小説を投稿、閲覧できるウェブサイトが次々にオープンしている。書籍化が年140冊を超えるサイトがあり、閲覧に課金して月200万円を稼ぐ作家もいる。「ユーチューブ」などの動画投稿サイトから映像や音楽が人気になるのと似た構図で、従来とは違う作家の在り方を生み出している。
出版社KADOKAWAとブログなどを運営する「はてな」は今月末、小説投稿サイト「カクヨム」を始める。狙いの一つは才能の発掘だ。掲載作から本を作る文芸誌のように、人気作や優秀作は出版につなげるという。「投稿サイトは一つの雑誌であり、文化」と萩原猛編集長は話す。
カクヨムの特徴は人気作の「二次創作」を認めたことにある。KADOKAWAが版元の「涼宮ハルヒ」シリーズなど、許諾済みの作品からキャラクターや設定を借りられ、より気軽に創作が始められる。「デビュー前に二次創作をしていた作家も多い。創作のハードルを下げたかった」
実際、文芸誌などの新人賞に応募するのとは違い、投稿サイトには最初はプロを目指さない人も多い。投稿歴2年のペンネーム沢村基さん(40)は主婦の傍ら毎日、作品を更新する。投稿作には読者から感想や要望が届く。「しんどい時もあるけれど、励みになっている」。無料公開したボーイズラブの小説は閲覧数が2万を超えた。「専業作家になるのは厳しいけれど、1冊ぐらい本を出せたら」と思うようになった。
投稿サイトは多様化も進んでいる。1999年スタートの「魔法のiらんど」が「ケータイ小説」をヒットさせて知られるようになり、2004年には「小説家になろう」が開設。せりふが無料通信アプリ「LINE」のような吹き出しに現れる仕組みのサイトなど、昨年だけで少なくとも4サイトがオープンした。
■主な小説投稿サイト
<サイト名> 魔法のiらんど
<開設年> 1999
<運営> KADOKAWA
<特徴> 恋愛系の小説が中心。ケータイ小説「恋空」が映画化
<サイト名> 小説家になろう
<開設年> 2004
<運営> ヒナプロジェクト
<特徴> 「なろう系」と呼ばれるファンタジー系ライトノベル
<サイト名> E★エブリスタ
<開設年> 2010
<運営> エブリスタ
<特徴> 漫画やエッセーも投稿可能
<サイト名> comicoノベル
<開設年> 2015
<運営> NHNcomico
<特徴> 登場人物の台詞が無料通信アプリ「LINE」風の吹き出しで表示
<サイト名>ノベラボ
<開設年> 2015
<運営> ディスカヴァー
<特徴> 投稿作は編集者が読み、優秀作は出版も。投稿作の二次創作は自由
<サイト名> STORIE
<開設年> 2015
<運営> インデックス
<特徴> イラストと物語を合わせて投稿可能
<サイト名> カクヨム
<開設年> 2016
<運営> KADOKAWA、はてな
<特徴> ホラーなど7ジャンルのコンテスト実施。優秀作は出版も