2017/07/18 (Tue) 新共謀罪の恐怖
2017/06/02 (Fri) 資本主義の限界

 平岡秀夫・海渡雄一著「新共謀罪の恐怖」を読んだ。本書は2000年12月に国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約にかこつけて、安倍政権が過去3度も廃案になった共謀罪法案を強行採決するまでの経緯と、成立した共謀罪法の問題点や危険性を詳述したものである。本書によれば、共謀罪法がテロ対策やオリンピック実施に必要不可欠との安倍政権の説明はでたらめであり、真の狙いは反政権の市民活動を常時監視し、必要に応じて逮捕・拘束する法的根拠を整えることにあることがわかる。

国際組織犯罪防止条約では、国内法として共謀罪または結社参加罪が立法されていることが要請されている。欧州は結社参加罪型が多く、米英加は共謀罪型であり、いずれもすでに国内法に立法されている国が多い。当初日本政府は、共謀罪は国内法にそぐわないとして、結社参加罪を採用すべく活動していたが、終盤にアメリカ・カナダとの非公式会議後、突然それまでの活動を無視して共謀罪法を立法するという180度方針転換を行った。これは例のごとくアメリカの圧力に屈したと言わざるを得ない。

そもそも国際組織犯罪防止条約は、経済的利益収奪の国際組織犯罪を取り締まるためのもので、宗教・信条に基づくテロは対象外である。テロ対策に関する国際条約は別に定められており、日本はすべてのテロ対策国際条約を批准しており、国内法も整備されている。また、この国際組織犯罪防止条約には、国内法の原則に従って立法することが謳われており、今回の安倍政権が強行採決したようなこれまでの刑法体系と異質で大規模の改変を伴う「共謀罪法」の立法を要請していない。現国内法で不足する分の最小限の立法追加だけで、国際組織犯罪防止条約の批准は可能である。それにもかかわらず、あえて刑法体系と異質で大規模の改変を伴う「共謀罪法」を強行採決したのは、別の目論みがあるからだ。

安倍政権は、「なんでも秘密法」、「何処でも何時でも戦争法」、「盗聴拡大と司法取引導入」、「誰でも共謀罪法」を強行採決し、次に「憲法改悪」も目論んでいる。これらは明らかに戦時体制を確立するためのものであり、90%以上進捗してきたと言える。アメリカの戦争に参加して、日本国民の命と財産を捧げるのに賛成の人は、ずっと安倍政権を支持すればいいのでは?

 ナオミ・クライン著「ショック・ドクトリン」を読んだ。本書は、シカゴ大学の経済学者ミルトン・フリードマンと彼が率いたシカゴ学派の影響のもと、1970年代から30年以上にわたって、南米を皮切りに世界各国で行われてきた「反革命」運動の徹底批判である。それは、社会福祉政策を重視し政府の介入を是認するケインズ主義に反対し、一切の規制や介入を排して自由市場のメカニズムに任せればおのずから均衡状態が生まれるという考えに基づく「改革」運動であり、その手法を「ショック・ドクトリン」と名付ける。

シカゴ学派の経済学者たちは、ある社会が政変や自然災害などの「危機」に見舞われ、人々が「ショック」状態に陥って何の抵抗もできなくなった時こそが、自分たちの信じる市場原理主義に基づく経済政策を導入するチャンスだと捉え、それを世界各地で実践してきた。
その原点とも言うべきおぞましい人体実験が、ショック・ドクトリン導入の20年ほど前、米ソ冷戦下の1950年代にカナダのマギル大学でひそかに行われた。CIAの資金援助を得て行われたこの実験は、被験者に電気ショックや感覚遮断、薬物投与などの「身体的ショック」を過剰なまでに与えることによって、その人の脳を「白紙状態」に戻すことを目的としていた。個人と社会全体という違いはあるが、ショック・ドクトリンと共通の図式である。

フリードマン提唱の新自由主義(市場原理主義)は、徹底した民営化と規制撤廃、自由貿易、福祉や医療などの社会支出の削減を柱とする。こうした経済政策は大企業や多国籍企業、投資家の利害と密接に結びつくものであり、貧富の格差拡大やテロ攻撃を含む社会的緊張の増大につながる悪しきイデオロギーである。危機を利用して急進的な自由市場改革を推進するのは、「惨事便乗型資本主義」といえる。

ショック・ドクトリンの適用例として、チリのクーデターをはじめとする70年代のラテンアメリカ諸国、イギリスのサッチャー政権、ポーランドの「連帯」、中国の天安門事件、アパルトヘイト後の南アフリカ、ソ連崩壊、アジア経済危機、9・11後のアメリカとイラク戦争、スマトラ沖地震、ハリケーン・カトリーナ、セキュリテイ国家としてのイスラエルなどが検証されている。

日本も新自由主義を導入した小泉政権とそれをさらにエスカレートさせた安倍政権によって、貧富の格差拡大が急伸し、生きづらい国になってきた。

 アラン・ワイズマン著「滅亡へのカウントダウン」を読んだ。人口爆発と過剰消費が地球に与える負荷は限界に近付いており、人口が100億に達する今世紀末には破綻し、温暖化による水位上昇、水不足、食糧危機、環境汚染などによる人類滅亡が現実のものになる。地球が有限である限り無限の経済成長はありえず、技術開発も滅亡を先延ばしするだけの一時的なしのぎにしかならない。

滅亡を逃れるには、避妊による人口抑制と消費削減しかないが、無自覚な多産重視社会や限りない経済成長を目指す政策をとる政府が多く、地球全体での実行は容易ではない。日本は幸いにも人口減少社会であり、世界で初めて経済成長を目指さずに、一定の生活水準を維持する安定した社会を構築する機会を得ている。地球の生態系と共存する安定した持続社会を実現し、世界に範を示す絶好の機会である。

 水島治郎著「ポピュリズムとは何か」を読んだ。本書は、現代世界で最も顕著な政治現象であるポピュリズムを理論的に位置づけ、主として西欧とラテンアメリカのポピュリズム成立の背景、各国における展開と特徴、政治的な影響を分析したものである。特に、ポピュリズムとはデモクラシーに内在する矛盾を端的に示すものではないかとの問題提起をしている。なぜなら、現代デモクラシーを支える「リベラル」な価値、「デモクラシー」の原理を突き詰めるほど、結果としてポピュリズムを正当化することになるからである。

ポピュリズムの特徴は、第一にその主張の中心に「人民」を置いていることである。ポピュリズム政党は、自らが「人民」を直接代表すると主張して正統化し、広く支持の拡大を試みる。第二に「人民」重視の裏返しとしてのエリート批判がある。第三に「カリスマ的リーダー」の存在がある。第四にそのイデオロギーにおける「薄さ」である。固有の具体的な政策はなく、支配エリートのイデオロギーや価値観に反対する政策をその都度掲げる。

ポピュリズムの主張の多くは、デモクラシーの理念そのものと重なる面が多い。ポピュリズム政党は、直接民主主義的制度である国民投票や国民発案を積極的に主張する傾向がある。西欧のポピュリズムでは、右派であっても民主主義や議会主義は基本的前提とされており、「真の民主主義者」を自任し、人民を代表する存在と自らを位置づけている。

ポピュリズムがデモクラシーの発展を促進する面としては、第一に政治から排除されてきた周縁的な集団の政治参加を促す。第二に既存の社会的な区別を越えた新しい政治的・社会的まとまりを作り出すとともに、新たなイデオロギーを提供できる。第三に「政治」そのものの復権を促す。すなわち重要な課題を経済や司法の場に委ねるのではなく、政治の場に引き出すことで人々が責任をもって決定を下すことを可能にする。

デモクラシーの発展を阻害する面としては、第一に「人民」の意思を重視する一方、権力分立、抑制と均衡といった立憲主義の原則を軽視する傾向がある。第二に敵と味方を峻別する発想が強いことから、政治的な対立や紛争が急進化する危険がある。第三に人民の意思の発露、特に投票によって一挙に決することを重視するあまり、政党や議会と言った団体・制度や、司法機関などの非政治的機関の権限を制約し、「良き統治」を妨げる危険がある。

 木下栄蔵著「資本主義の限界」を読んだ。日本経済の低迷を「正と反の経済」という概念を用いて簡明に説明している。この理論によれば、アベノミクスは、日本が反の経済下にあることをを認識していない間違った逆方向の政策であり、破綻するのは時間の問題であることがわかる。

「正の経済」とは、供給より需要が大きい「インフレギャップ」の存在する経済空間であり、「反の経済」とは、供給より需要が小さい「デフレギャップ」の存在する経済空間である。
「正の経済」のもとでは、デフレギャップがなくモノは作れば売れるため、個人が効用の最大化を目指し、企業は利潤の最大化を目指すことで、社会全体の最大幸福が達成される。「反の経済」のもとでは、供給が需要を上回っているため、モノを作っても売れるとは限らず、企業は利潤の最大化よりも債務の最小化を目指し、個人も支払いの最小化を考えて消費を控え、貯蓄に向ける。こうして、銀行に多額のお金が滞留することになる。この銀行に滞留したお金こそ、デフレギャップの正体である。

アベノミクスの金融政策は、黒田日銀総裁による異次元緩和と追加金融緩和を目玉としているが、日本は「反の経済」下にあり、銀行にお金が滞留つまりお金が余っている状態なのに、マネーサプライを増額させてさらにお金を余らせようという、デフレギャップを増大させるだけの逆方向の過った政策と言える。

マイナス金利や異次元金融緩和により、銀行やタンスに滞留していたお金は株式市場に流れ、バブルを形成した。デフレギャップが限界までいけば、「反のバブル」が破裂し株式市場は大暴落し、日本経済に大きな打撃を与えることになるが、皮肉にもこれが「反の経済」を脱出する機会を与えることになるのかもしれない。


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