は次の通りです。TeXおよび関連ソフトは「LaTeX2e美文書作成入門」付属のCDを使ってインストールしました。これがなくてもTeXはフリーソフトなので、Webから自由にダウンロードできます。例えば、「ワープロユーザのためのTeX入門」は、ソフトのインストール方法も含めて初心者向けにわかりやすく解説されていますので参照して下さい。

1.原稿のテキストファイル化
 最初から原稿をLaTeXで書いていればこのステップは不要ですが、執筆当時はLaTeXを知らなかったのでMS Wordで原稿を書いていました。LaTeXはテキストファイルを扱うので、MS Wordの特殊な様式を除去する必要があります。そこで、MS Wordで原稿を一旦開き、保存形式をテキストに変えて保存しました。拡張子が.docから.txtになりました。

2.ファイルの分割
 ファイルの容量が大きい(240KB)ので、章ごとに分割して別ファイルにしました。元の原稿は章というより節に近い区切りで1~14の番号を付けていたのですが、とりあえずこれを章と見なすことにしました。
分割ファイルは次のようになり、これらを新しく作ったフォルダ「未来の影」に入れました。
 chap01,tex(未来観測)、chap02.tex(地球機構)、chap03.tex(地球凍結解析)、chap04.tex(未来の選択)、chap05.tex(忍び寄る凍結)、chap06.tex(太陽系外へ)、chap07.tex(地下居住空間)、chap08.tex(ゲノム変生)、chap09.tex(ライフステーション)、chap10.tex(恒星宇宙船)、chap11.tex(惑星着陸)、chap12.tex(地下都市)、chap13.tex(深海生物)、chap14.tex(クローン人間)

 分割ファイルの拡張子は.txtを.texに変えます。この操作は手動でも良いし、WinShellやEasyTeXなどのTeX統合環境フリーソフトに読み込んで保存することでも行えます。

 やっと「LaTeX2e美文書作成入門」を読み終えました。書いてあることは日本語なので一応理解できますが、これでTeXが自在に使えるようになったというわけではありません。例示された文章や数式、画像などの表示手順を模倣するだけでは、いつまでもTeXが身に付かないようなので、少し乱暴ですがいきなり書籍製作に挑戦することにしました。原稿は私が以前書いた長編SFを使うことにします。

 書籍製作の途中経過は順次紹介したいと考えますが、その前に、TeXについての基本的な事項を要約しておきます。TeXは「テック」または「テフ」と読み、オープンソースフリーの組版ソフトです。DTPソフトの一種と言えます。本文中にタグを挿入してTeXファイルを作成する方法が採られており、HTMLやXMLのようなマークアップ言語の一種とも言えます。

 TeXの特徴としては、無料で改良自由、OS不依存、あらゆる種類の出力装置に対応、高精度(1/65536ポイント=約0.000005mm単位で文字や図形の出力位置を決定)、文書がテキストファイル、高度な組み版技術が組み込み(特に数式)などがあります。

 TeXは、スタンフォード大学のDonald E.Knuth教授(数学者・コンピュータ科学者)が1980年頃に作ったものです。最も狭い意味でのTeX(裸のTeX)は、基本的な機能しか持たない組版機構を指します。これにマクロと呼ばれる高レベルの機能を追加することによって、様々なTeXの仲間が生まれます。

 TeX作者のKnuth教授が、必要最小限のものを集めたplain TeXマクロパッケージを組み込んだTeXをplain TeXと言います。plain TeXマクロを大幅に拡張した各種のマクロパッケージ(LaTeX、Texinfo、ConTeXtなど)が作られており、それぞれLaTeX、Teinfo、ConTeXtと呼ばれます。

 LaTeXはDEC(現HP)のコンピュータ科学者Leslie Lamportによって機能強化されたTeXです。LaTeXの特徴は、文書の論理的な構造と視覚的なレイアウトの分離、章・節・図・表・数式などの自動付番、目次・索引・引用文献の自動処理、柱の自動作成などです。このような便利な機能のため、1980年代半ばに利用者が飛躍的に増大、1993年にはLaTeX2eという新しいLaTeXができました。古いLaTeXはLaTeX2.09と呼ばれます。(株)アスキーがTeXを日本語化したものは、それぞれの頭に「p」(publishing)をつけて、pTeX、pLaTeX、pLaTeX2eと呼びます。

 個人出版事業をどのような形態で行うかを考えておく必要があるかもしれません。当面は手軽な個人事業主として行うとしても、いずれは法人格を有する株式会社という形態に移行することになると思われます。2006年5月から施行された新会社法によれば、有限会社は廃止、株式会社の最低資本金は撤廃されて1円でも株式会社を設立できるようになりました。各事業形態の特徴や必要な手続きについて調べてみました。

1.事業形態と特徴
 法人としては、株式会社、LLC(合同会社)、NPO、組合としては、LLP(有限責任事業組合)、企業組合、個人としては個人事業があります。責任の範囲は、法人や組合の場合有限ですが、個人の場合は無制限となります。開業資金は、株式会社が1円から、その他は制限なしとなっています。設立手続きは、株式会社、企業組合、NPOは非常に煩雑、LLC、LLPは比較的簡単、個人事業は必要ないようです。設立費用は、株式会社が約24万5千円、LLCが約10万円、LLPが約6万円、企業組合、NPOは0円?、個人事業はなしとなっています。

2.開業手続き
 出版業は特に許認可や免許を必要としないようです。個人事業は、(1)個人事業の開廃業等届出書(納税地の所轄税務署、開業の日から1ヶ月以内)、(2)個人事業開始申告書(事業所所在地の都道府県税事務所、開業後すみやかに)、(3)所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書(納税地の所轄税務署、最初の確定申告の提出期限まで)を提出する必要があるようです。

 株式会社は、設立の流れが次のようになります。
(1)発起人の決定(発起人は1人以上でよく、株式の引き受け(出資)をする)
(2)商号、営業目的、本店所在地の決定(同一商号同一住所に備え、念のため商号の候補を複数考えておく)
(3)同一商号同一住所の調査(同じ住所で同じ商号を登記することはできない)
(4)許認可の調査(事業内容が許認可を要するものか、その要件・難易度や処理期間などを調べる)
(5)会社の印鑑の作成(注文から完成までそれなりの期間がかかるので、類似商号や許認可が大丈夫であれば、なるべく早めに作成する)
(6)定款の作成(会社の根幹となる事項を記載し会社は定款の内容に基づいて活動する、絶対的記載事項、相対的記載事項がある)
(7)定款の認証(公証役場で公証人に定款が法的に合致しているかを認証してもらう)
(8)出資金の払込み(自分の銀行口座等に出資金を振り込み、預金通帳等の該当部分をコピーして証明する)
(9)設立登記申請(設立日は申請をした日となる)
(10)会社設立(登記申請時に指定された補正日には謄本をとれる、補正が必要な場合は補正が済めば謄本をとれる)
(11)設立の届出(県税事務所、税務署、区市町村役場など各種官公庁に必要な届出を行う)

 ネットに出版関連のちょっとした知識があったので紹介します。
現存する最古の出版社は、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)で、創業は1478年。ドイツでグーテンベルグが印刷術を発明した1450年から30年未満で、イギリスの大学では出版部を持っていたということです。

「Press」は圧搾、ぶどう絞り器を意味していたが、グーテンベルグがぶどう絞り器を印刷機に転用したことから、印刷という意味が持たされ、オックスフォード大学印刷部の活動展開に伴い、出版の概念を持つようになったということです。

 出版物の売上高は2004年に8年ぶりに増加し、2兆3482億円となったそうです。売上のピークは96年の2兆6980億円で、以後減少が続いていました。新刊点数は売上が落ちているにもかかわらず伸びているそうです。書籍の売上の落ちを多量の新刊発行でカバーしようとする動きで、返品が増え在庫資産を捨てることになるので、不健全な傾向にあるようです。売上の内訳は雑誌6割、書籍4割と雑誌(マンガを含む)が過半数です。日本の出版界は雑誌でもっており、書籍だけをみた書籍産業は赤字だそうです。

 出版社は中小・零細が多く、年間に新刊を10点以上刊行しているのは1,000社位ですが、出版社は4,000社あると言われています。売上では小学館・集英社、講談社の2大グループが、マンガ、コミックを多量に作っているため、ダントツだそうですが、小学館も講談社も社員数はせいぜい1,000人程度、岩波書店で230人位と非常に小さい世界のようです。

 主な国内出版社の出版社記号をネットで調べたら、次のようなデータがありました。3桁までしか表示しませんでしたが、実際は7桁までありますからすごいです。出版社の数は4,000社と言われているそうです。

出版社記号一覧

 印刷・製本を自分でやろうとすると、印刷はPC用のページプリンターで良いとして、製本には手と糊だけの完全手作りも可能ですが、簡単な製本機が必要になると思います。そこで、市販されている卓上型の簡易製本機について調べてみました。

(1)ホットメルト式(特殊樹脂の熱処理による接着)
 専用の表紙カバーに製本したい書類を挟み込み、製本機に入れて最大2分加熱で無線綴じするものです。JDF社の「J-bind」の場合、製本サイズが最大A4、背幅30mmのもので39,800円となっています。ただし、カバーデザインには専用のプリンター(A4サイズで99,800円)が必要なのが難点です。この本体カバーとは別に表紙カバーを印刷するという方法も考えられます。

 RISO社の「理想製本機」の場合、製本最大A4サイズ、厚さ25mmで398,000円となっています。こちらは上記の10倍と高価ですが、表紙は市販の一般的な用紙が使えることになっています。

 JIC社の「とじ太くん」の場合、製本サイズ(A5タテ・B5・A4・B4ヨコ・A3ヨコ判)、最大背幅30mmで8,400円、製本サイズ(B5・A4・B4・A3ヨコ判)、最大背幅54mmで104,790円となっています。こちらも表紙は専用カバーを使うようになっています。任意のデザインの専用表紙カバーは特注となっています。

(2)手作り方式
 バインダーで書類を締め付けて背側をのり付けする手作り方式で、中央文化出版社の「bookist binder」の場合、最大A4サイズで27,300円となっています。単なるバインダーにしては結構な価格だし、作業はかなり面倒なようで、製本を趣味でやるならともかく、個人出版社には向かないと思います。

 アイデアグッズ工房の「製本家さん」の場合、A5型(幅40~212mm、厚さ20mm)で9,800円、汎用型(幅20~300mm、厚さ28mm)で15,000円となっており、上記より低価格で使い方がシンプルのような気がします。

 あくり出版社の「あくり製本キット」の場合、B6・14,700円、A5・15,750円、B5・16,800円、A4・17,850円となっています。

 卓上製本機も一長一短があり、ぴったりこれだというものはなかなか見つかりませんが、少部数発行本の製造原価を下げるには妥協して利用するしか仕方がないでしょう。

 自作以外で本の原稿を集積する方法として次のようなものが考えられます。ホンニナル出版のように、入稿された原稿を当該サイトでオンデマンド出版・販売するところがありますが、ISBN/JANコードがなくて当該サイト以外では誰にも知られることがありません。また、同様なサービスを行いながら、ISBN/JANコード付加の場合は別途法外な費用を要求するサイトがあります。

 これらのサイトに原稿を入稿するユーザー(著者)の中には、適正な費用であればISBN/JANコードを付けたいと思っている人は結構多いのではないかと思われます。そこで、ISBN/JANコード付加の部分を適正な費用で引き受けるという条件で、上記オンデマンド出版・販売サイトと業務提携することによって、既発行書籍も含めるとかなりの原稿が集積できると考えます。

 提携に応じるところがなければ、自分でサイトを立ち上げて原稿募集するという方法もあります。もちろん、この場合は何らかの方法で印刷・製本システムを確立しておく必要があります。方法としては、レーザープリンターと卓上型製本機を用いてすべて自分でやる方法、格安の印刷・製本会社を見つけて発注する方法などが考えられます。

 これまで色々手探りしてきて、ようやく個人出版社への道がおぼろげながら見えてきたような気がします。目標達成までのステップを整理すると次のようになります。
(1)本の原稿を集積する。
 現在、自分が書いた長編SF2点、エッセイやショートショート数点しかないので、もっと多くのネタを集める必要があります。ISBN/JANコードの取得は来年の規定改訂後として、それまでに作品を増やすとともに、自作以外の原稿も集める方法を考えたいと思います。

(2)日本図書コード(ISBN)と書籍JANコードを取得する。
 来年1月1日から、ISBNの新規定に従った取り扱いになる(10桁から13桁へ)ので、実際の取得は来年にしようと思っています。これによって、国内書籍データベースに出版者と書籍データが登録できて、市場流通の基本条件を備えることになります。

(3)Amazonのe託販売サービスに登録する。
 仕入れ掛け率40%、つまりAmazonから登録者への支払額が本の定価の60%で、年会費9,000円、送料は登録者負担と厳しい条件ですが、ISBN/JANコードがあれば出版取り次ぎを通さなくても、直接Amazonでネット販売できるので利用しない手はないと思います。

(4)書店流通可能な委託販売先を見つける。
 個人出版を相手にするところがあるか期待薄ですが、一応調べてみたいと思います。

(5)本の製造原価を低減する方法を見つける。
 つまり、印刷・製本費用を下げるということですが、これまでネットで調べた範囲ではどこも結構高くて、Amazonのe託販売サービスを利用して赤字を出さないようにすることは難しいようです。卸価格が定価の60%ということは、単純に考えて、製造原価を定価の50%にできてやっと利益は10%ということで、この中から著作料(自作以外の場合)、年会費、送料、通信費などの諸経費を引くと、恐らく赤字になるでしょう。
 ということは、格安で印刷・製本を引き受けてくれるところが見つからない限り、自分で印刷・製本するしかないということです。幸い、PCとカラーのレーザープリンターを持っているので、少部数であれば印刷には困りません。製本もネットで調べると、多種類の安価な卓上型の製本機が市販されているので、少部数であれば自作できそうです。当面、一度に10冊以上の納品依頼がくるとは思えないので、十分ではないかと思います。

(6)個人出版社および書籍のPR方法を決めて実行する。
 新参の個人出版社にできることは限られます。さしあたってはHPやブログをつくってPRする、各種のネットワークコミュニティに参加する、家族・親戚、友人・知人を通じたコネや口コミを活用するなどが考えられます。

 稀人舎:ゆうさんのブログ「本を買ってください」で、Amazon e託販売サービスというのがあるのを知りました。従来のように出版取り次ぎを通さなくても、個人がAmazonでネット販売できるということです。

Amazonサイトの表示説明によると、「出版社・メーカーの商品をAmazonの配送センターに委託在庫。下記条件を満たす商品のカスタマーへの配送およびサポートを提供するサービス」 ということです。
・委託する商品に、ISBNバーコード/JANバーコードが印刷されていること
・委託する商品の販売権を有していること
・Amazon.co.jpにあるストア(書籍、CD、DVDなど)に該当する商品であること

参加要件は、日本居住の20歳以上の個人、または日本の事業体 のいずれかで、下記条件を満たすこととなっています。
・Eメールアドレスを保持し、インターネットにアクセスできること。
・電信送金の受取が可能な日本の銀行口座を持っていること。
・年会費9000円を支払うこと。

商品の登録要件は、書籍の場合ISBN・JANが書籍に印刷されており、スキャン可能なバーコードが書籍の裏表紙に印刷されていることが必要で、バーコードは書籍のISBN/JANと一致する必要があるということです。

 和書の仕入掛率は40%、つまり希望小売価格が1000円の場合、Amazonから参加者への支払額は600円ということです。従って、印刷・製本の製造原価が500円であれば利益は100円ということになります。商品を配送センター宛に送る際と返却の際の送料は、いずれも参加者の負担ということになっています。

 年会費9000円や送料をカバーした上に利益を上げるのは、かなり厳しいかもしれませんが、個人がAmazonでネット販売できる道が開かれたことは、歓迎すべきことだと思います。あとは、印刷・製本をすべて自分でやるなど、本の製造原価を下げる工夫や、PRの方法に知恵を絞っていかなくてはならないでしょう。

 本に日本図書コード(ISBN)を付けるか付けないかは出版者の自由ですが、ISBNを取得するとどのようなメリットがあるのか調べてみました。先ずは国内流通の基本条件を備えることになるということです。また、日本図書コードを取得した出版者の登録情報は公開され、国際ISBN機関の編集発行する国際出版者名簿に掲載されます。さらに、国内のデータベースにも登録され、公開されます。

 国内のデータベースへの登録申請は、日本書籍出版協会のサイトから、「データベース日本書籍総目録」電子媒体登録申込書を送付することにより行います。登録完了後、発行書籍情報を所定のフォーマットで電子入稿することによって、Books.or.jpという書籍検索サイトに登録され、世界中のどこからでも出版者や書籍の検索が可能となります。これによって、様々な書籍の出版・販売市場の関連部署に知られるところとなり、引き合いがくるようになるとのことです。

 ただし、全国の書店での販売や、ネット販売でもAmazonのような大手のネット書店での販売を行おうとすると、出版取り次ぎ制度が壁となって立ちはだかり、出版取り次ぎの取引口座がないと書籍を流通させることができません。結局、すでに取引口座を持っている既存の出版社に販売を委託せざるを得ないということです。出版取り次ぎ制度と再販制度は何度も見直されてきたにもかかわらず、業界の安定優先指向からいつまでも温存されているようです。どちらもすでに時代遅れの感があり、いずれはインターネットの電子出版に置き換えられていくのでしょうが、それまでは制度の間隙をぬって進めていくしかないようです。

 書籍JANコードは流通用のコードで、書店で販売する予定のある出版者は取得する必要があります。書籍JANコードは「日本図書コード」をバーコードで表現したもので、2段1組で表現されます。「日本図書コード」は「ISBN」の基本部分に加えて、「読者対象」「発行形態」「内容」を示す分類コードと本体価格を加えたコード体系です。バーコードの1段目がISBN部分、2段目が分類コード+本体価格です。

 書籍JANコードは(財)流通システム開発センターが管理していますが、諸手続きの窓口業務は『日本図書コード管理センター』が代行しています。ISBN取得がないバーコードのみの取得はできません。

1.取得方法、費用など
(1)書籍JANコードの使用権取得
HPからダウンロードした書籍JANコード登録申請書に必要事項を記入し、捺印の上、郵便振替の払込票兼受領書のコピーを指定位置に貼付して「日本図書コード管理センター」に送付することとなっています。

(2)登録申請料金
ISBNの登録料金とは別途に登録申請料(3年間分前払い制)が必要です。料金は申請出版者が発行した全書籍の前年度年間売上金額を申請書の登録申請料のランクにあてはめて申請料金を算出します。創業1年未満の出版者は売上金額を零して算定します。法人格が無い個人などの出版者は出版活動開始日を創業日と仮定します。

(3)使用権の更新
3年ごとに使用権の更新が必要で、その都度売上金額に応じた使用料を負担することになっています。

(4)バーコードの作成
バーコードは出版者が作成します。センターでは専門業者に注文してフィルムを作成することを推奨しています。先に紹介した「本を買ってください」や「コラム本出版までの道のり」によると、フィルム作成費用は1点あたり3,500円、データは半日くらいでメールで送付されてくるが、データを読み取るには、Adobe Illustratorというソフトが必要だということです。Adobe PhotoshopやAdobe Acrobat等では、正しく読むことができないとのことで注意が必要です。しかし、Adobe Illustratorは83,475円もする高額ソフトでチョット手が出ませんね。


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